🍋Make Your Own Lemonade.

🍋 失敗を“学び”に変える

皆さんは次の「格言」をご存知ですか。

“When life gives you lemons, make lemonade.”

Popular American proverb (early 20th century)

この表現は、逆境(lemons)をチャンス(lemonade)に変えるという意味で、アメリカの前向きな人生観を象徴することわざです。

教室では、この“レモン”のように感じる瞬間がよくあります。ミス、誤解、うまくいかなかった活動、気まずい沈黙……。

しかし、子どもたちをワクワクさせる授業をしている教師たちは知っています。そんな“すっぱい瞬間”こそが、学びを深めるチャンスになるということを。

彼らが大切にしているのは、To make my own lemonade.(自分のレモネードを作る)という考えです。

たとえば、生徒がこう言ったとします。

「何を言ったらいいかわからない。」

そんなとき、教師はこう返します。

「なるほどね。じゃあ、どうしてわからないんだと思う?」

すると、沈黙が”思考“に変わり、問いは「内省」につながる”考える種”となります。その時、教師は、もうレモネードを作りはじめているのです。

たとえば、グループ活動がうまくいかず、生徒たちが困っているとき。教師はタイミングを見計らって言います。「じゃあ、一緒に何か新しいルールを考えてみよう。どこがうまくいかなかった?」

その瞬間、“乗り越えられない壁”は共有される課題に変わります。これもまた、レモネードです。

🍋「教えなければ」を違うスタンスで

 1.「教える」から「学びを起こす」へ

多くの教師は「教えなければ生徒はわからない」と考えがちです。しかし、学びは“受け取るもの”ではなく、“生まれてくるもの”です。

知識を教えることよりも、「なぜそうなるのか」「自分ならどう考えるか」を問う構造を設計することで、学びは内側から動き出してきます。

教師が「教えなければ」という感覚の根底には、“正解を与えないと不安”という心理があります。しかし、言語活動において重要なのは「意味をつくること、場面を浮き立たせること」です。

「正しさ」で止まる学習は、そこから発展しません。完結したと考えてしまうからです。ですから、学びが「自分ごと」にはならないのです。

「教えたのにできない」という焦りは、“成果主義”から生まれています。大事なのは「教えた量」ではなく、むしろ「内容の深さ」であり、「気づきの頻度」です。

教師が「完璧になる」必要などありません。不完全さを認め、色々と試して、皆んなで学び合う場面を作ることが、学習者にとって最高の教材になります。

たとえば、生徒がこう言うことがあります。

“I was boring.”(本当は “I was bored.”と言いたかった)

教師は “No, You should say, I was bored. OK? Repeat after me.”と指導しがちです。しかし、すぐに訂正しようとせずに、あえてこう言います。

T: Aha. You were boring? (2つの文を板書します)

The class is boring. 

So students are bored.

boring させている原因は何?

S:class(授業)

T:bored  させられたのは誰?

S:students

T: That movie was boring.I was bored with that movie. boring させている原因は何?

S:movie

T:bored  させられたのは誰?

S:I

T:なるほど、ではどう区別したらいいんだろう?

S:進行形は動詞を使うから主語は生き物だけど、形容詞の時は、2通りある。ーing はさせている原因だから主語はもの。ーedは気持ちだから主語は人間。

T:BINGOだ!じゃあ、もし、主語が人なのに-ingを使ってしまったら? たとえば、「私は興味を持った」と言いたいのに I am interesting. と言ったら?

Ss:「私は面白い人間だ」 ん? そんなこと自分から言う?

T: 「あなたは驚いたんですね」と言いたい時に、You are surprising.と言ったら?

Ss:「あなたは私をびっくりさせる」?

T: 「彼女はショックを受けた」と言いたいのにShe is shocking.と言ってしまったら?

Ss:「彼女はショッキングな人」?

T: 「あぁ、あなたは飽きてしまったんですね」と言いたい時にYou are boring.と言ったら?

Ss:「あなたはつまらない人」? うわ、真逆だ!あっ、さっきのI was boring. 私はつまらない人間という意味になっちゃう!

T: そうだね。彼女はワクワクしていたと言いたい時にShe is exciting.と言ったら?

Ss:「彼女はエキサイティングだ」? げっ、やばい😨

T:では、ペアで練習します。Aは-ingの入った英文を言い、BはそれをYes. で受けて-ed の表現を使って続けてご覧。

Student A: “The story was boring.”

Student B: “Yes, I was bored, too!”

(板書された形容詞は surprising/ surprised, interesting/interested, moving/moved)

T:まとめましょう。-ing” は?

Ss:「私をそうさせている原因」。 

T:“-ed” が使われていたら?

Ss:「気持ち、そう感じている」。なるほど! 主語でわかるね!

このように間違いをすぐに正すのではなく、主語に気づけるように”Who feels?” “What causes?” と問いかけるようにすると、意味のズレを自分で発見できるようになります。

🍋 “学び”を立ち上げるのは教師の役目

“レモン(失敗、ミス、目の前の壁)”も捉え方次第で、“学び”の格好の材料となります。

教師の役割は、”レモン”を避けることではなく、共感・省察・ユーモアという3つのエッセンスで混ぜ合わせ、学びを「新しい味」に変えていくことです。

Make your own lemonade.

この姿勢こそ、英語教師に求められる「創造的レジリエンス(resilience)」であり、子どもたちが「失敗を恐れずに挑戦する心」「困難から立ち直り、成長していく力」を学ぶ最良のレッスンです。ですから、教師は自分や学習者を「責める」のではなく、「意味を見出す」ようにするのです。

人生のどこか、授業中に”レモン”が見つかったら、ため息をつくのではなく、自分の手で「レモネード(自分で作って飲む楽しみ)」の作り方を考えてみる。すると、”レモン”が苦痛ではなくなります。

レモネードもオリジナルの飲み方で楽しんでみるのです。砂糖がNGの方は、それをアルロースやハチミツに変える。ミントの葉を入れて飲んだり、レモネード・シロップにして炭酸水で割ったり、紅茶に入れたりする。いろんなバリエーションを知っていると、それだけ楽しみが増えます。

「すっぱいという経験」も、少しの「工夫」と「ひと手間」で、”美味しくなる!“という教訓に変えられます。

レモネードづくりも、授業づくりも同じではないでしょうか。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント