「探究」を英英辞典で調べてみると
「探究」を英語でどう言うか調べると、inquire と explore と出てきます。しかし、それぞれニュアンスが違うようです。
1. inquire の意味とニュアンス
inquire = ask questions to find out something
(知りたいことを尋ねて確かめようとすること)
■ “inquire” のニュアンス
•中心は 質問・問い。
•情報を求めるために 問いを立て、調べ、確かめる という活動。
•プロセスは「問い→調査→理解」に重心がある。
•「もっと知りたい」という認知的欲求が出発点。
2. explore の意味とニュアンス
explore = look around and discover new things
(まわりを見て、新しいことを見つけようとすること)
■ “explore” のニュアンス
•中心は 冒険・発見・広がり。
•「問い」よりも 体験や観察を通して世界を広げる イメージ。
•結果として問いが生まれることも多い。
•「未知のものに触れてみる」ことが出発点。
inquire と explore の決定的な違い
2つの違いを比較した表をご覧ください。
| 観点 | inquire | explore |
| 中心となるもの | 問い(Question) | 発見・体験(Discovery) |
| 始まり | 「なぜだろう?」 | 「やってみよう」「見てみよう」 |
| 思考の動き | 深める(narrow → deep) | 広げる(wide → broad) |
| タイプ | 論理的思考・調査・検証 | 観察・体験・創造性 |
| 結果 | 答えに近づく | 新しい問いが生まれる |
探求学習には両方とも必要です。
ただし 核になるのはあくまでも inquire の方です。
なぜなら、「探求学習(Inquiry-Based Learning)」の英語名が示す通り、探求の中心は inquire(問いを立てて深めること) だからです。
✳️ なぜ “inquire” が探求の核なのか?
•「問いをつくる → 調べる → 意味づける → 問いを更新する」という探求のサイクルを動かすエンジンは「 問い(inquiry)」 であること
•国際的にも、IB(International Baccalaureate)やPBLはInquirers(探究者) を中核概念としていること
✳️ “explore” は探求の入口に最適
•子どもの興味をひらき、問いの芽を生む。
•「川を見に行く」「虫を観察する」「街を歩く」などは、初期の広がり(divergent thinking)を支える。
•explore があるからこそ inquire が深まる。
「探求学習」の名称は “Inquiry-Based Learning” (問いから始まる学習)だと言いました。ただしプロセスの最初は、Students explore, then inquire.(子どもはまず広げ、そこから問いを生み、深めていく)というのがルールです。
いきなり(学習者に丸投げで)、「自分の知りたいことについて問いを立てなさい」と指示をしたところで、入り口で這い回ることになり、結局、何かを調べてそれを発表するという形になってしまいます。
• explore は“探検する・広げる”
• inquire は“問いを立て深める・確かめる”
• 探求学習の本質は inquire
• しかし、探求の入口として explore は欠かせない
教師は、これらの「探究」の意味を理解し、「モヤモヤ感」を作るプロセスを提供することが大切です。それがないと、「発表会を用意する」とか「待てずにヒントを与えてしまう(サイトを教えてしまう)」という状況になってしまいます。
「探求学習」は、explore → inquire → explore → inquire のサイクルにすることで、学習者が成長すると言えます。
