スポーツから学ぶ「軸足」の意味
スポーツでは、腰を回転させることでためた力を爆発させます。分かりやすいのが球技です。選手は、ボールを蹴る、打つ、投げるといった動作を行います。その時に必要になるのが「軸足」です。「軸足」に重心移動をすることで、次のプレーの準備ができます。
野球における「軸足」の役目とは
ピッチャーは、どんなにスピードの速いボールを投げられても、ストライクが入らなければ勝負になりません。大事なのは制球力(球をコントロールする力)です。その制球力の決め手になるのが「軸足」です。
「軸足」がブレないこと、その軸足にしっかりと体重が乗っていること、そしてためを作ることが鍵になると言われています。
「軸足」がしっかりと作れるようになると、腕がしなるようになり、スピードボールが生まれてきます。力任せに投げるのではなく、全ての基本は「軸足」であるということです。
バッターも同じで、「軸足」と「腰の回転」で強い打球を打ちます。筋肉隆々の人が力任せに打っても手打ちになるだけで、勢いのある打球にはなりません。「軸足」の象徴となるのが、元読売巨人軍の王貞治氏の一本足打法(左足を軸足として全体重を乗せ、タメを作って打つ打法)です。
Los Angeles Dodgersの大谷翔平選手は、日本ハムFightersにいた時、打つ前に軽く右足を上げていました。大リーグに渡ってからは、100マイルのスピードボールに対応するために腰の回転だけで対応するようになりました。さらに、彼は自分の「軸足」の位置を決めるときに、必ずバッターボックスに立つ前にバットを置いて足の位置を確認しています。こうして生み出される彼の打球は、多くの大リーガーたちが “Incredible!”と衝撃を受けるようなスピードで、スポーツニュースでもよく取り上げられています。
バスケットボールの「軸足」の役目
バスケットボールでは、ボールを持った時点、あるいはボールを空中で持った後に先についた方の足が「軸足」(ピボットフット)となります。「軸足」がしっかりと固定されていないと、トラベリング(反則)を取られてしまいます。
ボールを持った時にどの足が「軸足」になり、どのような体勢を取っているかが次のプレー(レイアップシュート、スリーポイントシュート、パス、ドリブル、スクリーンなど)に大きな影響を与えます。良いプレーをするためには「軸足」がとても重要になります。
バスケットでは、シュートを打つ利き手とは逆の足が「軸足」になります。ただ、次のプレーを考えて立ち止まったのか、それとも何も考えずに立ち止まったのかはその後のチームプレーに大きな影響を与えます。
試合中、相手選手に囲まれてしまい、慌てた結果、本来の軸足ではない足がピボットフットになってしまった時は、膝が伸びてしまっており、ちょっと押されただけでもフラフラしてしまいます。それが相手にボールを奪われてしまう要因となります。
一方、自分で意図を持って「軸足」を決めたときは、次のパスでチームメートをどう活かそうかと考えています。しっかりと腰を落として、チームメートの動きをよく見て、絶好のタイミングでパスを繰り出すことができるので鋭いパスになり、シュートにつなげられます。
「軸足」がしっかり決まっていると、フリーの足を自在に移動させることができ、ボールを守りながら力強い攻めの一歩を踏み出せます。つまり、相手に悟られないようにする一瞬の「タメ」や「フェイク」(攻撃側の選手が相手をだますためにしかける行為)を活かすことができるのです。
別の記事(🟠 スポーツの上達、学力の向上、いずれも「軸足」次第)で、スキー教室の初級コースの講師を取り上げました。今回は、野球とバスケットボールを例に挙げて説明をしてみましたが、これはサッカーでも、テニスや卓球でも同じです。つまり、「基礎・基本」になるものは、いずれも同じだということです。
授業における「軸足」とは
授業における「軸足」とは何でしょう。それを心がければ、スポーツの一流選手たちのように大きな成果を上げることができます。それは、残念ながら、教科書を終わらせることではありません。何故なら、教科書を終わっても本当に英語力がついたかどうか(実際に、自分で使えるかどうか)は判断できないからです。
教師が「確かな軸足」(力をつける正しい指導方法)を確立していれば、子どもたちに「技能」がきちんと身につきます。ALTがnatural speed で話している内容を聞き取り、ワークシートなどに頼らずに即興でやり取りができる、自分で情報を整理したり、まとめたりできる。そんな生徒を育てることができます。さらに、2次的な成果として、英検や実力テスト、全国学力・学習状況調査等で力を発揮できる生徒を育てることもできます。
いかがでしょう。「軸足」とは、ものの考え方であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。それは、何のために教師という職業を選んだのか、自分はどんなふうに周りの人の役に立てるのか、を考える「自分の生き方」そのものになるのではないでしょうか。