学習指導案とは「仮説」であり、それを「検証」するのが授業
単元計画や学習指導案は、教師が「こうすれば力がつくのではないか」と考えた「仮説」であり、それを「検証」するのが実際の授業です。ですから、「授業」を予定調和で終わらせられるように考える「授業進行案」ではありません。だとしたら、全体構想→実践→振り返り(言語化をして残す)のプロセスは、「教師年輪」を増やしていく上で不可欠です。特に、「言語化」は授業力向上には必須です。記録を残さないと、どこをどう直せばいいかがわからず、場当たり(思いつき)になってしまうからです。
11月20日に、小松市立板津中学校(校長 本 美紀 先生)の第2回校内研修に伺いました。5月14日に行われた第1回目の研修の様子については、先に『校内研修が楽しくなるってホント?』(https://nakayoh.jp/wp-admin/post.php?post=1091&action=edit)でご紹介しました。そこでも書きましたが、板津中学校では全員が真摯に授業改善に取り組もうとしておられます。年に1回だけの地教委による訪問研修では、どちらかというと打ち上げ花火(一過性)で終わります。指導助言を受けたとしても、その後のチェックがないために、いつしか自己流に戻ってしまう方が多いようです。習慣にするには正しい視座を作り、「続ける、つなげる、振り返る」という要素が必要です。
板津中学校では、1年に3回(5月、11月、1月)、授業の「定期健康診断」を企画されています。そして、全員による授業公開(中嶋がそれぞれに助言)、全員参加の研究授業(複数の教科)を行なっておられます。さらに、訪問した後は、やりっぱなしにせず、中嶋とオンラインで繋ぎ、次の研修に向けて、何度も話し合いを持っておられます。3回目(1月)の総仕上げに向けて、今回は、「知識・技能」の「技能」について、研究授業(中1英語科)の後で話し合いを持っていただきました。「技能」については、最近アップした『教科書通りなのか、それとも「レアリア」なのか – 授業「自己診断」のすすめ –』(https://nakayoh.jp/wp-admin/post.php?post=1731&action=edit)をご覧ください。ここでは、板津中学校の先生方がどのような研修に取り組み、どのような感想を持たれたのか、さらには1月に授業をされる数学科(1年)、社会科(2年)の取り組みに向けて、教科部会が一丸となって取り組んでおられる様子についてご紹介します。全員の「授業ベクトル」が指している方向は「自信にあふれた生徒の笑顔」です。
まずは、研究授業(1年英語)を受けて、「技能」と「思考・判断・表現」に特化し、授業づくり(授業デザイン)についてグループごとに話し合っていただきました。広島市立美鈴が丘中学校の校内研修(2年間で「線」の研修を行う)でも紹介しましたように、模造紙(50分に数直線を描き、時系列で生徒の取り組みの様子を付箋紙に書き、それを貼りながら「どう仕掛ければ生徒が思考し、表現しようとするのか」について話し合っていただきました。
研修部からの「校内研修振り返り」より
https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2024/12/第5号-第2回校内研修板津中.pdf
https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2024/12/第5号②授業整理会グループ発表板津中.pdf
最後に、「探究コーラル・マップ」を使って、「生徒が板津中学校に来てよかったと実感できる学校にするために」というテーマでグループごとに話し合いをしていただきました。「探究コーラル・マップ」については、すでにこのHPでご紹介した「階層式マッピング」で鍛える「思考・判断・表現」と「探究しようとする意欲」https://nakayoh.jp/wp-admin/post.php?post=1464&action=edit)をご参照ください。
多くの自主参加者で討論した「オンライン打ち合わせ」がエネルギーに
1月の研修は、数学(1年)と社会(2年)で研究授業が行われます。12月中に、オンラインで打ち合わせを行ったところ、多くの先生方が自主的に参加されました。途中段階の学習指導案(単元計画)が送られてきています。まだ完成形には至っていませんが、少しだけご紹介しておきます。さて、何に気づかれますか。
社会科(2年)
数学科(1年)
学習指導案を読んだだけでワクワクしてきます。研究授業に取り組む2つの教科(社会、数学)のいずれも、単元を予定通りに終わらせるのではなく、最後に形だけ振り返るのでもなく、AAR 本来の「次のステージにつながる振り返り」(Reflection)がきちんと用意されていることがわかります。
今まで、1時間だけの学習指導案を考えて行われていた研究授業が単元全体を考え、最後につけたい力、育った姿から逆算し、さらには前時と本時の「のりしろ」、本時と次時の「のりしろ」が作られ、「破線」だった研修が見事に「実線」になっていることがよくわかります。
地球市民オンライン塾2023、中嶋塾@東京2023の卒塾生たちの進化(深化)
2023年、私は全国の塾生たちの授業を見てアドバイスをするために、北海道から九州までを行脚しました。残念ながら、長年の習慣で教科書を先に進める、教師の説明やプリントが多い授業については、コミュニケーションになっていないことを伝え、学習者を主体とした授業の進め方について代案を示しました。今回、ご紹介する福岡市立下山門中学校の前田範幸先生は、地球市民オンライン塾のメンバーであり、福岡市の市英研の事務局(副部長)をされている優れた先生です。昨年の5月に、福岡に足を運び、彼の授業を拝見しました。「どこをどう変えればインタラクションが増えるか」「学習者がワクワクする授業にするには、どう自分ごとにするか」「英語を学ぶ必然性をどう作るか」ということを一緒に考えてみました。その後、オンライン研修で「令和型学習指導案」(育った生徒から逆算する単元計画)に取り組まれた前田先生の授業は、その後大きく変身しました。彼の授業が周りから注目されるようになり、今回、ある教育雑誌にその授業実践(連載)が取り上げられました。ご紹介しておきます。
なお、これは、広島市立美鈴が丘中学校、小松市立板津中学校の校内研修で取り組んでいるものと同じ内容です。
第1回
第2回
第3回