🟠 “Voice” を大切にする教育とは? – 生徒の voiceを育てる5つの「- ize」

◆ voice を特化した授業を考える

元中嶋塾@東京2023の山内 崇史先生(麻布中・麻布高校)から、次のようなことをお聞きしました。「この一年、かなりの本を読みましたが。その中で一番印象に残ったのが voice を鍛えるということです」。その後、彼から送っていただいた文章をご紹介しておきます。まず、次のURLからPDFをダウンロードされ、印刷をされた後、ペンを片手にお読みください。

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2025/01/Voiceが溢れる英語教育を.pdf

読まれて、何に気づかれたでしょうか。今まで「当たり前だと思っていたことが当たり前ではない」ことがわかり、ハッとして、心がざわつきませんでしたか。

昨年、中嶋塾(1年間で12回の1日研修)の受講者に一貫して伝えていたことは、「学習者の感受性やポテンシャルの高さを活かした授業実践」でした。山内氏は、卒塾後、胡子美由紀先生(広島市立美鈴が丘中学校)のオンライン塾の門を叩かれ、「生徒の表現力をいかに高めるか」というテーマをさらに追及されています。

この 「voice が溢れる英語教育」という視点は非常に重要であり、授業づくりの根幹につながることですので、この項で取り上げてみたいと思います。まず、「声」の意味を国語辞典(大辞林)で確かめてみます。次のように書かれています。

① 人間や動物が発声器官を使って出す音。虫の場合は羽などを使って出す音。

②(生き物に見立てていう)物の立てる音。

③ 言葉にして表した考えや気持ち。

④ あることが近づく気配。

「声」と言われて、まず想像するのは①であろうと思います。②③④を想像する方は少ないのではないでしょうか。

「自分の声があまり好きでない」と言われる方が多いと思います。録音された声を聞くと、いつも喋っている時に聞こえる音と違っていて、「あれ?こんな声だっけ?」とがっかりされたことがあるのではないでしょうか。実は私もそうでした。

それが変わったのが、初任校での荒れの経験でした。授業に向き合わない生徒たちに、彼らの好きな怪談をして教室に入ってもらおうと決め、毎晩、怪談の本を「語り部」のように音読する練習を繰り返しました。

やがて、「中嶋先生の怪談話はめちゃくちゃ怖い」という噂が立ち、担当していないクラスの生徒たちがわざわざ職員室までやってきて「私たちのクラスでも怪談をしてください」というようになりました。補欠の授業で担当以外のクラスに行った時など、「わーっ」と声が上がり、一斉に「か・い・だ・ん!か・い・だ・ん!」と机を叩きながらシュプレヒコールをあげました。

授業でも、「先生が説明を始めると、なんだかスッと吸い込まれてしまう」という声が上がるようになりました。その時、「伝えたいこ」という思いが強いと自分の「声」に魂が入る、力がこもるのだということに気づきました。

よくセミナーなどで話をすると「中嶋先生は声がいいですね」と言われることがあります。最初、そう言われた時は、「えっ?」と思いました。自分ではそう思ったことがなかったので意外だったからです。しかし、よくよく考えてみると、声の質そのものよりも、伝えたいことを言い切る形にしているからではないかと思い当たりました。私は、「思います」「ではないでしょうか」という曖昧な言い方ではなく、「〜です。理由は3つあります」とか「何故でしょうか。(間)実は・・」というように論理的な言い方をよくします。言い切ることで、語尾がはっきりします。

それが「わかりやすい」という感情を引き出し、話に聞き入るようになり、それが「声がいい」という印象になるのではないかと受け止めています。つまり、voiceに力がこもるようになるのは「伝えたい内容」と「育てたい生徒像」が明確であることではないかと考えます。

◆ voice は opinion とどう違うのか

では、ここでopinionvoice の違いについて考えてみましょう。

英英辞典では、前者はYour “opinion” about something is what you think or believe about it.とし、後者はSomeone’s “voice” is their opinion on a particular topic and what they say about it.と説明されています。voiceの方は、特定の内容について持った深い考えであることがわかります。(下線は筆者)

voiceには、「表明された意見」(読者への提言)という意味があります。実は、英和辞典には、voiceは「声」だけでなく、他に「能力、表明された意見や考え、~を声に出す、~を表明する」という意味が紹介されています。「Voice」(PHP研究所)という月刊誌は、毎回トピックを1つに絞り、それについての「識者の意見」を紹介しています。

授業でも、この voice を育てる指導が不可欠です。何故なら、子どもたちが堂々と発信する内容を互いに尊重しあい、それについてある時はcriticalに自分の考えを述べる、また well being の状態になるために、自分と相手だけでなく周りも幸せになる「三方よし」にできるように内容を深めていけることこそが、これからの世の中で不可欠な能力になるからです。

◆ 生徒の “voice” を育てる 5つの”ーize”

授業で voice を育てるには何が必要になるのでしょうか。ちなみに、山内氏(麻布中・麻布高校)は、冒頭の原稿(PDF「Voice が溢れる英語教育を」)の中で、2023年に上梓した『英語教師の授業デザイン力を高める3つの力読解力・要約力・編集力)』(大修館書店)の中で取り上げた visualize, realize, organize の有効性について授業実践と絡めて述べておられます。

ここでは、それらに加えて recognize, customize も加えておきます。それぞれ、説明をしていきます。授業中、このような場面を用意しているかどうかで、生徒一人ひとりの voice の質が格段に違ってきます。

(1)Visualize (心に思い浮かべる、想像する、視覚化する)

言語の習得では、教科書の内容をショーウィンドーのディスプレイ(display)を見せるような学習(教師の説明)にするのではなく、実際に手に取って使ってみるというプロセスにすることが大事です。頭の中で、場面を想像し、どんどんイメージが膨らむからです。英英辞典(COBUILD)では、次のように説明されています。

If you visualize something, you imagine what it is like by forming a mental picture of it.(下線は筆者)

教師が、単元の最後に何をするかと言うことを伝えずに、最初のセクションの文法の説明に入るような授業では、必要感が生まれません。一方で、最初に先輩の作品、映像を見せておくと、具体的なイメージが持てるようになります。リテリングの指導においても、それぞれが絵や写真を「補助物」(aid)として使いながら行う(習熟度に応じてその量を調節)ことで、話す内容が頭にvisualizeされ、Show and Tellのように「言いたい!」が出てきます。

⑵ realize(認識する、悟る)

realizeは「認識する、気づく、形にする」という意味です。notice は視覚(知覚)的に「気づく」のであるのに対して、realizeの方は「頭の中で状況を理解し、はっきりわかる」というイメージです。英英辞典(COBUILD)では次のように説明しています。

If you realize that something is true, you become aware of that fact or understand it.(下線は筆者)

一方、Longman Dictionary of Contemporary English(以下LDOCE)は次のように定義しています。

To know and understand something, or suddenly begin to understand it.

                               (いずれも下線は筆者)

教師の話を受け身で聞き、板書やスライドの内容を黙ってノート(またはワークシート)に写しているような学習では、なかなか「理解」が深まりません。人間の脳は基本的に単調なことを嫌います。刺激を求めているのです。ですから、クイズのように「わくわくする内容(ひと工夫した課題や発問)」を用意することで、ハッと気づける(realize)ようになります。

人から教わったことはやがて忘れてしまいますが、自分で気づいたことは忘れません。ということは、授業ですぐに答えを言うのではなく、① 一人ひとりが自分の考えを持つ ② ペアや小集団の仲間とそれを共有する ③ 教師が謎解きのヒントを与える ④ 再度、個人で思考する ⑤ 答えを聞く ⑥ (答えそのものではなく)思考のプロセスを振り返る、といった学習プロセスにすることが大事です。

ただ、ずっとこのようなことをしていると、時間はどれだけあっても足りません。まずは、単元全体の中で「身につける力」を特化し、それが実現できるよう「軽重」をつける項目(内容)を考えます。それが本来の単元計画だからです。つまり、「技能」が身についているかどうかを確かめる言語活動、「思考・判断・表現」(目的を明確にし、イメージしやすい場面や状況を用意する)を最初に考えておき、それ以外をできるだけ軽く扱うように工夫するということです。「教科書に載っているものは全て教えておかなければならない」と網羅的に考えてしまうと、学習指導要領の目標に到達しないまま1年間が終わってしまいます。

まずは、学習指導要領に書かれていることが、教科書のそれぞれの単元のどの活動に当てはまるのかを確認しておかねばなりません。いきなり、それをやるのではなく、学習者が見通しを持って活動ができるよう、「最後はどうなればいいのか、それは何故か」をきちんと最初に伝えておくことが重要です。

教師が、「教材」(単元でねらっていること)のねらいを適切に読み解き、どの生徒も「身につけるべき力」(4技能・5領域)が獲得できるように授業の「山場」を設定します。そして、そこで仲間とのやり取りと個人で振り返る時間(重の部分)を十分に取ること、軽く扱う部分を決めること、そして無駄な部分(教師のくどい説明、欲張って用意したプリントやスライド)を削ぎ落とします。それによって、学習者には「できた!」という思いが生まれます。それこそがメタ認知力、自己肯定感を高め、その後の学習に主体的に取り組めるようになっていきます。クラスのあちこちで、voiceが届くようになる、それを実現させるのが教師の仕事になります。

⑶ recognize(〜だとわかる、認める、判別する)

realize に似ていて、もう一つ重要なのが recognize です。定義は次のとおりです。

If you recognize someone or something, you know who or what they are, because you have seen or heard them before or because they have been described to you.(下線は筆者)

realize の方は、「思考した結果、自分でハッと気づく」のに対して、recognizeの方は、「既習経験や学んだことがきっかけとなってわかる」という意味です。

既習事項とつなげることで、自然に「接近の原理」が働きます。「接近の原理」とは、1本の棒磁石のN極ともう1本の棒磁石S極を少しずつ近づけていくと、ある距離まで来るとパッと自らくっつく状況のことを言います。つまり、既習事項を振り返り、新しい内容と比較する、または想起する場面を用意すれば、自らつなげようとするようになるということです。これを活かすと、中1で学んだ助動詞(can, do, does)の学びを中2で学ぶ will, should, may, mustなどの理解に短時間でつなげることができます。教師が1から説明しなくても、指導の10段階の3段階くらいはreviewによって時間削減をすることができるのです。このように「のりしろ」をどう作るかという発想は、教師の「時間がない、教科書が終わらない」という圧迫感、呪縛感を大きく軽減してくれます。

ところで、英語の授業では、ペアやグループの活動が増えます。しかし、2つの学習形態とも、正確さがどんどん抜けていくということを理解しておくことが大事です。途中で日本語を使ったり、発音や強弱(ストレス)がいい加減になったり、課題から外れて話し合いが迷走したりすることもあります。

大切なことは、全体に指導をしなければならない肝心な場面をスルーしないということです。ペアやグループ活動中は、生徒のやり取りを傾聴し、気になったことを座席表(学習カルテ)にメモしておきます。そして、活動後に必ず「これは◯か、それとも×か」と実例をあげて(もちろん名前は伏せる)、生徒たちに考える機会を与えるようにします。たとえば、生徒がI like Japan. So I live in Japan.と書いている場合、話者がALTなのか、それとも中学生かで全く意味が違ってきます。後者の場合、「本当?これって変じゃない?日本人なのだから因果関係が成り立っていない」とつながり(文脈)がおかしいことを生徒たちに気づかせる必要があります。

そのような論理構成は「事実発問」(答えがひとつ)ばかりでは育ちません。教師が用意した「推論発問」(行間を読み取る)で、意図的に揺さぶらなければなりません。事実発問と異なり、推論発問に対する答えには論拠が必要になります。「深い学び」には、個人の思考→ 仲間の多様な考え→集団での練り上げ(意図的なギャップ)のようなプロセスが必要です。答えがひとつしかない問いは、確かに判断が楽です。しかし、「はい、正解。では次」のような授業になり、探求心も喚起されず、学びのプロセスがプツンと「切れて」しまうのです。

ディベートでも、立論と反駁のやり取りを生徒に任せてしまうのではなく、拙著『英語のディベート授業30の技』(明治図書1997)で紹介したように、ALTとのTTで黒板を左と右に分け、左には肯定側の意見を書き、右にはそれに対する反駁の意見を書いていきます。ALTには、より簡単に言い換える(rephrase)例を示してもらいます。さらに、全員で立論を本当につぶせているか、論点がねじれていないかを一つひとつ確認していきます。判断を生徒に委ね、どうしてそう思うのか、その根拠を聞きます。このように、全員で◯か×かを話し合い、×の場合はどう言うべきなのかを時間を十分にとって丁寧に指導をしなければなりません。

これをいい加減にして「見切り発車」(形だけやる)をしてしまうと、討論の盛り上がりに欠け、用意したことを覚えて言うだけ(言いっぱなし)になります。即興でのcross examination(evidenceを確かめる反対尋問)を論理的に行える力をつけることは、ディベートの学習を大きく左右します。彼らが「ディベート学習」(勝ち負けではなく、両面から複眼的に考えられる。に本気で(夢中になって)取り組むかどうかは、まさに教師の論理性や読解力次第です。  

教師が、言葉の定義を理解し、「3点あります」のように筋の通った話し方ができること、または起承転結で読み手が理解しやすい内容の文章を書けること、それらは教師の母語の力が根幹になっています。教師のvoice(美しい日本語が話せる、誰が読んでも「わかりやすい」と評されるような文章が書ける)は、自身の外国語の授業に大きな影響を与えます。

⑷ organize(整理する、系統立てる)

授業の最後は「振り返り」(reflection)をきちんと行う時間を確保することが大事です。何故なら、それによって個々の「メタ認知能力」が育つからです。それこそが「主体性」の根幹となります。よって、次の授業へののりしろ(見通し)を作るために50分(45分)の授業の最後に5分間を使って全体の振り返り、個人の振り返りを行うようにします。そこで必要になるのが organize(学んだことを整理する、今までの学びを系統立てる)です。英英辞典の定義は次のようになります。前者がCOBUILD の定義で、後者が LDOCE の定義です。

If you organize a set of things, you arrange them in an ordered way or give them a structure.

To arrange things in order according to a system, so that they are more effective or easier to use. (いずれも下線は筆者)

いずれにもarrange整える、準備をする)が登場します。主体は「学習者」です。学びをやりっぱなし(終わりのチャイムまで活動を引っ張る)にしてしまうと、どんなことができるようになったのか(どんな力を獲得できたのか)を認識しないまま終わることになります。これでは、学習が定着しません。最後に、整理して言いたいことを言語化する(最後は自由記述で書き表す)ことが、一人ひとりのvoice の質を高める重要な作業であるということです

⑸ customize(必要に応じて作り変える)

customize(以下、カスタマイズ)は日本語にもなっています。特別注文(オリジナル)、作り替えるという意味です。学校現場では、すでに決まっていることを「いつも通り」で行うことが多いようです。最初、多くの教師によって丁寧に作られたルールや理念は、時間と共に形骸化していきます。Ready madeとして受け止めるようになると、本質の重要性が薄まっていきます。適宜、時流に合わせ、カスタマイズしていかなければなりません。では、英英辞典の定義を確認してみましょう。

If you customize something, you change its appearance or features to suit your tastes or needs.(下線は筆者)

to suit your tastes or needs”という部分によって、学習者がより良い状況を求められるように、ゴールやモデルを明確に示すことが重要であることがわかります。

デジタル教科書はready madeで完成品です。それに対して、教科書は教師のアイデア次第で部分的に作り変えることが十分に可能です。教科書は、そもそもプロトタイプ(原型)で作られており、それをそのまま指導するのではなく、学習者の興味・関心、習熟度、地域の実態を踏まえて、教師がアレンジできるように作られています。

たとえば、統合的な言語活動を行う時に、生徒に「わくわくしそうかどうか」「最後のイメージが膨らむかどうか」を尋ねてみることが可能です。生徒からは、「この部分は任せてほしい」(自己決定にしてほしい)という意向が出されたり、トピックの内容を地域特有のものに変えたいという願いが出されたりします。これを行うことで、生徒がより主体的に学習に取り組めるようになります。生徒の発想は柔軟であり、ユニークです。彼らの書いた自己表現には、大人を驚かせる(感動させる)ものも登場します。やがて、教師は「仕切ろう」とする姿勢から、「学習者心理を大切にしよう」とする姿勢に変わっていきます。

カスタマイズの考え方は、文科省のいう「カリキュラム・マネジメント」にもつながります。教科書の「教材」を学習者のニーズや実態に合わせてカスタマイズ(アレンジ)することで、学習意欲が喚起され、学習への取り組みが加速します。

◆ カスタマイズを経験した学習者は、格段に「創造力」が高まる

5つの「 – ize 」をご紹介してきました。最後に、成果物をカスタマイズすることで感動の世界に誘うことができるという実践をご紹介します。

大学に勤務していた17年間のうち前半の10年間は、「地球市民を育てる教師のための研修会」に取り組んでいました。後半の10年間は、教職課程を履修している学生たちと「授業で使える教材」づくりに取り組みました。教師が生徒の実態に合わせて自由自在にカスタマイズできるようにパワーポイントで制作をしました。

ライナーノーツには次のように書きました。

過去に制作したものには、The Giving TreeやThe Gift of Magi(賢者の贈り物)、はなちゃんの味噌汁(英語版)などの作品を、頭から理解していけるように、BGMに合わせてフレーズや一文を順にアニメーションで登場させています。また、キャラクターも動くようになっています。

膨大な時間をかけて制作した学生たちには、卒業制作(卒業論文)として渡すだけでなく、本人たちの了解を得て、全国の先生方にお譲り(無償)してきました。今まで、500セット以上のDVDが北海道から沖縄までの先生(希望された方)の手に渡りました。制作した学生たちは、最初の企画書で次のように制作の意図を書きました。

 1 ) ある会社でトイレ掃除をしている清掃員。しかし、掃除中に面接に来た男子就活生2人の「こんな仕事だけはしたくないな」と笑われてしまいます。聞こえないふりをしている清掃員に変わって、一緒に居合わせた男性社員の言葉に、彼らは凍り付きます。それは…。

 2) インスタント・ラーメンの歴史を紐解く動画と世界の食糧不足を危惧する動画、WWFのCMをつなげた動画を作ります。私の教育実習先では平気で給食を残す生徒が多かったです。時代の流れでしょうか。もっと食べ物を大切にしてほしいという思いから作ります。

 3 )イギリス英語とアメリカ英語の違いについての問題。私が教育実習に行った学校では、海外自体に興味がない子供が多かった。そのため、自分たちが勉強している英語から文化の違いを紐解いていけるような作品を作りたい。

 4 )How do you guess this word」参考。よく使われるが習った使い方以外の使い方も知ってほしいため、文やイラストで状況を載せ身に着ける。例) EVERはよく使われるけど、学校ではHave you EVER been to~?の使い方しか習わない。そして、これ以外の使い方がないと思っている生徒も多い。

 5 )誰もが知っている本の内容をところどころ穴抜きにし、面白い表現のところや、先の展開を英語でどうあらわすかを一緒に考えてみる。自分で考えるきっかけを作りたいという思いと、英語の話題で友達とコミュニケーションを取り、クラスの雰囲気がよくなってほしいという願いがあるため。

 6 )「愛してくれてありがとう」という絵本を英訳したい。ひとりぼっちのパウパウサウルスと、目の見えないティラノサウルスの友情物語。子供に読ませたい絵本1位に選ばれており、生徒の関心も高いのではないか。

 7) 異文化理解として、中国の文化を紹介したいです。具体的な内容は、①Tシャツで出席OKな結婚式 ②パジャマ=お金持ちのステータス など実際に暮らしていて驚いた文化の違いを紹介し、少しでも隣国に興味を持ってくれるきっかけになればー。

 8 ) アンデルセンの『最後の真珠』という童話。あるお金持ちの家で子どもが生まれ、その子に妖精たちが様々な幸福な真珠を持ってくるが、ただ一つ悲しみの真珠だけが抜けている。そのため彼は…。

折を見て、いつかYouTube(限定)でいくつかご紹介できればと考えています。

次にご紹介するのは、作品づくりの中間審査、最終審査の後のコメントです。どれとして同じ意見(考え)はありません。自分の作品づくりによって、こだわりが生まれ、それがVoiceとなって伝わってきます。

中間発表(中間審査)のコメント

最終審査を終えてのコメント(中段より)

仲間の取り組み、話した内容、書いた内容、作品(成果物)に触れた時、学習者は大きく心が揺さぶられます。自分にはない視点で作られている場合、咄嗟にインスピレーションが湧きます。そして、無性に「直したい」という気持ちになります。教育哲学者 のデューイ(J. Dewey)は「人間は絶えず自己更新をする」と言いました。人間は、本来、自分を成長させたい、良いもの(excellence)を追求したいという思いを持っているということです。振り返り(今回は、中間評価、最終評価の場面)で、学習者の「メタ認知能力」を高める場面を演出することで、このHPで何度もご紹介しているように「主体的に学習に取り組む態度」として現れてきます。

最後に、学生たちがどのような思いで講義に取り組んでいたかをご紹介します。彼らのvoice は教師にとって貴重な「年輪」(next stageへのsteppint stones)となります。

3回生の講義(教育方法の理論と実践)の最終講義後の振り返りメールより(PDF)

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2025/01/最後のメール.pdf

このようなvoiceは教師の指導の「履歴」であり、反省(振り返り)と授業改善のヒントが満載です。謙虚に、そして真摯に向き合うことが、学習者への波及効果になると信じます。

生徒から学ぶようになると、生徒もみるみる変わっていきます。それは、自分の存在価値に気づき、自己肯定感self-esteem)高めるようになるからです。授業以外の行事や部活動などで生徒を褒めた時、また感心したことを伝えた後、生徒はどのようになったでしょうか。目をパッと輝かせ、取り組みが主体的になったのではないでしょうか。「誰かに喜んでもらえた」「人の役に立てた」「周りから、できていると認めてもらえた」という喜びが自己肯定感を高めます。それが人間の心理であり、それは普遍のものです。だとすると、授業でもそれが有効に活かせるということです。また、同僚に対しても同じことが言えます。相手の考えや意見を傾聴し、受容し、評価をする、感謝をすることで、その同僚は心を開き、同じ方向を向くようになります。

学校現場では、同僚や生徒に対してマウントを取りたがる、上から目線で説得したがるといった「自己満足」(優越感)を優先させる行為、人間関係をギクシャクさせる行為がよく見られます。これは、「自分がされたくないことを相手にしている」(自分を客観視できていない)ことに気づけていないからです。

このHPの 『学習指導案を見れば、その教師の実力(授業力)がわかる』でご紹介した『SOS』(しゃべりたがる、教えたがる、仕切りたがる)という負の習慣を断つことです。教師が頭から教えようとしたり、間違いを正そうとしたりすればするほど、生徒は受け身で依存的になってしまいます。目の前のことにため息をつき、「できない」「無理」と考えるようになります。

学習者のvoiceに丁寧に向き合うということは、適切に評価をする(褒める)ということです。ただ、表面だけ、行為だけを褒めると逆効果になるので、気をつけなければなりません。変容があったときに具体的に評価をする、行為よりもそれを引き出した考え方を評価するようにします。

先般、関西外大で教えていた時のゼミ生(1期生)とオンラインで繋がるHome Coming Dayを持ちました。終わってから、次のようなメールが届きました。今、指導主事をしている方です。

「よいモデル」は、教師が褒めるだけでなく、友だち同士で何がよかったかを話し合い、自分たちで決めていく方法も有効であるというお話がありました。教師が自身を客観視できるなら、褒める視点も明確になります。理念を持って行う「褒める」という行為が意味を持ってきます。しかし、場当たり的に(表面的に)褒めていると、効果が半減される、または反発されるケースもあります。この点に関して、つい先日、自己効力感を向上させるための方法の一つとして、市教委の研修で Vicarious Experiences 代理経験)が大切だということを学びました。自分と似ていたり、近かったりする相手が何かを達成した場面、できた場面を見ることが、いい影響を及ぼすということで、より具体の形として、今日の中嶋先生のお話につながりました。よく「褒め言葉は大事!」ということが言われます。もちろん、それには賛同しますが、褒め方やタイミングを考えることが大事です。中嶋先生がおっしゃったように、教師に褒められても、生徒からすれば、「贔屓」に見えたり、「恥ずかしい」という思いを引き出したりすることがあります。実際、私も「あまりみんなの前で褒められたくないです」と生徒から言われた経験もあり、一概に「褒め言葉は大切だからたくさん言っていこう!」とは言えないものだと痛感しています。そのため、今まで「もっと生徒のことを褒めていきましょう!」という話を聞くたびに、「本当にそれだけでいいのか」と納得や共感ができない場面が多々ありました。これとは逆に、中嶋先生のお言葉がいつも心に「ストン」と落ちるのは、そういった現場の先生の気持ちや生徒の心情を本当によくご存知で、深く理解されているからこそ、相手に伝わる言葉を選び、伝わるように話されているのだと感じました。私も行政として現場に関わる立場ですので、やはり直接関わる相手である現場の先生たちのことを、しっかり見て、よく知っていかなければ、そして導管メタファーに陥らないように気をつけなければ、相手が納得できる話はできないのだと再確認しました。中嶋先生とお話しさせていただくと、「またがんばろう」とエンカレッジされます。今日はオンラインの途中で、ふと「中嶋マジック」という、昔読ませていただいた中学生の授業の感想の文字が頭に浮かんできました。卒業してからすでに15年以上経ちましたが、このように集まれること、そして「中嶋マジック」を再度体験させていただけることに本当に感謝しています。

このような voice が返って来るようなやり取りを心がけたいといつも願っています。目の前の出来事だけを見ようとするのではなく、プロセスや変容、そして根底にある考え方(idea)を評価しようとする姿勢を持つ教師が増えていけば、SNSやコミュニケーション不足によるトラブルを乗り越えられる逞しい子どもたちが育つのではないかと考えます。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント