🍀OREOをより有効に機能させるために

🍀懇親会の席での話題が”OREO”に

昨年に引き続き、香川大学の留学生と現地の高校生が一堂に会して行われた Kagawa Global Symposium を終えた後、関係者の皆さんと懇親会を行いました。

和やかな席で話題が授業の話に移ったとき、ふと OREO(Opinion–Reason–Example–Opinion) が話題に上りました。そのとき、香川大学附属高松中学校の日野康志先生から、こんな相談を受けました。関西大学田尻悟郎教授のゼミで鍛えられ、さらに附属中での発表を通して身についたと考えられる、彼の舌鋒鋭い指摘の数々につい引き込まれてしまいました。そんな日野先生から、悩みが出されました。

OREOをよく使うようになったのですが、毎回、同じような文を“流し込んで”しまう生徒が出てくるんです。

OREOの型は守っている。
順番も合っている。
文法的にも大きな誤りはない。
それなのに、中身のないものが出てしまう。

これは、多くの先生方が、なんとなく感じている違和感ではないかと思います。

そこで、その日のうちにHPにアップしていたOREOの記事を紹介すると、彼は居ても立ってもいられなくなった様子で、箸を止め、その場でスマートフォンを取り出し、貪るように読み始められました。

読み進めながら、
「確かに……」
「そうなんだよなぁ」
と、何度も頷かれました。

日野先生は、その後でこう言われました。

「HPを読むのが楽しみなんです。特に、この記事と、この記事には本当に納得しました。その後の実践にも、すぐ役立ちました。HPの記事は印刷して、何度も読み込んでいます。」

若い先生でしたが、自分の指導を客観的に見つめ直す「もう一人の自分」をしっかり持っておられました。自分の実践をメタの視点で振り返り、冷静に検証しようとする姿勢に、強く感心しました。

一方で、最近よく耳にするのが、こんな声です。

「HPの記事、最近、すごい勢いで更新されていますよね。なかなか読むのが追いつかなくて……」

スマートフォンでニュースを眺めるように、感覚的に「斜め読み」して、読んだつもりで完結してしまう。それ自体を否定するつもりはありません。

しかし、そこで思い出すのが、地球市民オンライン塾の元塾生の方々の姿です。

彼らは、スマホでの斜め読みをやらずに、印刷だけしておきます。そして、時間ができたときに、ノートに貼り、読みながら次のような点で朱書きを入れていきます。

自分の授業のどこに使えるか
どこを変えられそうか
次は何を試すか

自分に落とし込みながら、納得できる部分、頭に入ってこない部分(モヤモヤが残る部分)を分けていきます。

「印刷したプリントが1,000ページを超えました」
「気づいたらノートがすでに20冊目です」

そんな声を聞くたびに、型を“知っている”ことと、型を“使える”ことの違いを考えさせられます。

日野先生はこうも言われました。

OREOは万能ではないと思います。しかし、やるからには力をつけたい。具体的に、どう指導すればもっと内容がよくなるのか、そのプロセスが知りたいです。

そこで、今回は、その問いに正面から向き合いたいと思います。

OREOという型を、思考が止まらない形でどう教えるか、前回の記事に繋げる形で、その具体的な考え方と指導のプロセスを整理してみたいと思います。

OREOを使った学習は「書く前の指導」で決まる

🍀 OREOの”流れ”でいきなり書かせない

思考が苦手な生徒ほど、「型」が示された瞬間に、すぐに飛びつき、機械的に流し込む(英作文作業に逃げる)という傾向があるようです。

そこで、OREOに入る「前段階」を必ず設けます。

まず、英文を書く前に「マンダラ・チャート」自分が伝えようとしていること、必要な要素を書き出します。

そして、その中から取り上げようと思っているものを選び、ナンバリング(順序をつける)をします。

次に、階層式マッピング(左端から右に向かって情報を付け加えながら整理していく)で、伝えたい内容を可視化していきます。

この前段階の指導で、取り上げようとしている「要素」(メインになること、それを補う情報、根拠となること)が差別化できるようになります。

🍀 思考が苦手な生徒への具体的な支援(その1)

◆ Reasonを「最低3種類」出させる

多くの失敗例は、

Reasonが1種類(しかも感情語)に固定されてしまうことなので、次のような指示をします。

指示例(黒板に明示)

Reason

気持ち(I like / fun / interesting)

便利さ(easy / useful / saves time)

影響(for students / for society / for my future)から考える。この中から、最低2種類以上使うことを伝えます。もちろん、これ以外にも考えられるので、臨機応変に教師の方から示してやります。

🍀 思考が苦手な生徒への具体的な支援(その2)

Example が抽象になる最大の原因は、具体を考えないまま、思いついた単語だけを使ってそのまま機械作業で書き始めてしまうことです。そこで大事になるのが、Reason を書いたところで、一旦、ペンを置かせてから、次のことを伝えます。

Example に移る前に「思考」の時間をとる。

教師からの問いかけとして、「目的・場面・状況」を考えさせる。たとえば

教師「これから書く example には次の情報が入っていますか」

① When?(いつ?)

Who?(誰が?)

In your life or someone else’s?(自分?他人?)

At school or outside school?(学校?日常?)

生徒「スマホは便利」

教師 “I see that smartphones can be useful. But when are they useful? In what situations? And for whom? If you describe these points in detail, your friends will understand your idea much better.”

この問いをして、一旦、手を止めて考えさせるだけでExample の質は明確に変わります。

🍀 思考が苦手な生徒への具体的な支援(その3)

 ◆ 最後の Opinion を「最初のopinonと同じ文の使用禁止」にする

多くの生徒は、「最後の Opinion は、最初を繰り返せばよい」と誤解しています。そこで、明確な「禁止ルール」を出します。

ルール例

最後の Opinion は

because を使わない

同じ文を使わない

・教師の方で「条件」を付ける

良い変化の例

  So, I think school uniforms are good.

➡️ So, I think school uniforms are good for junior high students, but not always for everyone.

🍀 思考が苦手な生徒への具体的な支援(その4)

◆ O・R・E・Oを「分解」する

大事なことは4文を一気に書かせないことです。途端に思考せず、同じことを繰り返して「仕上げよう」としてしまいます。思考が弱い生徒ほど、4文を同時に考えると、思考が停止してしまいます。

そこで、次のように活動を分解します。

1. 授業では、最初に「 O 」と「 R 」だけを扱う

2. 家庭学習で「 E 」だけ考えてくる

3. 最後に学校で「 R 」と「 E 」の流れを協働学習(仲間からのチェック)で修正し、最後に「 O(再)」を入れる。

OREOを「1パーツ」ずつ独立させて扱うと、それぞれの目的を意識するようになります。

OREOは「思考を助ける骨組み」であって、思考そのものではありません。

教師が「」を用意し、それを板書やスライドで示した途端、多くの生徒はそれをモデルとして、一部を置き換えて仕上げようとします。そのような流れ作業学習に慣れてしまうと、生徒たちは自分で考えなくなります。

思考ツールを使って、自分ごと(自分で解決する)として構想を練るというプロセスは、学習者の意欲を高め自信をつける意味でも必要不可欠な指導なのです。(これについては、大修館から出る新刊の中で詳しく述べます)

苦手な生徒は「考えなくても書ける道」を探すものです。それを理解した上で、教師は

書かせる前に止める

問いで揺さぶる

制限で思考を動かす

ことが大事です。  

OREOが機能しないのは、生徒の力不足ではありません。「型の使い方」をストーリーのように扱う単元計画になっていないのが問題なのです。

OREOで育てたいのは、「きれいにまとめる4文」ではなく、

判断が途中で揺れ、最後に更新される経験です。

この視点が入ったとき、OREOを使った学習は「作業」から「思考」へと大きくシフトされます

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント