🍀「正しい音読」のその先へ – 英語が“作業”から“伝える行為”に変わるとき –

“使ったあと”の文法は、深く、速く定着する

文法は、

自分ごととして「使ったあと」の方が、

深く、そして速く定着します。

これは、第二言語習得研究で知られている

Focus on FormCLIL が重視している

意味理解を軸にしながら、必要に応じて

形式に注意を向けさせる」という原則です。

先にくるのは、文法ではなく

伝えたい」という思い。

その途中で、

この言い方で合っているのだろうか

もっと伝わる言い方はないか

と、ふと立ち止まる。

この順序で出会った文法は、

単なる知識ではなく、

意味のある存在として、

学習者の中に残ります。

文法が「長期記憶」になるのは、気づきを伴ったとき

文法を

「覚えて、使う」

という学習では、

どうしても 「使い方(usage)」 が中心になります。

しかし、

何を伝えたいのか

なぜ、この文法を選ぶのか

どの言い方なら相手に届くのか

を自分で考える学習では、

実際に「使うuse)」プロセスの中で

生まれた気づきが、長期記憶として深く残ります。

文法が

「テストのための知識」から

伝えるための道具」へと転換されたとき、

理解は一気に深まり、

学びは教師の手を離れ、

子どもたちの中に宿ります。

“単文”の羅列では、学びは深まらない

教師の指示の仕方ひとつで、

学びは浅くも、深くもなります。

たとえば、

「be going to を使って、自由に文を書いてみよう」

という指示だけでは、

I am going to play tennis.

You are going to study English.

I’m going to go home soon.

といった、文脈のない単文の羅列になりがちです。

もし、教師が文法の形だけにこだわれば、

「いいね。どれも to の後が原形 になっている」

という評価で学習は終わります。

一方で、文脈を立ち上げる力は、

次のような問いかけから生まれます。

be going to は、どんなときに使うのだろう?

その理解が一番表れる“場面”をひとつ選び、

 3文の英文で表してみよう。」

場面が想像できなければ、何も書けません。 

逆に言えば、

場面がイメージできるということは、

文法の本質をつかんでいるということです。

たとえば、次の3文です。

❶ My tennis racket is old now.

❷ So I’m going to save money because I want a new one.

❸ This weekend, I’ll wash my father’s car and get some money.

ここには、「状況→意図→行動

が、自然な流れでつながっています。

単に文法を「使っている」のではありません。

使わざるを得ない必然性が生まれているのです。

すると、振り返りの質は一気に変わります。

生徒は、

「先生は何を見ようとしているのか」

「学ぶとはどういうことか」

を理解し始めます。

そして、

自分で学び方を調整するようになります。

学習者としての「自立」は、ここから始まります。

*この”3文指導”に関心のある方は最後の予告をお読みください

教室が変わるのは、“心が動いた瞬間”

生徒が

伝えたい

聞いてほしい

という内発的動機(胸の奥から生まれ出る気持ち)を

持った瞬間、教室は一気に動き始めます。

どれほど正確さを積み上げても、

伝えたい内容」がなければ、

英語学習は“作業”のままです。

心が動いた瞬間、

文法は必要な「道具」として統合され、

学びは“自分ごと”に変わります。

教科書の「音読」でもそれが見られます。

意味が立ち上がったとき、

音読は「朗読」へ、

さらに 「演読(ドラマ読み) 」へと変わっていきます。

登場人物の気持ちを想像し、

声色や間、強弱を工夫する。

それは、言葉が「場面」と結びつく瞬間です。

そこで、お勧めしたい活動が “Drama Reading Contest” です。

「ドラマ読み」は、単なる音読発表会ではありません。

教科書に書かれたダイアログを、

「意味をもったやり取り」として

立ち上げる表現活動です。

それは、Repeat after me.(単語の読み方の指導)

を乗り越える活動です。

評価の観点としては、次のような項目が考えられます。

ただし、これらを一度にすべて求める必要はありません。

段階を踏みながら、少しずつできるようにしていきます。

そして何よりも重要なのは、

教科書のダイアログを、実際の場面を想像しながら、

登場人物になり切って読むという姿勢そのものです。

英語(音声面)

         • 発音(individual sounds)

         • 強勢・リズム・イントネーション

         • チャンクのポーズ(区切り)

         • 文末処理(fall / rise)

ここで見るのは、単なる「正確さ」ではありません。

意味に即した音声化ができているかという点です。

場面理解

         • 誰と誰のやり取りか

         • どのような状況・関係性か

         • 感情の動き(驚き・戸惑い・皮肉・喜び など)

         • 直前・直後の文脈を踏まえて読めているか

「内容を理解しているか」ではなく、

状況を踏まえて声を選んでいるかが評価の対象となります。

表現(演じる力)

         • 声の強弱・速さの調整

         • 感情のこもり方

         • 身振り・視線・間(沈黙)の使い方

         • 相手役との呼吸(掛け合い)

ここで初めて、音読は「ドラマ読み」になります。

文脈構築力(つながりを読む力)

         • 自分のセリフがどんな役割を果たしているか

         • 受け身、切り返し、強調、まとめといった機能理解

         • 前のセリフを受け、次につなげる読み方ができているか

これは、

「1文ずつ正しく読む」から

「対話として意味をつなぐ読み」への転換です。

伝達意識(相手に届けようとする姿勢

         • 観客(聞き手)を意識しているか

         • 相手役に「返そう」としているか

         • 独り読みになっていないか

技能ではなく、態度・意欲の評価ですが、

ドラマ読みでは最も本質的な観点です。

解釈の妥当性

         • その読み方は、本文・場面・人物設定と整合しているか

         • 独りよがりな(ウケ狙いの)演出になっていないか

         • ペアやグループで解釈が共有されているか

「正解の読み」を求めるのではなく、根拠のある解釈かどうかを見ます。

教科書の「ドラマ読み」の評価は、

「どれだけ正しく読めたか」ではありません。

「どれだけ“意味あるやり取り”として立ち上げられたか」

を見るための評価です。

この視点を日頃から学習者に問いかけていくことで、

生徒たちの学習は単なる音読練習を超え、

伝えるために読む」「やり取りとして読む」という

コミュニケーションの本質に近づいていきます。

演読(ドラマ読み)は、読みの質を変える

教科書の音読の習慣は、その後の英語学習のベースになります。

Repeat after me. で正しく読むことだけに終始する、

いわば🔰レベルの指導で止まってしまうと、その影響は

長く尾を引きます。

大学入学後の授業で、

一語一語を丁寧に読む、

意味を切り離したまま読んでしまう

学生は少なくありません。

一方で、

場面を読み取り、

間や抑揚を考えながら読む経験を積んできた生徒は、

読む姿勢そのものがまったく違います。

テストのために勉強をしてきた生徒と、

コミュニケーション活動(言語活動)を実際に体験してきた生徒の差は、

現場の中学校、高校の先生方が想像される以上に

大きいのが実状です。

「そうは言っても、うちのクラスの生徒は、

いくら指導しても恥ずかしがって、なかなかやろうとしない」

そう感じたときこそ、問い直したいのは、教師自身の姿勢です。

教室に流れる空気は、

教師の日々の振る舞いの積み重ねによって形づくられています。

教師自身が羞恥心を捨て、教室というステージでナレーションや役割を演じ切る覚悟を持つこと道徳の資料で教室がシーンと静まり返ってしまうような読み(場面を読み解き、間をとる)を心がけること。

それが、どんよりした教室の空気を打ち破る鍵になります。

以前、このHPで

荒れた学校で怪談を練習したことにより、

語り部のように語れるようになった

ということをお伝えしましたが、

読み聞かせ(なりきり音読)」は

情操教育では極めて重要です。

この状態を、特別なパフォーマンスで終わらせないことです。

やがて生徒同士が競い合い、場面を考え、工夫して読むようになります。

ALTとのTTでも同じです。

二人で「本気」で演じることです。(当HPで紹介した、福岡市立三筑中の上野正純先生とクリス先生のやり取り、そして福岡市立柏原中学校のリアム先生の演技を参考になさってください)

あわせて読みたい
🟠 なぜ、TTがうまくいかないのか(治療編 2/3) 治療編(謎解き)の第2弾として、まず、3人の先生が授業後どんな心境の変化があったのかをご紹介することから始めていきます。 【3ヶ月でTTの授業が大きく変容したの...
あわせて読みたい
💦 涙が出るほど感動したTT授業に共通していたこととは(福岡市の授業視察より③) 【ったとき】 「感動の涙が出ました。まるで高級なオペラの舞台を見ているようでした。」 福岡市立三筑中学校・上野正純先生、福岡市立原中央中学校・松田由紀子先生のT...

TTの音読指導については、

正しい音声モデルの後、必ず「ドラマ読み」につなぐことが大事です。

そして、

What’s happening?”

How does he / she feel?

Why do you think so?”

ALTにそんな問いを投げかけてもらいます。

それに慣れた生徒たちは、家庭でも、

毎日のルーティンとして「音読の練習」に

取り組むようになり、掛け算九九やラジオ体操のように

ずっと覚えている「基礎基本(基礎体力)」となります。

意味を考え、場面を想像しながら読むことが、

特別なことではなくなり、身体に染み込んでいくのです。

教科書の音読は、

単なる発音練習ではありません。

それは、英語を「使う」ための土台をつくる、

英語学習において「王道」とも言える学習習慣です。

私が現場で共に働いたALTは12人いましたが、
その中でも、今なお強く印象に残っているのが、
国際弁護士を目指していた Daniel Harris です。

彼は、英語を含め 5か国語を自在に操る人物でした。
しかも、その習得法は、決して特別な才能に頼ったものではありません。

彼が語ってくれたのは、驚くほどシンプルな方法でした。

それは―
その国の歌を覚えることです

歌詞の意味を徹底的に理解し、

声に出して何度も読むのです。

意味を置き去りにした暗唱ではなく、
一語一語の意味感情を確かめながら、
音声として体に染み込ませていく

だからこそ彼は、
音読は、語学学習の核になる
ということを、折に触れて生徒たちに力説していました。

その姿勢は、確実に生徒たちに伝わっていきました。

生徒たちは次第に、
日本語に訳すのではなく、
英語の語順のまま、

頭から意味をつかみ取る音読に取り組むようになります。

その積み重ねが、
長文読解への抵抗感を消し、
リスニングへの不安を自信へと変えていきました。

今後について(予告)Three Sentences. で文脈を立ち上げる

本稿の前半でご紹介した
3文で意味を立ち上げる」という考え方は、
日々の授業において特に重要であると考えます。

そこで、12月24日に紹介した「3文作文」を土台に、
Three Sentences. で文脈を立ち上げる」という

テーマで、2月後半から全5回に分け、
順を追って解説していきます。


よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント