テキストの「本文」は何のためにあるのか
「教科書の本文を扱うときは、どうしても解説や訳すようになってしまいます。英語で考える力をつける方法はないでしょうか。」
✏️ 私の考え:「英語で考える」とは、思考そのものを英語の構造、発想で行う(英語のまま感じ、考える)こと
「英語で考える力」と聞くと、文法や語彙を駆使してスラスラ話すことをイメージしがちです。しかし、本質はそこではありません。
“英語で何をどう感じ、どう整理するか”という思考のプロセスを英語で行うことが大切なのです。
たとえば本文の内容を「主人公はなぜそうしたのか」「自分ならどうするか」と問うとき、それを 思考ツール(マンダラ・チャート、階層式マッピングなど) に書き出してみると、子どもたちは自分の考えを英語で“可視化”しながら整理できるようになります。
文の正確さだけを求めるのでなく、自分の考えを何度もスクラップ&ビルドすることで、自身を客観視出来るようになるのです。「英語を英語のまま理解する」ために必要なのは、本文を使ったチャンキング(チャンクとは「意味のあるひとかたまり」のこと。英語は「名詞チャンク」、「動詞(述語)チャンク」、「副詞チャンク」の3つから成っている)、shadowing, retelling などの指導です。
1)チャンキングの指導
このチャンキング(チャンクで英文を区切る)の指導の目的は「英語の語順のまま、頭から理解できるようになる」ためです。これが身につけば、リスニングも、長文読解も、文脈に沿ってそのまま理解していけるので「ポイント(概要)」がすぐに把握できます。即興のやり取りをする場合も、会話はチャンク(単語ではなく、フレーズが中心)を組み合わせることが基本となるので、チャンクに慣れさせる指導は不可欠です。
よく、教師が教科書を読みながら、生徒に「スラッシュ(/)」を書き入れさせる授業を拝見しますが、受け身(指示されたことをやる)の学習では「自分で考えない」ので定着しません。または、自己流になってしまいます。上に書いた3つの「チャンク」を自分で教科書本文の中から見つけるという練習が必要です。ただ、これは、新しく習っている単元で行ってもあまり効果はありません。なぜなら、習ったばかりの文法や語彙はすぐにはイメージできないからです。
お勧めは、すでに習った単元(前の学年のテキスト、前の学期で習った単元)を「チャンク」ごとに印(まとまりごとに下線をひく、または/で切る)をつけて、何度も音読をするという練習です。内容はすでにわかっているので、この練習を繰り返すことで、日本語に訳さずに英語のまま頭から理解できるよう(脳にイメージが湧いてくるよう)になります。
この「英語脳」ができてくると、「まず、日本語で考えてから、それを英語に直す」という無意味な活動(大きなタイムロスであり、英語で考える力がいつまで経っても身につかない)がなくなります。
2)シャドーイングの指導
シャドーイングには、目が早く動くように訓練をする「アイ・シャドーイング(目やペンで指しながら追いかけるもの)」、忠実に聞こえる音だけを追いかける「プロソディ・シャドーイング」、意味を考えながら追いかける「コンテント・シャドーイング」、音声と全く同じ発音・同じストレス・同じ抑揚で同時に読む「シンクロ・シャドーイング」があります。
今、学習者はどの段階なのか、どの力をつけるためなのかを考えて取り扱うことが大事です。ただ、シャドーイングで終わりではなく、ある程度できるようになったら、「リピーティング」で仕上げなければなりません。「リピーティング」とは、1文を最後まで聞いてから、その後すぐに「完全再生(再現)」させるという練習です。これは、リピーティングと違って「意味」が理解できていないと、途中で躓いてしまいます。長い英文の場合は、カンマで切ったり、7語±1語(人間ができる一気記憶の限度)のところで切ったりします。
1)の「チャンキング」の指導と繋がるのは、この「リピーティング」です。この活動は、生徒同士がペアになって行うことができます。クリスクロスゲームや教師が生徒に順に質問をしていくような「全員が英語を使う機会が少ない活動」と違い、「言語の使用量」が格段に増えていきます。
3)リテリングの指導
このHPで何度もお伝えしているように、本文の暗唱と違って、この「リテリング」では、テキストの内容が具体的なイメージとして頭に浮かんでくるほど音読を繰り返し、習熟しておくことが大前提となります。そして、
どう伝えたいのかを「階層式マッピング」に表して「全体構想」を練ります。
それができたら、今度は自分で絵(写真、イラスト)を選びます。登場するキャラについてのコメント(過去の単元から引用)、自分の考え、最後のメッセージなどを組み合わせ、最後はタブレット端末を使って「電子紙芝居」を行うようにすると、どの生徒も生き生きと取り組みます。終わったら、仲間からの「即興の質問」、そして最後は書いてまとめます。リテリングの最終ゴールは「書いて仕上げること」です。
「訳す」から「考える」へ──思考の方向を変える
私たちはどうしても、「意味を理解する=訳すこと」と捉えがちです。
しかし、英語の学びで大切なのは、“意味を移す”ことではなく、“考えをつくる”ことです。
たとえば、登場人物の気持ちを表す言葉を本文から抜き出し、それを「自分の気持ちに近い言葉」と線でつなぐ──これが「英語で考える」ということです。
訳す前に、「自分はどう感じたか」「なぜそう思うか」を英語で書く、英語で話す時間をつくる。これが“英語で考える”第一歩になります。
🤝 「やり取り」が思考を英語に変える
教師が一方的に解説してしまうと、子どもの思考は止まってしまいます。しかし、”Why do you think so?” “Any other ideas?“と問い返すだけで、子どもの思考が循環しはじめます。
そのやり取りの中で、子どもたちは自分の考えを「自分の言葉」にする必要に迫られ、「言いたいことを英語でどう言い表すか」を自然に探るようになります。つまり、対話が“英語で考える”力の原動力になるのです。
🌱「見える化された思考」から“英語で考える”が始まる
英語で考える力を育てるには、
「英語を正確に使う」ことよりも、「考えを英語で見える化する(自分が伝えたいことから入る)」ことの方が先です。
思考ツールを使って自分の考えを整理し、教師や仲間と英語で何度もやり取りする。その積み重ねが、いつのまにか“英語で考える自分”を育てていきます。
つまり──
「英語で考える」は“英語を使って考える”ことではなく、“考えるために英語を使う”こと。そこにこそ、これからの外国語教育の本当の価値があると考えます。
次回(第4回)は、「英語で考える力をつけるチャットやスモール・トーク」についてです。教師が与えたトピックはどうしても「文法定着」をねらいとしたものになりがちです。そのせいか、子どもたちの話がなかなか深まり(続き)ません。では、どうすれば良いのでしょうか。
