♻️ 往還は「設計」ではなく、「反応」で決まる(1/4)

【第1回】 往還とは何か

往還」は、ルートが決まった周回コースを用意することではありません。

授業の中で起きている「往還」は、

教師が“順番”を組むことではなく、

学習者の状態に応じて“判断”を

変え続けることです。

たとえば、授業を拝見していると、
次のような場面に出会うことが少なくありません。

  • 本来は「個」に戻すべき場面で、ペアやグループのまま活動を続けている
  • まだ一人ひとりの考えが立ち上がっていない段階で、いきなりグループで話し合わせる

これでは、信号が赤なのに、無理やり横断させるようなものです。

学習形態が使われる「目的」が意識されていなかったり、
あらかじめ決めた順番どおりに活動を回すことが

目的化してしまったりすると、
多くの場合、子どもの思考はうまく立ち上がりません。

こうしたズレが起こらないためには、
「個」と「協働」をどう行き来させるのか―
つまり、往還」をどう捉え、どう機能させるのかを、

改めて整理する必要があります。

そこで今回は、
往還」をテーマに【全4回シリーズ】として、
次の順で考えていきたいと思います。

  1. 往還とは何か
  2. うまくいかない往還
  3. 機能する往還
  4. 往還が生む学びの深まり

なお、各回の具体的な説明として、
すでに「反転学習(予習)」として取り上げさせていただいた

「リレーノート」の実践事例を軸にしながら、
授業の中で何が起きているのかを丁寧に見ていきます。

◆「往還」を「工程表」にしてしまうと、何が起きるか

授業を参観させていただくと、

黒板にこんなふうに書かれている場面を見ることがあります。

個人思考 5分
グループ交流 7分
全体共有 5分

この進め方が悪いと言っているわけではありません。
ただ、問題は、

時間が先に立つ(意識される)ことで、

学習者の状態(取り組みや内容)が後回しに

なってしまわないか

ということです。

その瞬間、「往還」ではなく「作業」になってしまいます。

往還」とは、本来―
戻したり、進んだり、

出したり、引いたりする

という判断です。

ということは、

教師が次のような判断ができるかどうかです。

  • 迷って」いれば、個に戻して自分の考えを確立する
  • 自分ごととして「言葉が立ち上がって」きたら、協働にする
  • ズレ(ギャップや差)が見えた」ら、もう一度、個に戻す

大事なのは、「順番」ではなく、あくまでも「反応」です。

教師の仕事は、

学習者の足跡(思考の痕跡)に反応して、

学びの形を臨機応変に変えることにあります。

◆そもそも「往還」とはどのような意味なのか

往還」は、しばしば go back and forth(行ったり来たり)と説明されます。
ただし、授業で起きている往還は、単なる往復運動ではありません。

研究会や学会で使われている文脈に近い言い方は、次のような表現です。

  • reciprocal movement
    (学習者の反応に応じて、「個で考える」「人と関わる」の判断を行き来させる動き)
  • a dynamic interplay
    (「一人」で考えた内容が「協働」の中で揺さぶられ、「協働」で生まれた気づきが、再び「個の思考」を書き換えていく関係)
  • move fluidly between reflection and interaction
    (立ち止まって考える時間と、人と関わって考え直す時間を、学びに応じて無理なく切り替えていくこと)

どれも共通しているのは、教師が“反応”し続けるプロセスだという点です。

往還」とは、「ルートを設計すること」ではなく、立ち上がりを見て判断を変え続けることです。

◆「個別最適」は、「協働」の“前”でも“後”でもない

現場では、次のように語られることが少なくありません。

  • 個別最適な学び 協働的な学び
  • 個別最適な学び 協働的な学び

しかし、ここに誤解があるようです。

大事なのは、足し算でも、矢印の関係でもないということです。
アイキャッチのイラストのように

足跡が行ったり来たりしている状態―それが「往還」です。

行って、戻る。
触れて、戻す。
更新して、また行く。

この足跡は、あらかじめ引かれた周回コースではありません。
学習者の反応に応じて、その場で増えたり消えたりする軌跡です。

🎬次回予告(第2回へ)

中間評価を入れたのに、学びが深まらない――。
それは授業が失敗したのではなく、

往還が“一方向”になっているのかもしれません。

「途中は出さない方が安全だ」

生徒がそう判断した瞬間、教室で何が起きるのか。

どうすれば“発表会化”を構造で止められるのか。

第2回では、足跡が片側にしか伸びない教室を解剖します。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント