🧭 学習の目的は「知識の獲得」ではなく「概念形成」

◆ 教室は、人間の「思考」を育てる場

このHPでは、「教え方のコツ」や「楽しい活動の紹介」などを目的としてはいません。
扱うテーマは、学習者の心理に寄り添い、学習意欲をどう高めるかという本質です。

以前、当HPで次のような記事をアップしました。そこでもお伝えしたのですが、学校での授業を「知識の獲得」(教科書を終わること)と勘違いしてしまうと、本来、身につけなければならない資質・能力が有耶無耶のまま終わってしまう可能性が出てきます。

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授業とは単に知識を伝える作業ではなく、人間の思考を育てる営みです。その根底にあるのが、「学習の目的=概念形成」という考え方です。

概念」とは、自分が理解していることを、経験や知識をもとに整理し、自分の言葉で説明できる内容のことを指します。

たとえば、

  「哺乳類」とはどんな特徴をもつ生き物か?

  「帰納法」では、具体的な事例からどのように一般的な考えを導くのか?

  「主体的」と「自主的」は、どこがどう違うのか?

これらを自分の言葉で例を挙げて説明できるとき、
その人の中には「概念」が形成されていると考えることができます。

単なる暗記や定義の再生ではなく、知識を再構成し、使える知恵に変えること
それこそが「概念形成」です。

◆ 「知っている」と「実際にできる」は違う

一度でも耳にしたことがある内容に、実際に説明できるかどうかを確かめずに、
「知ってる」「聞いたことがある」と判断してしまう――

これが、学びを止めてしまう最大の落とし穴です。

途中で説明できなくなり、思わずスマホで検索する。
それは、まだ自分の中に概念が定着していない証拠です。

自分の言葉で説明できること、例が言えることが本当に理解していることなのです。

◆ 生涯学習とは、「自分の概念」を磨き続けること

「生涯学習」とは、資格を身につけることではありません。
自分の中の概念を、より正確に、より豊かにしていくことです。

そのためには、いつも心の中に
なぜだろう?」「どうしてそうなるのか?
という問いを持ち続けることが大切です。

この姿勢こそが、やがて“心の筋肉”を鍛えてくれます。

授業改善に欠かせない8つの「概念」、説明できますか?

このHPでは、授業を見直す上で欠かせない「概念」をかなりご紹介してきました。今回、ご用意したのは8つです。いずれも、相手(子どもたち)が感情を持った人間である以上、「教え方」以前に知っておかなければならないことです。ご自身の言葉で説明できるか、ぜひチェックしてみてください。


1)“道管メタファー”とは?

― 学力を低下させる「知識の流し込み型」授業とは?

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2)“time on task” と “task on time” の違いとは?

― ワクワクする授業を生む考え方と、学習意欲を奪う考え方の差とは?

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3)“令和型学習指導案”の設計ポイントは?

  ― 「できるようになった子どもの姿」から逆算して単元をつくるやり方は?

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4)学習意欲の循環サイクルとは?

  ― “バンドワゴン効果”と“スノブ効果”をどうプラスに活かすか?

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5)教師の“SOS”の癖を治す方法とは?

  ― 「教えすぎる」「喋りすぎる」「仕切りすぎる」をどう克服するか?

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6)「思考ツール」の正しい指導順序とは?

  ― 「時間がないから省く」という判断が招いてしまう混乱とは?

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7)”積み木型授業”と”ジグソーパズル型授業”はどこが違う?

  ー授業の「準備」とは何をすることか?ー

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8)”River people”と”Goal people”の違いとは?

  ー授業で子どもたちをワクワクさせるのはどっちか?ー

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◆ 「説明できること」が「生きている知識」

いかがでしたか。
説明できたものと、できなかったもの――その差はどこにあったでしょう。

前者は、日常の実践や思考に組み込まれているもの。
後者は、読んで理解したつもりでも、行動に結びついていないものです。

人は「なるほど」と腑に落ちたときに学びが定着します。
学びが残るかどうかは、その情報に「関心」と「価値」を見いだせるかにかかっています。

◆ 「概念形成」は、自分の「生き方デザイン」

学びとは、外から与えられるものではなく、
自分の中に新しい構造を築く行為です。

それは、単に知識を積み上げることではなく、
世界の見え方を変える力を持っています。

つまり、概念形成とは「学力を育てること」ではなく、
自分の生き方をデザインすることです。

あなた自身の概念が豊かになれば、
クラスの子どもたちも自然と変わっていきます。

教師と子どもたちが互いに学び合う――
その「主体性のハーモニー」こそが、いま教育現場で求められていることではないでしょうか。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント