🔵和歌山県立星林高等学校(国際交流科1年)で「飛び込み授業」をしてきました(R6年4月19日)

生徒の感想(過去4回、いずれも同じ感想)から見えてくること

全国、いろんな自治体、地教委、学校からセミナー、校内研修、キャリア教育、さらには飛び込み授業の依頼などを受けることがあります。基本的に、授業は生徒との人間関係が土台になるので「単元の中のどこか1時間を使って授業をして見せてほしい」という依頼は丁重にお断りしています。一方で、星林高校(4回目)のように入学したての1年生に、今後どういう英語の学び方をしていけばよいかアドバイスをしてほしい」というものには、できるだけ足を運ぶようにしています。

全国どこでも同じですが、中学校の教科担任の指導によって育った生徒(高校1年)は、学習意欲、習熟度、教わった学び方、受けてきた定期テスト、パフォーマンステストなど、その実態は千差万別です。ただ、言えることは、たとえ今までどんな学び方をしてきたとしても、「正しい指導」に遭遇した途端に、どの生徒も「できそう、できた、もっとできるようになりたい」という変容を実感するということです。

ただし、「正しい指導」は、次の3つの内容を含んでいなければなりません。        

 1) 学習指導要領に書かれている目標に基づいていること(自分がやりたいことではなく)

 2) クラスの生徒の実態、個々の習熟度や興味・関心を踏まえていること

 3) 学習者の心理を理解し、内発的動機づけを高める原理・原則を活かしていること

高一の生徒の授業後の感想をご紹介します。

【中嶋先生の講義を受けて、良かったことや学んだこと】

⚫先生が言われたとおり、講義を受ける前と後とでは、読むスピードや聞こえてくるスピードに大きな差があり、勉強方法によって大きな差が出てくることがわかりました。

⚫ 中学校で習ってわかったと思っていた単語も、発音号通りの読み方とは全然違っていたこと(たとえば、beyondの y は発音せずに「ビアンド」と読む、againは「アゲイン」ではなく i は読まずに「アゲン」、aloneは「アローン」ではなく「アロウン」と発音する、など)が分かって驚いた。先生の後からリピートするのではなく、これからは自分で発音記号を確認し、納得しながら音読の練習をしたい。

⚫本格的な英語の発音の仕方や、英語は「つなげる・広げる」ことが大事であり、そのつなげ方や広げ方なども具体的に知ることができたので、本当に良かったです!

⚫英語の正しい発音の仕方やコツがわかった。その結果、前よりもリスニングの内容が聞き取れるようになったし、早く英文を読めるようになった。 


⚫リスニングのコツは、自分で正しい発音ができることだとわかった。

⚫中学校では習えなかった、英語の正しい発音のポイントを詳しく知ることができ、もっと英語を勉強したいと思いました。

⚫「自分でやらないと、できるようにはならない」という先生の言葉が、活動を通して「本当だ!」と実感することができた時間でした。 


⚫ 今まで習ってきた英単語の発音の多くが「違っていた」ということが学べた…。


⚫ I learned not to pronounce words like “the” and “so” as hard as the more important words like verbs. I’m glad to learn something new. 


⚫リスニングで聞こえるようになったスピードの差に、文字通り空いた口がふさがらなくなるほど驚きました。

⚫ はじめはあんなに長い長文をすらすらと正しい発音で読めるはずないと思っていましたが、中嶋先生に見せていただいた動画、先生の解説、そして練習をする中で、初めのときよりスラスラ読むことが出来て自信がつきました!ありがとうございました。


⚫最初、英語の音声を聴いた時は単語1つくらいしか聞き取れなかったけど、中嶋先生の教えてくださったことをしてから、最初よりはるかに読めるようになっていて嬉しかったです。その他にも、連想をしたことを整理しながら、広めたり、深めたりする方法も初めて知ったので、これから役に立つと思いました。まだ完璧ではないけど、前の自分の英語力より少しでもレベルアップが出来て嬉しかったです。

⚫ 初めて学んだことや、新たな目標や自分のすべき事が沢山あったので、本当にためになりました。これからは中嶋先生に教えていただいたことを活かし、国際交流を頑張っていきたい。

⚫これまでは、ただ書かれている英文や単語をなにも意識せずに読んでいたけど、中嶋先生の講義を受けて、英語を聞いたり、話したりする時に、何を意識すればよいかが理解でき、とても勉強になりました。 


⚫教科書の発音記号どおりに読む練習をすることで、みるみる聞き取れるようになることがわかりました。

⚫中学校までとは全く違う英語の向き合い方がわかりました。もっと、英語を勉強したいと感じさせられました。 


⚫とても貴重で、とてもいい経験になったと思います。リスニングが苦手だった理由、速読が出来なかった理由がわかって“スッキリ”しました。 


⚫ 中嶋先生が「この長文が、絶対30分後にはスラスラ読めるようになります」と言われた時は信じられなかったけど、発音に気を付けたり、後ろからまとまりごとに読み上がったりするうちに、本当にスラスラ読めるようになってびっくりしました。中学の教科書の長文もアクセントに気を付けて 読み直そうと思いました。また、マッピングやマンダラートを使って、情報をつなげたり、広げたりしたことで、自分の伝えたい事が明確になり、ノートを見なくても相手に伝えられるようになり、どんどんやり取りが続いた時はすごく嬉しかったです。

⚫英文を書く時に、もっとマンダラートを使って発想を広げる事を心掛けていこうと思った。 


⚫すごく分かりやすい説明で、正しい英語の勉強の仕方、実際にできるようになっていくためのコツなどを学ぶことが出来て、どんどん楽しくなりました。 


⚫最初、思っていたのと違って、すごく楽しかった!


⚫はじめからゆっくり読むなんてことはせず、「まとまりを一息で」と私たちに教えてくださり、やらなきゃできないという言葉を忘れ図、先生の指示に従って講義を受けていくと、最初速すぎて聞き取れなかった英語が最後には意味を理解しながら聞くことができ、感動しました。これから英語を学ぶのが楽しみになりました。 


⚫本当に英文を速く読めるようになっていて驚いた。とてもためになった。 


⚫ I found your presentation very interesting. Reading fast is a skill most of my classmates don’t have. What they also don’t have is the clarity you possess when you read. I hope they learned much as well. Thank you for your nice presentation.

当日は、❶「ナチュラルスピードで話される英語が聞き取れるようになる指導」と❷「広げる力・つなげる力を伸ばし、即興のやり取りを可能にする指導」の2つを扱いました。ここでは、リスニングの指導に特化します。即興のやり取りができるようになる「マンダラ・マップ」(階層式マッピング)については、改めてご紹介する予定ですが、5月中にアルク(高等学校向け)の「Web版:英語の先生応援マガジン」、そして(株)リンク・インタラック HPTeachers Cloud に実際の授業の映像付きで紹介されます。さらに、それを「個別最適な学び」と「協働的な学び」の往還、「論理と表現」の指導にどう活かすかということについては、元塾生たちが大修館書店『英語教育』10月号にその詳細を報告する予定です。

さて、リスニング指導ですが、何度聞いても聞き取れないものは聞き取れません。では、どんなことをしたのでしょうか。なぜ、生徒たちは20分の練習の後、「遅く感じるほど聞き取れるようになっていた!」と書いているのでしょう。具体的に、「どのような指導」であったのかを体験なさってみてください。昨年、対面で行った中嶋塾@東京2023の塾生が、それについて詳しくレポートしてくれています。

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2024/05/音読指導レポート①-1.pdf

指導を受けた後、塾生たちが、それぞれ学んだことをどう「内在化」させたか(どう、自分の授業に活かすか)というレポートを送ってきます。一部、ご紹介しておきます。

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2024/05/音読指導レポート②.pdf

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2024/05/音読指導レポート③.pdf

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2024/05/音読指導レポート④.pdf

セミナーでも、その有効性を実感された方が、次のようにレポートを書いておられます。

「自律的学習者を育てる授業のあり方」を受講して (受講者のレポートより)

90分という限られた時間でしたが、study と learn のちがい、依存的学習者でなく自律的学習者に育てるにはどうすればよいか、について学ぶことができました。「わかる授業」ではなく、「生徒が『できた!もっとできるようになりたい』と願う授業」とはどういう授業か、を講義で はなく、一人で考える、ペアで共有する、一人で活動する、ペアやグループで活動する、ということ を織り交ぜながら、ゴールとして育てたい「生徒の姿」もビデオで見せていただきました。ゴール「わかって終わり」の授業ではなく「先を見越して、実際にできるようにする授業」だということがビデオの中に登場する「育った生徒の姿」を見て理解することができました。

そのためには、自己流の授業ではなく、必ず教科書と学習指導要領の両方を見て、正し いゴールを理解し、正しい指導をし続けることです。学習指導要領を再度見直して、授業であまり指導してこなかった項目にマーカーで線をひきました。講義の前に、中嶋先生が「ペアで話したり、活動するのでペアになれるように座ってください」「何が知りたいですか」など受講者に声をかけ、用意された中から、どれを取捨選択し、研修の教材として何を使えばよいかを組み立てていらっしゃったのではないかと思います。

小学校・中学校・特別支援学校・大学の先生方という多様な先生方に向けて講義をしながら、参加者の様子や活動を見ながら進めておられました。メモをする暇もないくらい考えたり、英語を使ったり、脳をフル活動させました。90分経った時に感じたのは、やりきった感と達成感、「やればで きるんだ!」という充実感です。それは私だけではなく、どの受講者も感じられていたと思います。中でも圧巻だったのは、20分間の音読の活動です。

ヒマラヤの環境問題に関する英語(4段落からなる英文)を最初に聞いた時は、断片的な英語の単語しか聞き取れず、ヒマラヤの環境問題について話しているんだな、くらいの理解度でした。消えていく英文を設定された速さで読むことなど、到底できませんでした。速い、全然できない…、と圧倒されてしまいました。「20分後には、英語の内容がわかり、設 定された速さで読めるようになりますよ」と中嶋先生が言われました。その後、順序だてて音読の練習をしました。 

⚫️文の最後の単語から、そしてチャンクごとに後ろから前に積み上げ反復して音読 ⚫︎ひと息で1段落ごとを読む
⚫︎2分間個人で練習 ・段落ごとに内容に関する Q and A ⚫︎ペアで早く読み終わった方が真ん中においてある消しゴムを取る、という活動を20分した後で、最初の設定された速さで読んでいくと、何と!「最初ついていけなかった英文の速さについていくどころか、遅いと感じられるようになっていました。

「自律的学習者」を育てるためにわかったことは次のことです。
⚫︎わかる授業ではなく、できるようになる授業 ⚫︎「できた→もっとできるようになりたい」と生徒が思う授業⚫︎自己流ではなく、必ず教科書と学習指導要領の両方を見て、正しいゴールを与え、正しい指導をする⚫︎自己決定させる⚫︎大切なことはオリジナル ⚫︎自分でやってみたい、という負荷をかける⚫︎沈思黙考もアクティブ・ラーニング(大事なのは、有意味学習、必然性のある課題)⚫︎授業をストーリー型にすること⚫︎脳はイメージに反応する、イメージできないことはしようとしない(具体物を用意し、視覚に訴える)⚫︎最初に、思ったことだけでも落書きのようにメモを残しておく(はじめてのことは、あとまわしにしがち) 

中学校時代、発音に関することをていねいに(厳しく)しっかりと指導された大学生と、Repeat after me.だけで納得がないまま教わってきた大学生徒の音読の圧倒的な差をビデオで見せていただきました。指導されなかったことはできない、それは教師の責任。個々の発音だけ指導するのではなく、発音記号どおりの発音、文脈を理解し、強く長く読むべき単語を考える指導、さらには内容語を強く長く読む指導が大切である、ということがそのビデオを見てよくわかりまし た。 英語は音声言語、あくまでも音声が基本。テストのために文法や語彙を覚えさせる語学教育は邪道だとわかりました。中嶋先生は、「感受性を育てると学力も伸びる。それは気づきの度合いが深まるから」と言われました。また、「本当に力がつくのは、負荷をかけたとき。努力をした後、人は頑張れた自分を誇りに思う」という中嶋先生のことばが印象に残りました。「感受性」を育てるためには、考える、脳を活性化させる(揺さぶる)、自分で「活用」する課題と時間を与える、仲間と関わる必然性を作る、といったことに取り組まねばなりません。日常に流され、安きに流されがちですが、自分に誇りが持てるよう、良い習慣をつくっていきたいです。 

「自己流の指導」や「自分がやりたいこと」ではなく、あくまでも「学習者ができるようにすること」が大事です。「主体性」は、自分ができるようになった時に身についてくるものです。それは、教師が決めたこと、教師が指示したことではなく、目的と目標を知った後、方向性や内容は自分が決める、自分で計画を立て自分で修正をする、成果や課題を次のステージに繋げられるという姿勢です。そのような資質を身につけるには、❶学習が「自己決定」できる内容であり、「自分ごと」として捉えられること❷ 単元を通して「有意味学習」を仕組むこと(目的やねらいが具体的であり、学びたいという必然性があること)❸ 仲間との協働的な学びを通して、メンタリング(よいモデルに出会い、気づきが生まれる)を機能させること、などが必要になってきます。

「わかる授業」(わかりやすさ)を目指していると、聞いている側(生徒)には「わかったつもり」が生まれてしまいます。無理もありません。プリントやスライドを見ながら説明を聞いているので、「わかる、わかる」という気持ちになり、チャイムと同時に「わかった」と自己満足(自己完結)してしまうからです。実際に何も見ないでレポートを書かせてみると、ぱたっと筆が止まります。「う〜ん、何だったっけ?さっきはわかっていたのに・・・」という言葉が出てきます。一方、「できた!」を実感させようとする授業は、最後に「知識・理解」ではなく、実際に「技能」として獲得されたことを自己診断できるタスクを用意し、「習熟するためのプロセス(練習ではなく、言語活動)」を用意しなければなりません。そして、それは1時間単位の単発な学習指導案では難しいということなのです。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント