第3回:文脈を可視化し、4技能と家庭学習へ広げる ー 定着と伸びの設計
「文脈が大事なのは分かりました。
でも、それをどう教えればいいのですか」
Three Sentences. を紹介すると、
必ずされる質問です。
第1回では、
1文では足りない
2文では弱い
3文で初めて文脈が立ち上がる
という設計の原点を示しました。
第2回では、
Three Sentences. が、
“教室で回る型”になること、
つまり思考が循環し始める構造を扱いました。
次に問われるのが、
「その文脈を、どうやって全員で共有するのか」
という段階です。
多くの場合、教師は、
- 説明を丁寧にしようとする
- 例文を増やそうとする
- 手順を細かく示そうとする
という方向に進みがちです。
しかし、授業を拝見すると、
説明量が増えたからといって、
文脈が共有されるわけではない
ということが、よく分かります。
なぜなら、
文脈とは「聞いて理解するもの」ではなく、
「今、何をしているのかが一目で分かる状態」
になって初めて、共有されたと言えるからです。
生徒が止まる理由は、「力不足」なのではない
Three Sentences. に取り組んでいると、
こんな場面に出会います。
- 1文目で手が止まる
- 2文目で話題が逸れる
- 3文目が、ただの付け足しになる
生徒が迷っているのは、
「今、この1文は、全体の中で何をしているのか」
(どこに繋げればいいのか)が見えていないからです。
文が出てこないのではなく、
現在地が分からないのです。
教師がここに気づかないと、
「彼らには無理なのかな」とか
「もっと単語を教えなければ」とか
「練習量を増やさなければ」と
考えてしまいます。
◆ 「3文で考える」とは、流れを扱うということ
「3文で考える」というのは、
単に文の数を3つにすることではありません。
- 1文目:話題を立てる
- 2文目:具体を足す・広げる
- 3文目:意味づけをする・つなげる
という流れを意識することです。
この流れが見えていないと、
生徒は、
「とにかく3文書かなければならない」
というノルマの作業に陥ってしまいます。
しかし、
・今は、入口。話題を立てるところ
・ここは、広げる場面
・ここは、意味を結ぶところ
と分かっていれば、
1文1文の役割を意識するようになり、
作業ではなくなります。
◆ 文脈を可視化する、たった一つの工夫
では、文脈はどうすれば「可視化」できるようになるのでしょうか。
特別な教材は必要ありません。
大切なのは、流れを常に“見える位置”に置くことです。
たとえば、黒板の端や掲示に、
① Topic(話題)
② Detail(具体)
③ Meaning(つながり・意味)
と、常に書いておくのです。
あるいは、
① Now
② Next
③ Finally
と、今どこにいるのかを示すこともできます。
それだけで、生徒の迷いは消えます。
なぜなら、
判断の基準が教室に置かれるからです。
教師の頭の中にある構造を、
教室全体の「共有物」にする。
それが「可視化」です。
◆ 「今、何をしているのか」が分かるサイン
文脈が共有されるようになると、
生徒の使っている言葉が変わります。
- 「これは1文目だから、あまり詳しく書かなくていいよね」
- 「2文目は、理由を書くんだよね」
- 「3文目だから、どんな気持ちを書こうかな」
こうした発言が、
教師の指示ではなく、
生徒同士のやり取りの中から自然に生まれるようになります。
これは、流れを理解した上で、自分なりの表現を選んでいる(活用している)状態です。
「3文」は、思考の足場
「3文」という枠は、
制限(生徒を縛るためのもの)ではありません。
むしろ、
「何から書けばいいか分からない」
「どこまで書けばいいか分からない」
という不安を取り除くための、思考の「足場」です。
何をどう考えればよいのかが見えているとき、
生徒のエネルギーは「不安」ではなく「思考」に向かいます。
そして、この構造は一場面にとどまりません。
次のように4技能に波及していきます。
- 話す ─ 情報や考えを、順序立てて伝える
- 書く ─ 脈絡を確かめながら、論理を整える
- 読む ─ 段落構造をつかみ、意味の流れを追う
- 聞く ─ 話の展開を予測しながら理解する
足場は、活動を支配するものではなく、あくまでも構造を導くための「設計」です。
構造があるからこそ、判断が生まれる。そして、判断が生まれるからこそ、4技能が分断されず、「使える力」になって結びついていくのです。
さらに、家庭学習でも、
「今日は①だけを考えよう」とか
「②を厚くするためにもっと練習をしよう」
のように、主体的に取り組むようになります。
文脈の可視化は、学習者の自走を支える「設計」となるのです。
▶️ 第4回の予告 — 文脈の先にあるもの —
ここまで、
3文が「文脈を可視化する足場」になることをご紹介してきました。
次に問うのは、
「その3文で、何を語らせるか」
ということです。
構造が見えたとき、
内容の質が問われます。
そこで使われるのが OREO、PREPという「論理の設計ツール」です。
では、Three Sentences. という「文脈の設計ツール」とどう組み合わせればいいのでしょう。
第4回は、
これらを接続し、
文法・思考・コミュニケーションを一本の設計図で結びます。
学習者は、そこから、ぐんぐん伸びていきます。
