🍀“Three Sentences.” で文脈を立ち上げる(1/5)

英語の授業は、いつの間にか「全部を教える」というようになりがちです。

教科書の本文、語彙、文法、ワークシート……。

気づけば、“教えること”が目的になっていないでしょうか。

しかし、生徒に本当に必要なのは、

言える(書ける)ようにするための、意味の流れ=文脈」です。

本連載(5回)では、

特別な教材でも、特別な技術でもなく、

「3」という最小単位で、授業を

「処理する時間」から「伝える学び」へと転換する方法を提案します。

第1回:3文で「文脈」を立ち上げる(設計の原点)

第2回:3文を「話す」に接続する(教室で回る型)

第3回:文脈を可視化し、4技能と家庭学習へ広げる(定着と伸び)

第4回:3文が、PREP と OREO を“使える指導”に変える(論理が動き出す)

第5回:3文が協働を生む教室へ(実践の検証)

第1回:3文で、文脈を立ち上げる(設計の原点)

英語はそこそこ書けるのに、

話そうとすると止まってしまう。

その理由を、私たちはつい

「語彙が足りない」

「文法が定着していない」

と考えてしまいます。

しかし、別の可能性もあります。

それは、文脈(context)を考える訓練が圧倒的に少ないことです。

言葉は、場面の中でしか意味を持ちません。

場面、文脈が立ち上がらなければ、

伝え合う必然性も、話す理由も生まれません。

生徒が止まったのは、

「どう始めればいいか」を知らなかったのかもしれません。

なぜ、「3」なのか

以前の記事(2025.12.24)でも触れましたが、

私たちは無意識に「三つ」で整理しています。

三点セット、三段論法、三幕構成。

三つあると、

広がりまとまりが同時に生まれます。

ですから、3文は、

考えを形にしやすい最小単位になります。

Three Sentences.は、練習ではなく「設計」

Three sentences are not practice.

They are design.

ここで言う設計とは、

「正しい英文を書く」ための設計ではありません。

“伝えたいことが立ち上がる設計”です。

Three Sentences. には、それぞれ役割があります。

• 1文目:状況(話題)を立てる

• 2文目:具体(情報・理由)を足す

• 3文目:思い・結果・意味づけを乗せる

この流れがあるだけで、

英語は「練習問題」から

小さなメッセージ」に変わります。

ルールは1つだけ

ルールは、

「基本文・新出語句を使うのは、3文のうちの1文または2文まで」というものです。

there is / are

❌ 羅列型

There is a small pizza restaurant near my house.

There are many people in the restaurant.

There are many kinds of pizza there.

文法的には正しいのですが、

残念ながら、話し手の視点が見えません。

「思考」が入っていないからです。

⭕ 役割型

There is a good pizza restaurant near my house.

I like pizza, so I sometimes go there.

However, it is very popular, so we have to make a reservation.

情報が流れています。

聞き手に向かっています。

書き手は、意味の流れを設計しているのです。

こうすると、文法(there is/are)は、聞き手のための案内板となります。

◆ 文法は「置き場所」で意味が変わる

文法は「1文目に入れなければならない」「2文目専用」といった固定的な扱いをする必要はありません。同じ文法でも、文脈の中で置き場所は変わります。

ここでは There is / are の構文を例に見てみます。

A 導入として使う

  1. There is a very small pizza restaurant near my house.
  2. So I sometimes go there.
  3. However, it is very popular, so we have to make a reservation.

B 情報を広げるために使う

  1. I love pizza very much.
  2. There are many kinds of pizza at Osaki, my favorite pizza restaurant.
  3. So I sometimes go there.

C 付加情報として使う

  1. I love pizza very much.
  2. So I sometimes go to Osaki, my favorite pizza restaurant.
  3. There are many kinds of pizza there.

このように、文法は形ではなく、文脈のどこに使われるか、つまり「働き」で理解されます。

◆ 配慮したいこと

授業では、つい文法の「形」に目が向かいがちですが、大事なのは本来の意味、ニュアンスです。

たとえば、過去形の指導では、

動詞を「過去」にすることが大事なのではなく、

本来は、
「前はそうだったが、今はそうではない/今はわからない」
というズレや対比を伝えるための表現だということです。

そのため、

  • I am busy. を過去形にしなさい
  • I (   ) busy yesterday.の( )に英語を入れなさい。

といった機械的な問題では不十分です。

例えば、次のような問いかけなら、
過去形の意味を文脈で捉えさせることができます。

Look! A butterfly. It’s so beautiful,
maybe it was a (    ) last week.

(  )の中に入る単語は毛虫(caterpillar)です。

このように、過去と現在の対比、ズレがあるので、

文法という「形」に意味が宿るのです。

次は、生徒が実際に書いた3文です。

  1. I usually go to basketball practice after school.
  2. But today, I had a fever, so I went to the doctor.
  3. I didn’t like the shot. YUCK!                                    

「いつも」と「今日」の対比があるからこそ、意味が立ち上がっています。

教師は、日頃からどのような場面が最もイメージしやすいかを考えておくことが大事です。

Cf. 参考記事

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◆ 文法より前に、「場面」を想像することから

いずれも生徒が書いたThree Sentences.です。(一部、ALTと推敲)

彼らは、最初に「場面」を頭に描くことから始めました。

① will

  1. Tomorrow we have a class presentation.
  2. I am nervous, but my teammates are practicing hard.
  3. I will do my best and speak loudly.

② must

  1. I borrowed five volumes of Jujutsu Kaisen from Yamada yesterday.
  2. I am looking forward to reading them.
  3. I must do something nice for him.

③ should

  1. I have a lot of homework today.
  2. It’s going to be a long night.
  3. Should I take a short break first?

④ 未来表現(be going to, will)

  1. My basketball shoes are old.
  2. So I’m going to save money because I want new ones.
  3. This weekend, I’ll help my father and earn some money.

不定詞(名詞的用法、副詞的用法)

  1. I love English, especially when I talk with my friends in English.
  2. These days, I see many overseas tourists in my town, Kyoto.
  3. Now I’m studying English hard to talk with them.

⑥ if(条件)

  1. If it rains tomorrow, I will stay at home.
  2. I will watch videos and relax in my room.
  3. If it is sunny, I will go to the park with my friends.

⑦ 比較表現

  1. My mother wakes up earlier than anyone else in my family every day.
  2. She makes breakfast for my family and prepares lunch boxes for my sister and me.
  3. However, on Sundays, my father gets up the earliest because he has a baseball game.

⑧ 最上級(good, 2音節以上の形容詞)

  1. I think natto is the best for breakfast.
  2. I sometimes mix it with spinach or an egg, and sometimes I add shio-kombu.
  3. My family says that natto rolls are the most delicious.

⑨ 現在完了(経験)

  1. I have eaten spicy ramen once.
  2. It was much hotter than I thought, but it was very good.
  3. I want to try it again.

⑩ 現在完了(継続)

  1. I have played the piano for three years.
  2. At first, it was difficult, but now it is fun.
  3. I practice every day after I go home.

いずれも、共通しているのは、文法から入っていないことです。

先に「場面」があり、必要に応じて「文法」が後のせされています。

文法は、単独で教えると「知識」レベルで終わります。
しかし、Three Sentences. で考えると、自分の判断、情報や気持ちを伝える道具になるのです。

教科書との関係

教科書は大切でっす。

しかし、網羅すること自体が目的ではありません。

教科書で学んだこと(特に、基本文)を

活用」できる力を身につけることです。

どの文法を

どの場面で

どう使えば伝わるのか。

それを「具体」で示すことが、教師の役割です。

3文は、その「足場」となります。

Three Sentences.は「思考・判断・表現」を促す

Three Sentences.にすると、生徒は必ず立ち止まり、考えます。

  • 何を伝えたいのか(目的)
  • なぜそう思うのか(理由)
  • どんな場面で使うのか(場面・状況)
  • その結果、どうなるのか(因果・対比)

つまり、
目的・場面・状況」を踏まえ、
思考し、判断し、表現する。

これは、学習指導要領が求める力そのものです。

Three Sentences.は、単なる作文の型ではありません。

言語活動が生まれる“源流”なのです。

◆ 指示を変える

ポイントは、指示を変えることです。

「3文書きなさい」ではありません。

問いを、こう変えます。

友だちに、何を知ってほしい?

  • 面白いこと?
  • すごいこと?
  • 困っていること?
  • おすすめしたいこと?

さらに、次のどれかを必ず入れるように言います。

  • like / think / want(嗜好・意見
  • because / so / however(理由・因果・対比

これだけで、生徒の反応が変わります。

文法を使うことではなく、「内容」に目が向かうからです。

教師が見るべきものは、
文法ミスではありません。

中身」です。

教師のコメントで望ましいのは、

“Interesting.” “Good idea.” “Tell me more.”

その瞬間、一気に「やり取り」が生まれます。

技能は循環する

従来は、
文法を学ぶ → 練習する → 発表する
という流れになりがちでした。

Three Sentences. では、その順序が次のように変わります。

❶ まず、伝えたい意味の「文脈」をつくる
❷ その文脈に沿って、相手に向かって話す
❸ 相手の反応を受けて、文脈を組み替え、伝え直す

「読む・書く・話す・聞く」は、別々の技能ではありません。

一つの「循環」です。

このThree Sentences.をルーティンにされている方は、定期テストでも次のような問題を出しておられます。

* 中3の2学期の期末テストから

1) Buffet breakfast * 接触節を学習

You can eat any food you like.
You can choose Japanese food or Western food.
There is no time limit.

2) Takoyaki (octopus balls) * 過去分詞の修飾を学習

It is a small, ball-shaped pancake.
A small piece of octopus is inside.
You eat it with your favorite sauce or mayonnaise.

家庭学習・4技能への接続

Three Sentences. は、「家庭学習」にも向いています。

学習者が見通しを持って取り組めるからです。

理由は次の通りです。

短い

題材が身近

型が明確

たとえば、

  • 今日の出来事を3文で
  • 今日の給食を3文で
  • 部活を3文で

毎日3文

それが、書く筋力を高めます。

こうして、文脈を意識して書けるようになると、

やがて、話すときも止まらなくなります。

Three Sentences. は、話すことの前段階ではありません。

話すための設計図でもあるのです。

授業中の指示はどうすればよいか* 次のPDF資料を参考になさってください。

https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2026/01/授業で導入をする場合の進め方.pdf

第1回のまとめ

英語が続かないのは、

能力の問題とは限りません。

やり方を知らないだけかもしれません。

Three Sentences. は、

小さく、明確で、使いやすい地図です。

英語が
「答えを探す教科」から
「使う言語」に変わったとき、
生徒たちの「文脈」は驚くほと変容します。

▶️ 第2回の予告

第1弾では、
3文で文脈を立ち上げる設計を整理しました。

では、その3文を、
授業の中でどう回し、
どう「話す活動」へつなげればよいのか。

次回は、
Three Sentences. を”教室で動く型”にする方法を具体的に紹介します。

「書いたら終わり」ではなく、
書いたから話せる
書いたことを話したい」という子どもたちが育つ教室へ。

Three Sentences. が、音を立てて動き出す瞬間を提案します。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント