Design the pause. That’s where learning begins.(単元設計で決まる、英語が“使われ始める瞬間”)
1|体験が問いを残した理由
2025年最後の記事(12/24)では、 バッティングセンターQ&A、Pac-Man、チャイムと競争する活動を体験していただきました。
即興で続ける。 時間が迫る。 失敗しても止まれない。
三つの活動に共通していたのは、 単なる「楽しさ」ではありません。
即興性と、時間制限によるほどよい緊張感。
これもまた、立派な「塩味」です。
さらに、Q&A活動に 「一言足し」を加えると、 それは確かな「塩」になります。
答えたら終わり、ではなく、
Why? How? Give me an example, please.
とつなぐ。
あるいは、
Oh, really?(Cool! / That’s great.) Tell me more.
と、相手に委ねる。
こうすることで、 思考は一段、深まります。
では、 どこで、どうやって、 このような「塩」を用意すればよいのでしょうか。
第二弾では、 その“塩の位置”を、 単元設計という視点から考えていきます。
2|「塩味(えんみ)」と「塩味(しおあじ)」は別物である
ただ、その前に、確認しておきたいことがあります。 同じ漢字でも、意味がまったく異なる二つの「塩味」の認識についてです。
一つは、 塩味(えんみ)。 五味の一つとしての、味覚の属性。
もう一つは、 塩味(しおあじ)。 「ちょうどいい」「少し足りない」「塩辛い」といった、 食べた人の主観的な実感です。
授業に置き換えると、こうなります。
🔵 塩味(えんみ)= 教師が操作できる設計要素
🔴 塩味(しおあじ)= 生徒が体験する学びの質
この違いを意識しないまま授業をしてしまうと、
「頑張らせてはいるが、力がつかない、育っていない」状態に陥ります。
最も危険なのは、 教師自身が 「ちゃんと味付けした(指導した)」つもりになり、
生徒がどう味わったのかを確かめないまま 次へ進んでしまうことです。
3|単元設計とは「塩梅」を考えること
教科書を予定通りに進める授業では、
「塩味(しおあじ)」を効かせることに、 無意識のブレーキがかかります。
「時間がかかりそうだ」 「教科書の最後まで終わらなくなりそうだ」
そう考えて、 塩を入れる前にスルーしてしまう。
その一方で、 活動(多くは練習)だけは増えていく。
しかし、単元設計で問われているのは、 活動の数でも、ICTの量でもありません。
問われているのは、 どこに、どのくらい塩を入れるか。
つまり、 「塩梅(あんばい)」なのです。
塩は、 多すぎれば台無しになる。 少なすぎれば、存在しないのと同じ。
これは、マニュアルでは決められません。
学習者の様子を見ながら、条件を一つ変えるだけで、
- このままでは足りない
- 言い直したい
そのように、主体的に学習に取り組む瞬間が生まれるからです。
それを、 単元設計の段階で仕組んでおくこと。
それが、 教師という「塩梅の仕掛け人」の専門性です。
4|なぜ“活動に工夫”だけでは足りないのか
研究授業後の協議会で、 こんな言葉をよく耳にします。
「今日は思考させたいと思って活動を仕組みました」
「思考ツールを使ってみました」
「発展的な問いに挑戦しました」
しかし実際には、 単元全体が“甘い流れ”のまま進んでいることが少なくありません。
理由は明確です。
それぞれの活動が、 最後につけたい力につながっていないからです。
「塩は活動の中に入れるもの」 という発想そのものが、 点の思考なのです。
単元構想が緩いままでは、 一部の活動にだけ塩を振っても、 全体に溶けてしまい、 結局、味はぼやけてしまいます。
🌿 塩が最も効く、単元の3つの節目
単元設計で考えるなら、 塩を入れるべき位置は、主に三か所です。
① 入口|行き先を示す塩
単元の最初から、 新出語彙、文法説明、本文理解に入ってしまうと、 生徒はこう思います。
「あぁ、いつも通りだな」
入口で必要なのは、 行き先を示す「塩」です。
- 最後に、何ができるようになるのか
- 誰に向けて、何を伝えるのか
- そのために、今日は何をどこまでやるのか
これを最初に示すことで、 生徒は「塩味」を感じ取り、 気持ちが引き締まります。
② 中盤|条件を変える塩
中盤は、 言語形式が最も定着しやすい一方で、 最も「作業」に陥りやすい時間です。
ここで入れるのは、 条件の変更の「塩」です。
- 相手を変える
- 場面を変える
- 目的を変える
「分かったつもり」の基本文が、 「このままでは通じない」と気づく瞬間、
英語は初めて 学習者の中に intake され始めます。
③ 出口|評価の前に入れる塩
よくある失敗は、 評価(テスト)で単元を終えてしまうことです。
出口で必要なのは、 「できた・できない」ではありません。
- 制限時間
- 即興性
- 相手からの質問への対応
こうした「塩」を通して、 自分が納得できるまで使い切れたか を問い返すことです。
ここで初めて、 単元の学びは 「経験」として記憶に残ります。

次に残る問い──塩は、どう見分けるのか
ここまでで、 「どこに塩を入れるか」は見えてきました。
しかし、 もう一つ大切な問いが残ります。それは、
「塩を入れたつもりでも、 本当に効いているかどうかは、 どうやって分かるのか。」
ということです。
正解かどうか、長く話せたかどうか。
それだけでは、見えないものがあります。
英語が通じなかった瞬間
言い直しが起きた瞬間
生徒の表情が変わった瞬間
次回は、 そうした微細な変化を見逃さない「教師の〈眼〉」に焦点を当てます。
塩が効いたかどうかを決めるのは、 レシピではなく、 教師の「見分ける力」(舌の感覚)だからです。
🎬 NEXT PREVIEW|予告編
Seeing Salt in Learning A pinch of salt makes the difference. ―生徒が変わる瞬間を、見逃さないために―(1月6日配信)
