兵庫県中英研の研究大会の「その後」です。3人の授業者から「コメント」をいただきましたのでご紹介しておきます。
“学び続ける教師”だけが、生徒を本当に変えられる
◆ 坂元 翼 (稲美中)
「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」。
この言葉を最初に聞いたのは、私が19歳のときでした。
サッカー監督ロジェ・ルメール氏の言葉です。
当時は深く理解できませんでした。しかし、「思考ツール」を学び、目の前の生徒たちの姿が変わっていくのを何度も目撃する中で、ようやく胸の奥から納得できました。
“教師が学び続ける限り、生徒は変わり続ける。”
今回の研究授業では、生徒のいきいきとした姿について、参観者の皆さまから多くの温かい言葉をいただきました。
「前向きに英語を話しているのが印象的だった」
「生徒の表情がとても良かった」
そんな声を聞くたびに、私自身が励まされました。
指導が正しかったかどうかは分かりません。
しかし、生徒の変容が何よりの「答え」でした。
また、HPの授業動画をご覧になられた先生方から
「すぐに授業を見直したくなりました」
「私もやってみます。明日の授業が楽しみになりました」
「教科書はどのように扱っておられますか?」
といった、多くの問い合わせもいただきました。
そのとき、はっと気づきました。
“福岡の先生方が私たちにくださったバトンを、今度は私たちが渡す番だ” と。
生徒の変化は偶然ではありません。
「正しい指導」を学び、それをコツコツ実践を積み重ねてきた結果です。
そして、生徒の変容、教師の変容を間近に見た教師が、また生徒を変えていく。
そのようにして、教育が“つながれていく”のだと、初めて実感しました。
残り4か月、今の学級と向き合える時間はわずかです。
だからこそ、私自身がさらに成長し続け、子どもたちの可能性を押し広げていきたい。
あの言葉を胸に刻みながら。
「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない。」
この信念を、これからも大切にして歩んでいきます。
“授業者の意識”が変われば、生徒はここまで変わる
◆山口 耕平 (稲美中)
今回の研究大会は、私にとって「授業とは何か」について根底から考え直す機会となりました。
中嶋先生からいただいた助言の一つひとつは、英語科教員としての私の歩みを新たに方向づけるものでした。
これまでの私は、日々の業務に追われ、授業を「成立させる」ことにばかり意識が向いていました。文法説明 → リピート → プリントで確認。気づけば、従来型の授業から抜け出せず、生徒が自分の言葉で英語を使う姿をほとんど生み出せていなかったのです。
“英語を使う環境が日常にないのだから仕方がない”
そう思っていた自分もいました。
しかし、今回の実践は、その考えが根本的に間違っていることを教えてくれました。
「授業者が変われば、生徒も変わる」
今まで先輩から聞いていた話は、紛れもない「事実」でした。
生徒が「自分の英語」で必死に伝えようとする姿。
相手の意見を聞き、自分の考えをつなげようとする姿。
その瞬間、教師である私がいちばん揺さぶられていました。
「彼らは、こんなにできたのか」と。
研究大会後、元同僚の先生から「大きな刺激を受けた。ぜひ詳しく聞かせてほしい」という連絡をいただきました。かつて福岡市の実践から刺激をいただいた私が、今度は誰かに少しでも影響を与えられるようになれた。このことは大きな喜びであり、励みでもあり、同時に「もっと学び続けなければ」という決意にもつながりました。
思考ツールの指導はまだ十分とはいえません。しかし、「生徒の姿を変える授業は、教師の真摯な学びから生まれる」という真実を、この数か月で学びました。自分でつかみ取ったこの学びはきっとこれからも忘れることはないでしょう。
これからも「授業力」を磨き、生徒が英語を“使える”という実感を積み重ねる授業をつくり続けます。そしていつかの日か、自分自身も誰かにバトンを渡せる教師になりたいと思います。
“技能を育てる授業”へ踏み出したとき、生徒は必ず変わる
◆安保 俊宏 先生(稲美北中)
私たちの授業を取り上げていただいたHPの記事の冒頭を読んだ瞬間、私は改めて確信しました。英語で育てなければならないのは「知識」ではなく「技能」である。そのためには、教師が「正しい指導(本当に力がつく指導)」を身につけるしかありません。
町田市・栗橋先生の「暗記型 → 思考型」への劇的な変化を知ったとき、私たちもまさに同じ課題に取り組んでいる最中でした。そして、
思考ツールによって、情報を整理し、自分の意見をつくり、他者とつなげて表現する
という力が確実に育つことを、強く実感しました。
特に、夏に学習指導要領を読み込んだ経験は、今の授業に直結しています。そこには無数の箇所で「思考・判断・表現」「情報の整理・統合」「他者とのやり取り」が明記されていました。
中嶋先生からいただいたアドバイスやご指導が学習指導要領に深く根ざしていることも、強い納得をもって理解できました。私たちは、ずっと「学習指導要領は、理想であって、なかなか書かれているようなことはできない」と思い込んでいました。
今回、中嶋先生から「学習指導要領の正しい読み方」を教わりました。それは、書かれていることを理解することではなく、書かれている「目標(つけなければならない力)を教室の中でどう具現化するのか」、「その指導をどう単元全体の流れの中で行うのか」という構想を考えることこそが大事なのだということです。
それを聞いて、「令和型学習指導案(最後に育った姿から逆算して考えるスタイル)」の意味がスッと頭に入ってきました。それを考えるようになってから、練習と言語活動が、そして前時と本時、本時と次時がするするとつながっていくようになりました。すると、今までの「教科書任せ(教科書通りにやる)」の考えが改められ、生徒の実態や興味関心に沿うように、タスクの内容を変えたりできるようになりました。
また、自分の“バイブル”となっている「治療編(上野先生の実践)」は、迷ったときの私の心の支えとなっています。授業前に動画を見返し、朱書きの学習指導案をにらみながら、自分の指導案を見直し、気持ちを整えて授業に向かう。困ったときは、何度もそこに立ち返ってきました。
福岡市の授業視察で見た
思考ツールを使った自然な英語のやり取り
ALTとの連携が生み出す極めてオーセンティックな英語使用
「浮き輪」を外した瞬間に生まれる生徒の主体性
これらは、私の教師人生を大きく揺さぶりました。
「本当に自分が上野先生のような授業ができているのか」という不安は、正直まだ消えていません。しかし、生徒が前向きに取り組むようになったという“事実”こそが、私の自信の根拠となりました。
そして何より──
これほど授業が楽しいと感じたことは今までありませんでした。
生徒を信じること。
自分の授業を信じること。
可能性を信じて挑戦すること。
そのすべてが、授業を“喜びの場”へと導いてくれました。
今、私が感じている「学び・成長することの喜び」を、生徒もきっと感じてくれていると信じています。
◆ 共通するメッセージは「変わろうと思えば変われる」
3人の先生方と、3ヶ月間、授業見学、オンライン研修等で関わってきましたが、研究授業を終えられて特筆できるのは次のことです。
・今まで、ずっと入力(教科書を教え込む)中心だった授業を、「出力」(自分のことを語る活動、人前での発表など)から逆算する授業に変えたことで、生徒たちの感性やポテンシャルの高さに気づく機会が増えたこと。
・それに感動された3人の先生は自信を持って、今までの授業スタイルを変えていかれたこと、そして「メリハリ(時間をかけて力をつけるところ、軽く扱うところ)」をつけられるようになったこと。
・それに後押しされるように、生徒たちがぐんぐん伸びて(できるようになって)いったこと。
3人は、次のように言っておられます。
「教師が学ぼうとしなければ、生徒も変わらない」
「生徒のワクワクを引き出すために、責任を持って教科書を編集する」
「“技能を育てる授業”では、子どもが主体的になる」
「実際に自分で行動(研究授業)してみないとわからない」
打ち上げ花火(1回きり、ノルマ)の研究授業に取り組んでも力はつきません。
自己流の指導、本時(1時間)だけを考える学習指導案を見直し、3ヶ月間、本気で自己修正をした教師だけが「初めてみる景色」の心地よさを語ることができるのです。
