■ なぜ、To Do をこなしても授業が楽にならないのか
教師の仕事は増えています。そして、冷静に見てみると、多くの先生方はTo Do リストに書かれた仕事を、実に誠実にこなしています。
それでも――
授業は楽にならない。
むしろ、年度が進むほど、余裕がなくなっていく。
ただ、この違和感の正体は、仕事量ではありません。
問題は、仕事を「To Do」で考えていることであるように思います。ゴールがある仕事は「買い物」とは異なるからです。
■ To Do リスト思考が授業を苦しくする理由
To Do リストは、忘れ物を無くすという点、目の前の作業を整理するときには重宝します。
しかし、見通しをもつという点では、大きな弱点を抱えています。なぜなら、
To Do には、時間軸がありません。
授業を例に挙げてみます。たとえば、次のようなことが “To Do”です。
• 今日は何をやるか
• この時間に何をさせるか
• どのプリントを配るか
これらはすべて「点」の情報です。
前後のつながりが見えないまま、点だけが増えていく。
その結果、授業は――
打ち上げ花火のようになります。
確かに、授業は無事に(予定通りに)終わるでしょう。
しかし、誰の頭にも残らない。
それが常態化してしまうと、教室の背面黒板(予定黒板)に「今日の続き」「いつも通り」「3点セット」のように書かれても、誰も違和感を持たなくなります。
■ 良い授業は「時間軸」で設計されている
では、授業で学習者をワクワクさせている教師は、何が違うのでしょうか。
教師が使っているのは、
To Do リストではありません。
カレンダーです。
それも
デジタルの予定表ではなく、アナログのカレンダーです。
■ 「アナログ」にこそ意味がある
アナログのカレンダーには、明確な強みがあります。
• 一週間、二週間、単元全体が一望できる
• 前と後の関係が、空間として見える
• 「この日のために、何をすればいいか」が直感的にわかる
・ゴールから逆算しやすく、中間チェックのタイミングがイメージしやすい。
つまり、時間軸が可視化されているのです。
授業づくりにおいて最も重要なのは、
「今日は何をするか」ではなく、
「現在地(どこへ向かっている途中なのか)」を確認することです。
カレンダーは、その問いに常に答えてくれるのです。
■ カレンダー思考は、バックワードデザインそのもの
単元の最後に、「どんな姿の生徒」が立っているのか。
どんな言葉を、自分の力で使っているのか。
そのゴールを先に置き、
そこから逆算して、時間を配置していく。
これは特別な方法論ではありません。
バックワードデザインの本質です。
カレンダーを活用している教師は、
一時間一時間を「消費」していません。
意味を持って、配置しています。
次の表をご覧ください。
■ To Do 型授業とカレンダー型授業の決定的な違い
| To Do 型授業 | カレンダー型授業 |
| 今日はこれをやる | 今日はここへ向かう |
| 本時だけで完結 | 単元でつながる |
| 終わらせることに関心 | 生徒の成長に関心 |
| 振り返りがない(または曖昧) | 次につながる振り返り |
この違いは、授業の質だけでなく、
教師自身の「負担感」にも直結しているのです。
■ カレンダーを持つと、教師は「削れる」ようになる
時間軸が見えると、
不思議なことが起こります。
それは、
• 今やらなくていいことがわかる
• 仕事のバランスがわかるので、削る勇気が持てるようになる
• 「全部やらなくていい」と判断できる
これは、怠けるため、楽になるためではありません。
あくまでも、設計しているのです。
To Do に追われている間は、
削る基準がありません。
また、ゆとりもありません。
しかし、カレンダーに予定や計画を「連続体」で記入した瞬間、
明確な「判断基準」が生まれます。
■ TT授業では、カレンダーを共有する
ALTとのTT授業がうまくいっているクラスには、
共通点があります。
二人が共有しているのは、
「今日の役割」ではなく、
単元全体の時間構造です。
彼らは、カレンダーを見ながら、同じ見通しを持ちます。
だからこそ、
• 今は“任せる”とき
• 今は“支える”とき
• 今は“一歩引く”とき
という判断が自然にできる。
これも、カレンダー思考の力です。
■ 授業に必要なのは「やること」ではなく「時間の設計」
To Do リストをいくら整えても、
授業は根本的には変わりません。
「点」がバラバラの状態です。
授業を変えるのは、「時間の見え方」です。
カレンダーを眺めていると、
点と点がつながり、「線」になっていく様子が実感できます。
つまり、脳に「はっきりしたイメージ」ができるのです。
途端に、教師に「ゆとり」が生まれてきます。
学習者を英語好きにしている教師は、それを「授業づくり」に活かしています。
「あれもこれも教えなければ」という「義務感、焦燥感」がなくなり、
「これを徹底すればいいんだ」という本質が見えてくるようになるからです。
忙しさから抜け出す鍵は、新しい教材、新しい活動でも、ICTでもありません。
アナログ・カレンダーに、単元のゴール、中間地点を書き出し、到達のイメージを作ることです。
そこから、間違いなく授業が変わり始めます。
