💡学習者が「考える授業」をつくる(前編)

 

トライアングルTTが教えてくれる「経験」の本質 ―

以前の記事で”ペーパードライバー”の話をしました。

彼らは、交通ルールや標識の意味をきちんと理解しています。

しかし、実際に道路に出ると体が固まり、周囲の状況に対応できず、頭の中は真っ白になってしまいます。

つまり、

「知っていること(知識)」は、そのまま「できること(技能)」にはならない

ということです。

この構図は、そのまま教師にも当てはまります。

授業の理論やTTのやり方を「知って」いても、実際にやろうとするとうまくいかない——そんな“ペーパーティーチャー”状態に心当たりはないでしょうか。

✳️ TTがうまくいかないのは「能力がないから」ではなく「経験がないから」

ALT、日本人教師、生徒が“三位一体”になって英語でやり取りするTriangular Team-Teaching(トライアングル・ティーム・ティーチング)とは、三者(Teacher–ALT–Students)が対等に関わり合う授業」という意味です。

これは、本来、英語を「使う活動」を中心に据えることができる学びの場です。

ところが、現場の多くの教師は、次のような不安を抱えています。

• うまく進まなかったらどうしようという不安

• ALTと噛み合わなかったら場がしらけてしまうのでは?

• 生徒が質問に答えられなかったら、どうフォローすればいいかわからない

この不安が大きければ大きいほど、「やっぱり、いつもの説明+プリント中心の授業の方が安心できる」と元に戻ってしまう——。

しかし、これは能力の問題ではありません。経験不足の問題です。

車の運転は、

• 最初はゆっくり

• 危険が少ない環境で

• 失敗しても大丈夫な設計で

小さな成功体験」を積み重ねていけば、誰でも運転できるようになります。

TTもまったく同じです。

小さく始めて、成功体験を設計していくことが大切です。

✳️ なぜ「経験」がそれほどまでに重要なのか

学習科学や第二言語習得の研究では、

インタラクション(相互作用)

アウトプット(自分で話す/書く)

フィードバック(相手からの応答)

が、知識の定着や言語習得に非常に大きな役割を果たすことが、繰り返し示されています。

頭の中にある「分かったつもり」を、

実際の場面で「使ってみる」ことで、初めて

何が言えるのか

何が言えないのか

どこでつまずいているのか

が本人にも教師にも見えてきます。

✳️ TTは、その“使う経験”を意図的に生み出せる場

ペーパーティーチャー状態から抜け出すために、TTの活用は非常に大きな意味を持ちます。

TTがうまく回り始めると、教室には次のような変化が生まれます。

生徒がALTに自然に質問をし始める

「正解を言う」よりも「自分の考えを伝える」ことに価値が生まれる

教師も、生徒の発言や表情を見ながら、その場で問いをつくるようになる

つまり、TTは、

「説明を聞く授業」から「考えながらやり取りする授業」へのスイッチ

になり得るのです。

ですから、ALTとどう「役割」を分担するかではなく、子どもたちとどこでどんなインタラクションをするかという場面を一緒に考えるのです。

なぜなら、子どもたちは教師にとって、「仮説(単元計画と学習指導案)の誤り」に気づかせてくれるなくてはならない存在(小さな先生)なのですから。

ただ、その前提として欠かせないことがあります。

それが、「ゴールの共有」と「ALTとの信頼関係」です。

このあたりを、「中編」ではもう一歩踏み込んで扱っていきます。

🔔 次回(中編)の予告

中編では、次のテーマを扱います。

TTがうまくいかない本当の理由は「打ち合わせ不足」ではない

「ジグソーパズル型教師」と「積み木型教師」

ALTを“共同設計者”に変えるマンダラ・チャートの使い方

その具体的なイメージを、中編でご紹介します。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント