🍀 Kagawa Global Symposium が突きつけた、日本の英語授業への問い

🍀 英語は「知っている」から「使える」へ

令和5年12月20日(土)、香川県で開催された Kagawa Global Symposium に参加しました。香川大学の留学生6名と、県内から集まった24名の高校生が一堂に会し、SDGsをテーマに英語で対話し、考え、発信する一日です。

昨年度に続く参加でしたが、

今年は前半・後半ともに関わり、

思考ツールを使って考えを広げ

情報を整理し、英文を書かずに発表し

即興で質問し合う

という一連の流れを、高校生とともに体験しました。

簡単に流れをご紹介しておきます。

【当日のスライド】

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2026/01/香川グローバルシンポジウム.pdf

留学生たちのデスクに移動して交流が始まります。さて、質問はできるでしょうか。

自分の背中に貼られた有名人のシール。関連する質問を考えながら「自分が誰か」に迫ります。

関連する質問が臨機応変に作れるのがコミュニケーション能力です。さて?

チームごとに「探究コーラル・マップ(Inquiry Coral Map)」に取り組みます。

絵を描いて、イメージを膨らませ、それを英語でどう伝えればいいかを考えます。

チームごとにプレゼンテーションを行います。マザーシートを見せながら各自の担当を発表しますが、ノートに書かなくても言えることに高校生たちは驚きます。

さて、プレゼンテーションはどのチームも

見事にできました。

ただ、所々で見えてきたのは、
中学校・高等学校の英語授業が抱える課題でした。

◆ 高校生は「話せない」のではなく、「話し方を知らない」

当日、多くの高校生が口にしていたのは、

「英語が話せるようになりたい」

という、極めてまっすぐな願いでした。

一方で、質疑応答の場面では、
質問に答えられない生徒以上に、

質問そのものを作れない生徒が一定数いる
という現実も、はっきりと見えてきました。

これは、日常の授業の中で、

  • 基本文・新出表現を使って
  • 身近な内容を
  • 3文程度でまとめ、文脈を意識して伝える

という経験が、十分に積み重ねられていないことの表れだと感じました。

文と文を「つなげて考える」経験が乏しければ、
話題を広げることも、相手の話を深める質問も、

生まれにくくなります。

それが、今回の Symposium で突きつけられた現実でした。

◆ 思考ツールが引き出したのは、「英語力」ではなく「自信」

しかし同時に、希望もはっきりと見えました。

マンダラチャートやマッピングを使いながら対話する中で、
高校生たちは驚くほど短時間で、

  • キーワードを手がかりに考えを整理し
  • 知っている表現に言い換え
  • 原稿を持たずに発表し
  • その場で質問し合う

という姿へと変容していきました。

香川県教育委員会 高校教育課の
主任指導主事・栗田隼人先生は、次のように述べておられます。

短時間でも、生徒が“自分たちのもの”として貪欲に学ぼうとしていた。Inquiry Coral Map は、理解だけでなく、発表の流暢さと自信を支える足場になっていた

ここで重要なのは、
生徒が身につけたのは“新しい英語表現”ではないという点です。

彼らが得たのは、

自分は、英語で伝えられる

という、実感を伴った自信でした。

◆ ALT の視点が示した「本質的な英語指導」

当日参加した Interac West の ALT から示唆に富むコメントが寄せられています。

Jim Pablo 氏は、こう語ります。

“The most essential element in English language instruction is communicative confidence grounded in meaningful use.”

語彙や文法の知識そのものよりも、
「使ってみよう」と思える環境があるかどうか。

自分ごとが生まれる場、

失敗しても安心できる場、
仲間と気楽にやり取りできる場

があるかどうか。

英語教育の核心は、

“I know the grammar rules.”
ではなく、
I can use English and communicate.

への転換にある、という指摘は、

日本の英語授業全体に向けられたメッセージだと感じます。

◆ 「話題を広げる・つなげる・まとめる」は、訓練で育つ

Symposium を通して、はっきりしたことがあります。

高校生が求めているのは、
難しい語彙や高度な文法ではなく、

  • 教科書の基本文を
  • 自分の身近な内容で
  • 文脈を考えながら使い
  • 相手の話を深める質問につなげる

そのような「学んだ英語を使い切る経験」です。

これは、特別な才能ではなく、
日常の TT 授業の中で、意図的に積み重ねることができる訓練です。

◆ 中学校・高等学校の授業へ ― 今、問い直したいこと

冒頭で述べたように、香川県グローバル・シンポジウムには昨年も参加しました。

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昨年もそうでしたが、香川県の取組みは多くの示唆を与えてくれます。

同時に、前回、そして今回の Symposium は、私たちにこうも問いかけています。

日常の英語授業は、
生徒に話題を広げる力」「つなげる力」「まとめる力
本当に育てているだろうか。

英語を「対話の手段」として立ち上げているのだろうか。

それは、
基本文をどれだけ“使いこなせているか”次第であるように思います。

◆ 自信は「成功体験」からしか生まれない

この Kagawa Global Symposium で出会った生徒たちは、
決して上手に英語を話していたわけではありません。

それでも彼らは、
考え、伝え、つながり、
「やればできる」という手応えを、確かに掴んでいました。

英語は、覚えるものではありません。
使うことで、少しずつ「自分の言葉」になっていく言語です

そういう意味では、

未来につながる確かな一歩を、
日常の授業の中で、どれだけ丁寧に用意できるか。

今回の Symposium は、その原点に立ち返らせてくれました。

それを示唆するものとして、最後に、

シンポジウムを担当された県教委の栗田主任指導、

高校生たち、

そしてインタラックのALTのコメントを紹介しておきます。

🍀 県教委の主任指導主事のコメントより

香川県では、毎年12月に、高校生を対象とした グローバル人材の育成 を目的とするプログラム(グローバル・シンポジウム)を実施しています。

本プログラムでは、高校生と留学生が混合グループを編成し、SDGsをテーマに、現状や課題、その解決策について英語でディスカッションを行い、最終的にプレゼンテーションを通して成果を共有します。今年度は、中国2名、インドネシア2名、ネパール1名、マレーシア1名、台湾1名の計6名(1名欠席)の留学生が参加しました。

今回は、昨年度に引き続き中嶋先生を講師にお迎えし、24名の高校生と6名の留学生が参加しました。参加者はまず、マッピングを活用した思考ツールについて学び、その後、SDGsに関するテーマでディスカッションに取り組みました。

高校生たちは当初、英語でディスカッションを行うことに難しさを感じている様子でした。しかし、伝えたい内容を自分の知っている表現に言い換える練習や、マッピングを用いてキーワードごとに思考を整理・視覚化する活動を重ねることで、短時間のうちにキーワードを手がかりに自分の考えを英語で表現できるようになりました。その過程で、生徒たちは驚きや達成感を実感している様子がうかがえました。

今後は、学校における日常の英語授業の言語活動においても、今回の手法を生かし、生徒が英語で自分の考えを主体的に発信できるような学びへとつなげていきたいと考えています。

香川県教育委員会事務局高校教育課 

教育指導グループ         

主任指導主事 栗田 隼人

🍀 参加した高校生たちの感想(一部)

⚫︎ワークショップ自体とても楽しかったが、私の英語力がまだまだだと感じたし、もう少し英語力を高めて留学生と話ができたらなと思った。

⚫︎主にコミュニケーションの姿勢と、どうやって英語を自分の中で組み立てて話せばいいかの2点について大いに学びを得られた、有意義な時間だった。

⚫︎高校が違う子たちと話してとても仲が深まりました。また、自分たちの4技能のポテンシャルを高めるワークショップで「考える力」がついたと思うし、何よりもたくさんの人と英語で関わることが新鮮で良かったです。

⚫︎色々な人と関わることが多くて楽しかった。

⚫︎英語をあまり話せなくて悔しかったのでもっと頑張ろうと思った。

⚫︎外国人の方と交流することができて、自分のコミュニケーションにまだまだだなと感じる反面、やればできるんだという自信にもつながりました。

⚫︎とても楽しかったです。講演中のほとんどの時間、わかりやすい英語で話してくれたおかげで、英語を聞いて理解して話す、この流れを自分の力でできたということが自信になりました。

⚫︎即興で英語の表現を考えるのは難しかったが、多くの留学生と関われて楽しかった。

⚫︎ 中嶋先生の講義がすごく為になって面白かった。英語じゃないと話が通じない場面もあり、絶対に話さなければならないという環境が新鮮で、有意義な時間に繋がったと感じた。

⚫︎文法や難しい語彙に執着せず、相手とコミュニケーションを取ることだけを目指すのが楽しかった。

🍀 ALTが捉えたシンポジウム

昨年に引き続き、高校生たちをフォローしてくれたインタラック西日本の2人のALT(IanとJim)のコメントです。

                        

Jim Pablo, Interac West

  1. What did you feel seeing the students engage in collaborative learning, Mandala charts, and mapping?

◆学生たちが協働学習やマンダラチャート、マッピングに取り組む姿を見て、何を感じましたか。

Answer:
Seeing the students engage in collaborative learning using Mandala charts and mapping felt encouraging and hopeful.

◆マンダラチャートやマッピングを使いながら協働的に学ぶ生徒たちの姿を見て、とても勇気づけられ、希望を感じました。

It gave me the impression that the students were not just unresponsive members of the audience passively absorbing information but they are actively constructing meaning and understanding together.

◆生徒たちは、ただ受け身で情報を受け取る聞き手ではなく、仲間とともに意味や理解を主体的に作り上げている存在だと感じました。

Using Mandala charts allowed the students to come up with ideas that were organized with intention, balance, and creativity.

◆マンダラチャートを用いることで、生徒たちは意図をもって、バランスよく、そして創造的にアイデアを生み出していました。

The use of mapping allowed the students to connect ideas and concepts with easy-to-understand structure that foster easier presentation of the said ideas.

◆マッピングは、考えや概念を分かりやすい構造で結びつけることを可能にし、その結果、発表もしやすくなっていました。

For me, it is such a rewarding moment to see how students convey and communicate their thoughts and ideas without the fear of making mistakes because they are guided with their self-organized understanding of the topic at hand.

◆自分たちで整理した理解を拠り所にしながら、生徒が間違いを恐れずに自分の考えを伝えている姿を見ることは、教師として非常にやりがいを感じる瞬間でした。

  1. What were your insights on how the students were able to master the “Inquiry Coral Map” for their team presentations so rapidly?

◆生徒たちが短時間で「Inquiry Coral Map」を使いこなせた理由を、どのように捉えていますか。

Answer:
I think one thing that really stood out the most was the energy of shared ownership. Students listened to one another, they shared their ideas, they negotiated ideas, and they built a collective understanding of the global issues they wanted to tackle.

◆最も印象的だったのは、「学びを自分たちのものとして引き受けている」という共有された当事者意識のエネルギーです。生徒たちは互いに耳を傾け、意見を出し合い、調整しながら、取り組むべきグローバルな課題について共通理解を築いていました。

Discussing global issues require a lot of information. Having said that, mastering the inquiry map was a big help to the students not just in building their comprehension and understanding but also their proficiency and fluency in presenting their ideas.

◆グローバルな課題を扱うには、多くの情報が必要です。その中で、Inquiry Coral Map を使いこなせたことは、理解を深めるだけでなく、発表における正確さや流暢さの向上にも大きく貢献していました。

Given the limited time to prepare for the presentations, mapping gave the students the confidence to present even without holding scripts – just images and pictures to relay the information they want to convey.

◆準備時間が限られている中でも、マッピングがあったからこそ、生徒たちは原稿を持たず、画像や図だけを頼りに、自信をもって発表することができていました。

  1. What do you believe is the most essential in English language instruction?

◆英語指導において、最も重要だと考えることは何ですか

Answer:
I believe the most essential element in English language instruction specifically in Japan is communicative confidence grounded in meaningful use.

◆私が考える、日本における英語指導で最も本質的な要素は、「意味のある使用」に支えられたコミュニケーションへの自信です。

It is true that building one’s vocabulary and mastering one’s grammar are important, what remains to be greater challenge for many English language learners is not knowledge of the structure and grammar, but the hesitation to use English.

◆語彙を増やし、文法を身につけることが重要なのは確かです。しかし多くの学習者にとって、より大きな課題は、知識そのものではなく、「使うことへのためらい」です。

Therefore, as teachers, it is our duty to prioritize creating a safe and supportive environment where students can practice expressing ideas, asking questions, and interacting in English without the fear of making mistakes.

◆だからこそ教師には、生徒が間違いを恐れずに、考えを述べ、質問し、英語でやり取りできる、安全で支え合える学習環境を整える責任があります。

I believe that the heart of effective English language learning lies in helping students believe “I can communicate”, not just “I know the rules”.

◆効果的な英語学習の核心は、「ルールを知っている」ではなく、「自分は伝えられる」と生徒自身が信じられるようにすることだと考えています。

             

Ian Strange, Interac West

1. The strong emphasis on timely English use was highly effective, as it pushed students to communicate spontaneously and authentically.
This approach meaningfully supported their fluency development and helped build confidence in using English in real-time situations.

◆英語を「その場で使う」ことを強く意識させた点は非常に効果的でした。生徒は即興的かつ自然に英語でやり取りすることを求められ、その経験が流暢さの向上と、実際の場面で英語を使う自信につながっていました。

2. Nakashima-sensei’s confident use of English throughout the presentation set an excellent example for the students. His clear, assured delivery gave him a sense of authority and credibility, demonstrating the value of English as a practical communication tool.

◆中嶋先生が終始自信をもって英語を使われていたことは、生徒にとって非常によい手本でした。明確で落ち着いた話し方は説得力と信頼感を生み、英語が「実際に使えるコミュニケーションの道具」であることを体現していました。

3. For future symposiums, providing students with additional time to develop their presentations would greatly enhance the quality of their work. Many students showed strong ideas, and a slightly longer preparation window would allow them to refine their content more thoughtfully.

◆次回のシンポジウムでは、発表準備の時間をもう少し確保することで、成果物の質はさらに高まると思います。多くの生徒は優れたアイデアを持っており、準備や練習の時間が少し増えるだけで、内容をより深く磨くことができるでしょう。

4. It may also be helpful to clearly separate the time allocated for writing from the time allocated for practicing. Students would benefit from knowing exactly when to shift from idea development to rehearsal, ensuring they can focus on delivery, clarity, and confidence during the final presentation.

◆また、構想の時間・絵を描く時間と、練習の時間を明確に分けると有効ではないかと思います。「いつ考え、いつ練習するのか」がはっきりすれば、生徒は最終発表に向けて、伝え方・分かりやすさを工夫し、自信を持って集中するようになるのではないかと考えます。

5.Some students appeared unsure about the distinction between a familiar mapping and the Mandela chart. Offering a brief demonstration or comparison beforehand—highlighting that the Mandela chart emphasizes structured thought progression—could help students use the tool more effectively and with greater purpose.

◆一部の生徒は、最初、一般的なマッビングとマンダラ・チャートの違いが理解できていない様子でした。授業で簡単な比較やデモンストレーションを行い、マンダラ・チャートが「思考の展開を構造的に進める」ツールであることを示しておくと、より目的意識をもって活用できるようになるのではないかと思います。

I enjoyed the symposium again this year and hope to join again at the end of the year.

◆今年もシンポジウムに参加できたことをとても嬉しく思っています。ぜひ、年末にもまた参加したいです。        


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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント