英語の授業は、いつの間にか「全部を教える」というようになりがちです。
教科書の本文、語彙、文法、ワークシート……。
気づけば、“教えること”が目的になっていないでしょうか。
しかし、生徒に本当に必要なのは、
「言える(書ける)ようにするための、意味の流れ=文脈」です。
本連載(5回)では、
特別な教材でも、特別な技術でもなく、
「3」という最小単位で、授業を
「処理する時間」から「伝える学び」へと転換する方法を提案します。
第1回:3文で「文脈」を立ち上げる(設計の原点)
第2回:3文を「話す」に接続する(教室で回る型)
第3回:文脈を可視化し、4技能と家庭学習へ広げる(定着と伸び)
第4回:3文が、PREP と OREO を“使える指導”に変える(論理が動き出す)
第5回:3文が協働を生む教室へ(実践の検証)
第1回:3文で、文脈を立ち上げる(設計の原点)
英語はそこそこ書けるのに、
話そうとすると止まってしまう。
その理由を、私たちはつい
「語彙が足りない」
「文法が定着していない」
と考えてしまいます。
しかし、別の可能性もあります。
それは、文脈(context)を考える訓練が圧倒的に少ないことです。
言葉は、場面の中でしか意味を持ちません。
場面、文脈が立ち上がらなければ、
伝え合う必然性も、話す理由も生まれません。
生徒が止まったのは、
「どう始めればいいか」を知らなかったのかもしれません。
なぜ、「3」なのか
以前の記事(2025.12.24)でも触れましたが、
私たちは無意識に「三つ」で整理しています。
三点セット、三段論法、三幕構成。
三つあると、
広がりとまとまりが同時に生まれます。
ですから、3文は、
考えを形にしやすい最小単位になります。
◆Three Sentences.は、練習ではなく「設計」
Three sentences are not practice.
They are design.
ここで言う設計とは、
「正しい英文を書く」ための設計ではありません。
“伝えたいことが立ち上がる設計”です。
Three Sentences. には、それぞれ役割があります。
• 1文目:状況(話題)を立てる
• 2文目:具体(情報・理由)を足す
• 3文目:思い・結果・意味づけを乗せる
この流れがあるだけで、
英語は「練習問題」から
「小さなメッセージ」に変わります。
◆ルールは1つだけ
ルールは、
「基本文・新出語句を使うのは、3文のうちの1文または2文まで」というものです。
there is / are
❌ 羅列型
There is a small pizza restaurant near my house.
There are many people in the restaurant.
There are many kinds of pizza there.
文法的には正しいのですが、
残念ながら、話し手の視点が見えません。
「思考」が入っていないからです。
⭕ 役割型
There is a good pizza restaurant near my house.
I like pizza, so I sometimes go there.
However, it is very popular, so we have to make a reservation.
情報が流れています。
聞き手に向かっています。
書き手は、意味の流れを設計しているのです。
こうすると、文法(there is/are)は、聞き手のための案内板となります。
◆ 文法は「置き場所」で意味が変わる
文法は「1文目に入れなければならない」「2文目専用」といった固定的な扱いをする必要はありません。同じ文法でも、文脈の中で置き場所は変わります。
ここでは There is / are の構文を例に見てみます。
A 導入として使う
- There is a very small pizza restaurant near my house.
- So I sometimes go there.
- However, it is very popular, so we have to make a reservation.
B 情報を広げるために使う
- I love pizza very much.
- There are many kinds of pizza at Osaki, my favorite pizza restaurant.
- So I sometimes go there.
C 付加情報として使う
- I love pizza very much.
- So I sometimes go to Osaki, my favorite pizza restaurant.
- There are many kinds of pizza there.
このように、文法は形ではなく、文脈のどこに使われるか、つまり「働き」で理解されます。
◆ 配慮したいこと
授業では、つい文法の「形」に目が向かいがちですが、大事なのは本来の意味、ニュアンスです。
たとえば、過去形の指導では、
動詞を「過去」にすることが大事なのではなく、
本来は、
「前はそうだったが、今はそうではない/今はわからない」
というズレや対比を伝えるための表現だということです。
そのため、
- I am busy. を過去形にしなさい
- I ( ) busy yesterday.の( )に英語を入れなさい。
といった機械的な問題では不十分です。
例えば、次のような問いかけなら、
過去形の意味を文脈で捉えさせることができます。
Look! A butterfly. It’s so beautiful,
maybe it was a ( ) last week.
( )の中に入る単語は毛虫(caterpillar)です。
このように、過去と現在の対比、ズレがあるので、
文法という「形」に意味が宿るのです。
次は、生徒が実際に書いた3文です。
- I usually go to basketball practice after school.
- But today, I had a fever, so I went to the doctor.
- I didn’t like the shot. YUCK!
「いつも」と「今日」の対比があるからこそ、意味が立ち上がっています。
教師は、日頃からどのような場面が最もイメージしやすいかを考えておくことが大事です。
Cf. 参考記事


◆ 文法より前に、「場面」を想像することから
いずれも生徒が書いたThree Sentences.です。(一部、ALTと推敲)
彼らは、最初に「場面」を頭に描くことから始めました。
① will
- Tomorrow we have a class presentation.
- I am nervous, but my teammates are practicing hard.
- I will do my best and speak loudly.
② must
- I borrowed five volumes of Jujutsu Kaisen from Yamada yesterday.
- I am looking forward to reading them.
- I must do something nice for him.
③ should
- I have a lot of homework today.
- It’s going to be a long night.
- Should I take a short break first?
④ 未来表現(be going to, will)
- My basketball shoes are old.
- So I’m going to save money because I want new ones.
- This weekend, I’ll help my father and earn some money.
⑤ 不定詞(名詞的用法、副詞的用法)
- I love English, especially when I talk with my friends in English.
- These days, I see many overseas tourists in my town, Kyoto.
- Now I’m studying English hard to talk with them.
⑥ if(条件)
- If it rains tomorrow, I will stay at home.
- I will watch videos and relax in my room.
- If it is sunny, I will go to the park with my friends.
⑦ 比較表現
- My mother wakes up earlier than anyone else in my family every day.
- She makes breakfast for my family and prepares lunch boxes for my sister and me.
- However, on Sundays, my father gets up the earliest because he has a baseball game.
⑧ 最上級(good, 2音節以上の形容詞)
- I think natto is the best for breakfast.
- I sometimes mix it with spinach or an egg, and sometimes I add shio-kombu.
- My family says that natto rolls are the most delicious.
⑨ 現在完了(経験)
- I have eaten spicy ramen once.
- It was much hotter than I thought, but it was very good.
- I want to try it again.
⑩ 現在完了(継続)
- I have played the piano for three years.
- At first, it was difficult, but now it is fun.
- I practice every day after I go home.
いずれも、共通しているのは、文法から入っていないことです。
先に「場面」があり、必要に応じて「文法」が後のせされています。
文法は、単独で教えると「知識」レベルで終わります。
しかし、Three Sentences. で考えると、自分の判断、情報や気持ちを伝える道具になるのです。
◆ 教科書との関係
教科書は大切でっす。
しかし、網羅すること自体が目的ではありません。
教科書で学んだこと(特に、基本文)を
「活用」できる力を身につけることです。
どの文法を
どの場面で
どう使えば伝わるのか。
それを「具体」で示すことが、教師の役割です。
3文は、その「足場」となります。
◆Three Sentences.は「思考・判断・表現」を促す
Three Sentences.にすると、生徒は必ず立ち止まり、考えます。
- 何を伝えたいのか(目的)
- なぜそう思うのか(理由)
- どんな場面で使うのか(場面・状況)
- その結果、どうなるのか(因果・対比)
つまり、
「目的・場面・状況」を踏まえ、
思考し、判断し、表現する。
これは、学習指導要領が求める力そのものです。
Three Sentences.は、単なる作文の型ではありません。
言語活動が生まれる“源流”なのです。
◆ 指示を変える
ポイントは、指示を変えることです。
「3文書きなさい」ではありません。
問いを、こう変えます。
「友だちに、何を知ってほしい?」
- 面白いこと?
- すごいこと?
- 困っていること?
- おすすめしたいこと?
さらに、次のどれかを必ず入れるように言います。
- like / think / want(嗜好・意見)
- because / so / however(理由・因果・対比)
これだけで、生徒の反応が変わります。
文法を使うことではなく、「内容」に目が向かうからです。
教師が見るべきものは、
文法ミスではありません。
「中身」です。
教師のコメントで望ましいのは、
“Interesting.” “Good idea.” “Tell me more.”
その瞬間、一気に「やり取り」が生まれます。
◆ 技能は循環する
従来は、
「文法を学ぶ → 練習する → 発表する」
という流れになりがちでした。
Three Sentences. では、その順序が次のように変わります。
❶ まず、伝えたい意味の「文脈」をつくる
❷ その文脈に沿って、相手に向かって話す
❸ 相手の反応を受けて、文脈を組み替え、伝え直す
「読む・書く・話す・聞く」は、別々の技能ではありません。
一つの「循環」です。
このThree Sentences.をルーティンにされている方は、定期テストでも次のような問題を出しておられます。
* 中3の2学期の期末テストから
1) Buffet breakfast * 接触節を学習
You can eat any food you like.
You can choose Japanese food or Western food.
There is no time limit.
2) Takoyaki (octopus balls) * 過去分詞の修飾を学習
It is a small, ball-shaped pancake.
A small piece of octopus is inside.
You eat it with your favorite sauce or mayonnaise.
◆ 家庭学習・4技能への接続
Three Sentences. は、「家庭学習」にも向いています。
学習者が見通しを持って取り組めるからです。
理由は次の通りです。
• 短い
• 題材が身近
• 型が明確
たとえば、
- 今日の出来事を3文で
- 今日の給食を3文で
- 部活を3文で
毎日3文。
それが、書く筋力を高めます。
こうして、文脈を意識して書けるようになると、
やがて、話すときも止まらなくなります。
Three Sentences. は、話すことの前段階ではありません。
話すための設計図でもあるのです。
【授業中の指示はどうすればよいか】* 次のPDF資料を参考になさってください。
https://nakayoh.jp/wp-content/uploads/2026/01/授業で導入をする場合の進め方.pdf
第1回のまとめ
英語が続かないのは、
能力の問題とは限りません。
やり方を知らないだけかもしれません。
Three Sentences. は、
小さく、明確で、使いやすい地図です。
英語が
「答えを探す教科」から
「使う言語」に変わったとき、
生徒たちの「文脈」は驚くほと変容します。
▶️ 第2回の予告
第1弾では、
3文で文脈を立ち上げる設計を整理しました。
では、その3文を、
授業の中でどう回し、
どう「話す活動」へつなげればよいのか。
次回は、
Three Sentences. を”教室で動く型”にする方法を具体的に紹介します。
「書いたら終わり」ではなく、
「書いたから話せる」
「書いたことを話したい」という子どもたちが育つ教室へ。
Three Sentences. が、音を立てて動き出す瞬間を提案します。
