🌸『教室の文化は教師の何気ない一言で作られる』ー 思考を止める言葉・動かす言葉ー(1/5)

第一回: 言葉は、教室の中を流れている

0. 教師の一言が、教室のルールになる

教室を見ていると、ふと気になる瞬間があります。

授業は進み、説明も通っているのに、

あとから振り返ると、

あのとき授業が止まっていた、という場面です。

それは、生徒の行動や声ではなく、

「思考」だったのではないかと思い当たるのです。

では、何がそれを止めていたのでしょうか。

特別な出来事ではありません。

むしろ、ごく日常の中にあります。

教師が何気なく口にした、ほんの一言です。

ここから先は、その「一言」が教室の中でどのように

働いているのかを見ていきたいと思います。

1. 教室の中で、何が止まっているのか

授業中、手を挙げかけて、ふっと止める子がいます。

ノートに何かを書こうとして、鉛筆が止まってしまう子もいます。

聞いていないわけではありません。

考えていないわけでもありません。

この場合、途中で何かが途切れてしまった可能性があります。

そんなとき、教師は

子どもの集中力が足りないから、

内容についていけないから

と捉えがちです。

しかし、多くの場合、それは教師の言葉が原因と考えられます。

言葉は、生きています。

黒板に書かれていなくても、説明されていなくても、

言葉は、ずっと教室の中を流れています。

ここで、少しだけ一年間の授業を振り返ってみてください。

授業中、手が止まったままの子はいませんでしたか。

発言しようとして、口を閉じた子はいなかったでしょうか。

そのとき、あなたはどんな言葉を使ったでしょうか。

教師は、説明や指示だけで授業をつくっているわけではありません。

何気なく口にした一言によっても、教室の向きは変わっています。

2. 教師の一言が、教室のルールになる

私たちは、無意識のうちに「わかる」「頑張る」といった言葉を使っています。

しかし、それは、聞く側にどんな気持ちを抱かせているでしょうか。

教師が「わかった人?」と挙手を求めたり、

何かできなかったときに「次は頑張ろうね」と言ったりすると、

「答えがわかること」や「うまくやること」が求められていることが、

子どもたちに伝わります。

教師が普段、何気なく使っている言葉は、

子どもたちへの隠れたメッセージになるのです。

そして、その積み重ねが、教室のルールをつくっています。

3. 教室に繰り返されている言葉

教室では、毎日のように使われる言葉があります。

「分かる人?」
「え? 昨日やったよね?」
「早くして! もう時間ないよ」
「できた人から提出して」
「早く終わった人は次に進んで」
「はい、そこまで」
「答えはこれです」

教師なら、誰もが聞いたことのある言葉です。

いや、一度は口にしたことのある言葉かもしれません。

どれも特別な言葉ではありません。

授業を回すために、日常的に使っている言葉です。

教室は、特別な言葉で変わるのではありません。

こうした日常の言葉によって、少しずつ形づくられていきます。

4. あなたの教室では、何が歓迎されているのか

教師の何気ない一言一言が、

教室の中での振る舞いを方向づけます。

どのタイミングで手を挙げればよいのか、

どこまで考えればよいのか、

どこで区切ればよいのか、など。

子どもは、その情報を教師の発する言葉から読み取っています。

あなたの教室では、どんな行動が歓迎されているでしょうか。

「正解」でしょうか。
それとも、「挑戦」でしょうか。

子どもは、その違いを見抜いています。

あなたの何気ない一言の中に、すでに表れているからです。

5. 教師がハンドルを握り続けている

教師は、無意識のうちに、

沈黙を避け、授業を崩さず、

予定通りに進めようとします。

子どもを迷わせたくない。

授業をうまく終わらせたい。

そうした思いはごく自然なものです。

そのために教室を整え始めます。

揺れを避けるために説明を増やし、

沈黙が生まれないように指示を重ね、

生徒の先回りをして次の行動を示します。

その方が安心できるからです。

しかし、子どもたちは、

教師がハンドルを握り続けており、

行き先はすでに決められているように感じています。

6. 主体的になれないのはなぜか

ここで、もう一つ見ておかなければならないことがあります。

それは、人は整いすぎた環境では

挑戦しようとしなくなるということです。

つまり、主体的に動けなくなるのです。

すぐに言葉が出てこない時間があります。

どう言えばよいか迷い、

言い直すこともあります。

そうした時間では、ずっと思考が動いています。

見た目にはもどかしくても、子どもの中では確かに何かが動いているのです。

7. 教室を動かしているのは何か

もしかすると、教室で最も大きな力を持っているのは、

教材でも、ICTでも、活動でもなく、教師の言葉そのものなのかもしれません。

教師は、様々な言葉を使って授業をしています。

言葉は、学習者に大きな影響を与えてしまいます。

ですから、

言葉には「取り扱い注意」という見えない札が貼られている

ということを意識しておく必要があります。

♻️ 次回(第2回)への接続

今回は、総論として問題提起をしました。

次回からは、教師の何気ない「一言」が、どの瞬間に、

どのように思考を止めているのかを具体的に取り上げていきます。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント