「ノート指導」は何のため?
「今は、タブレット端末やスマホを使うのが当たり前になっています。ノートに書かせる必要はあるのでしょうか。書いたものを読んで訂正するのは時間もかかります。」
✏️ 私の考え:ノートは「記録」ではなく「思考の可視化」の場
確かに、タブレットやスマホの便利さは圧倒的です。検索も速く、整理もしやすい。しかし、「ノートに書く」ことの本当の価値は、情報を残すことではありません。
ノートは「考えるための道具(作戦基地)」であり、単なる記録媒体ではありません。
書くという行為そのものが、頭の中で考えていることを“見える形”にするので、思考を整理し、考えを形成し、内容を深める時間になります。
つまり、ペア活動やグループ活動が「動の活動」であるのに対して、一人で書くという行為は「静の活動」となるのです。
学習は、「静の活動」を位置付けることで、多様性が生まれ、仲間との協働学習を通して、より思考が深まっていきます。よって、思考ツールを使ったり、ノートにまとめたりする時間は「思考」を練り上げる大切な瞬間なのです。
タブレット上でも「考えの整理」はできますが、手で書くときには脳が“思考の流れ”をたどります。線でつなぐ、矢印で関係づける、言葉を囲む、など。──これらはまさに考えを可視化する行為です。タブレット端末でスタイラスペン(Stylus pen)やApple Pencil, Surface Penなどを使うことができれば、それが可能になりますが、現場への導入にはまだまだ時間がかかりそうです。
🌱 「やり取り」を通して、思考が深まる
ノートに書かれた言葉や描かれた図は、教師や友だちとの「対話」のきっかけにもなります。
「どうしてそう思ったの?」「この部分をもう少し詳しく教えて」──こうしたやり取りを通して、子どもたちは自分の考えを見直し、新しい視点を得ていきます。
タブレット端末を使った学習を「個人作業」で完結(互いに紹介し合うレベル)してしまうと、この「思考のやり取り」が見えにくくなります。
ノートは、自分の思考の軌跡(履歴)を残し、自分や仲間と対話をする場なので、できるだけ書いたものを消さずに残しておく指導をした方が「思考」を深めることができます。(パソコンのデータも「上書き」はNGです。前のバージョンの方が良かったというケースがたくさんあるからです)
授業では、ロイロノートを使って、互いの書いたものを最後に全体で閲覧する方もいますが、授業中に子どもたちの考えを適切に分類することは難しく、ほとんどは見せるだけ(見せっぱなし)になっています。
教師主導で進行する授業では、ロイロノートの効果的な活用は難しいと言えるでしょう。なぜなら、ロイロノートを使うこと自体が目的化してしまい、「何を考え、どのように学ぶか」といった思考活動や、「生徒が主体的に学びを進めるための設計」が欠けてしまうからです。
仮に、データや提出物の蓄積があったとしても、それを授業改善・振り返り・個別支援にどう結びつけるかという視点が十分でないことが多いのです。ですから、授業設計の初期段階から“ロイロノートで何を考えさせたいのか”を明確にすることが問われます。
ロイロノートを活用する場合、少なくとも10分程度の時間を確保し、仲間の意見や振り返りをもとに自分の考えを再構築・言語化する(=再個別化する)活動を設けることが重要です。
このような観点から、「思考ツール」を用いた言語活動の充実と自律的学習者の育成という視点で、ロイロノートの活用法を考えてみます。
たとえば、生徒が自分の考えを図やチャート(例:マンダラチャート、階層式マッピング)で表し、それをロイロノート上のカードに記録・提出・共有することで、「思考のプロセスを言語化・可視化」できます。
さらに、他者のカードを閲覧・比較することで「自分にはなかった視点」に気づき、自分の中にそれを取り入れ、思考を再構築するサイクルをつくることができます。これは、ロイロノートの「他者の提出物を閲覧・比較できる」機能を効果的に活かす方法です。
授業や家庭学習の終わりには、「自分は何を知り、何を考え、次に何をすべきか」を振り返る「振り返りカード」に記入させ、ルーティン化します。
教員はその提出物を「どの段階で思考が止まっているのか」「どの思考ツールの使い方が弱いのか」という視点で分析し、状況を把握して、次の授業設計や個別支援に活かします。
🌱 可視化された思考は、学びを“育てる”
確かに、書いたものを読むのは、時間がかかります。添削をするとなれば、それなりの時間を必要とします。しかし、それは「時間のロス」ではなく、子どもが自分の考えを再確認し、他者と共有するための投資です。
ノートは“学びの過程”を記録する鏡です。それを読み返すことで、「自分はどんな風に考えたのか」「どこでつまずいたのか」がわかり、次の学びにつながります。
また、子どもたちの考えや書いていることを、次の授業の「教材」にすることも可能です。私は、「自学ノートの課題」や4人グループで回していく「リレーノート」などから「これは面白い!」と思った考えを取り出し、ペア・チャットのトピックにしたり、「仲間の意見に対してどう思うか、賛成か反対か」で討論をしたりしました。
こうすると、教師が選んだ一般的なトピックとは違い、仲間の考えなのでどの子も真剣に向き合うのです。






🌱 Keep the balance. (バランスをとること)
タブレット端末は「情報を扱う力」を育て、ノートは「考える力」を育てます。どちらが良い・悪いではなく、どちらを“どう使うか”が学びを変える鍵となります。「つけたい力は何なのか」を教師が明確にした上で言語活動を仕組むということです。
ノートに書く時間は「静の活動」だと言いましたが、子どもたちが自分の思考を見つめ、友だちと共有する時間を大切にすれば──その学びは、確実に”自分のもの”になっていきます。
次回(第2回)も、「書くこと」についての質問を取り上げます。
質問の内容は「時代はパソコンやタブレット端末を使った学習がメイン。手書きの時間が取れないのが現状。実際問題、手書きをしたら力がつくのか?」です。
ご自身が高校入試、大学入試の時に「授業ではノートに書くのが当たり前だったこと、書いて力をつけたこと」を経験として持っていながらも、時代の趨勢やデジタル教科書への移行に戸惑っているという現状があるようです。
