◆ 懐かしさを呼び起こす存在
皆さんは、「鉄人28号」をご存じでしょうか。
この問いに「おっ、懐かしいな」と思われた方は、きっと60歳以上の方ではないでしょうか。
どの世代にも、その時期に夢中になったヒーローやキャラクターがいます。
機動戦士ガンダム、仮面ライダー、セーラームーンなど、それぞれの心に残る存在があるはずです。
◆ 授業で記憶に残るもの
学校生活でも同じことが言えます。
卒業して久しぶりに集まったクラス会で話題になるのは、皆で一緒に何度も繰り返し取り組んだこと、あるいは時間をかけて協力し合ったことです。
「そういえば、演読(音読から朗読へと高め、最後はテキストを見ずに小道具を使って語った活動)、覚えていますよ。あれ、本当に役立ちました」
「授業で歌った英語の歌、今でも口ずさめます。あれ以来、洋楽を聴くのが習慣になりました。ここで Yesterday を一緒に歌いませんか?」
「探究コーラルマップを使ってチームで発表したこと、忘れられません。SDGsのテーマなのに、ちっとも難しいと思わなかった。またみんなでやりたいですね」
こうした言葉こそ、子どもたちにとっての「授業評価」と言えるでしょう。
◆ 鉄人28号との再会
「鉄人28号」もそうでした。月刊誌「少年」を買って読み、テレビに釘付けになりました。スポンサーは江崎グリコ、グリコ乳業でした。当時はキャラメルが20円ほどだったでしょうか。グリコのキャラメルを買うと、小さな鉄人28号のオマケが付いてきて、それを集めるのが楽しみでした。
神戸・長田区新長田には、その「鉄人28号」の巨大モニュメントがあります。全長18メートル、重さ50トン。鋼鉄製で、実物大です。作者の横山光輝氏(『三国志』でも有名)が神戸出身であることから、阪神淡路大震災からの復興のシンボルとして建てられました。

大学勤務時代に何度か訪ねたことがありましたが、2025年2月に「色褪せた鉄人」の塗り替え工事が行われたと聞き、ちょうど神戸市の小中合同研修会に呼ばれたこともあり、久しぶりに“再会”してきました。

鮮やかなコバルトブルーに生まれ変わった鉄人28号は、やはり自分にとって「別格」でした。鉄腕アトム、エイトマン、スーパージェッター、宇宙少年ソラン、遊星少年パピィ以上の存在感があります。

◆ 正義にも破壊者にもなる存在
なぜ、鉄人28号が、自分にとって「特別」だったのでしょう。
その理由は、他のキャラクターとの決定的な違いにあります。
アトムや他のヒーローは、最初から最後まで正義の味方として描かれます。しかし鉄人28号はリモコンで操作されるロボット。もし敵の手に渡れば、ゴジラのように街を破壊してしまうのです。
「味方にもなれば敵にもなる」――この二面性が当時の自分には強烈に映り、心を奪われたのだと思います。
◆「操作次第で変わる鉄人」と「学びのデザイン」
鉄人28号が「正義にも破壊者にもなる」のは、リモコンを握る人の意図次第で姿を変えてしまうからです。
授業はどうでしょうか。
子どもたちにとって授業は、「知識を詰め込む場」にもなれば、「自分の力を発揮して仲間と共に成長できる場」にもなります。その違いを生むのは、教師の「理念」と「授業デザイン」です。
教師が、一方的に「正解」を導き出す操作をすれば、子どもたちの学びは「受け身」で「窮屈なもの」になります。
一方、子どもに考えさせ、協働させるように、相手にリモコンを渡せば(自己決定させれば)、授業は生き生きと動き出します。
鉄人28号が「味方」にも「敵」にもなるように、授業もまた「子どもの未来を拓く力」にも「学びを止めてしまう力」にもなり得るのです。
大切なことは、教師がその可能性を意識し、子どもたちに「自分で操作する喜び」を与えることではないでしょうか。