🏫12人の学校で、何が動いたのか

七ヶ宿中学校で考えた「人数」と「本気度」

令和8年2月3日。

宮城県刈田(かった)郡七ヶ宿(しちかしゅく)町立七ヶ宿中学校を訪問しました。

生徒は12名。

この数字を、どう受け取るでしょうか。

「小規模で大変そうだ」と見るか。
「目が届く理想的な環境だ」と見るか。

しかし、実際に足を運ぶと、そのどちらでもないことに気づきます。

問われるのは、人数ではなく、そこで何を設計し、どこまで本気で向き合うかです。

蔵王の南で考えたこと

七ヶ宿町は宮城県南西部、福島県と山形県に接する町です。
蔵王連峰の南に位置し、冬は多くのスキー客が訪れます。

東北新幹線・白石蔵王駅まで迎えに来ていただいた校長先生の運転と車中の会話を楽しみながら、冬道を約40分。
山あいの地に、七ヶ宿中学校はありました。

(学校HP)
https://town.shichikashuku.miyagi.jp/chu/

3人の教室で見えたもの

午前中は1年生3名の授業を拝見しました。

その後、校長室で給食をいただきながら校長先生と懇談。

かつて教務主任として中心になり、教科ごとに

  • 学期末・単元末の到達目標を明確化
  • 定期テストを暗記型にしない設計へ転換

を進められたと伺いました。

ここが重要です。

小規模校だからこそ、ゴールを曖昧にするとすべてが緩みます。

「緻密に単元計画を立てること」と

「一人ひとりに丁寧に向き合うこと」は同義ではありません。

自律的学習者(逞しい生徒)を育てるには、

「技能」を確実に身につけさせる必要があります。

指示を細かく重ねることが丁寧なのではありません。

過度な介入は、やがて生徒が高校の大きな学習集団に

所属したとき、生徒を埋没させてしまいます。

少人数で起こりやすいこと

少人数学級では、教師が生徒を教卓近くに集めがちです。

すると、教師の声も生徒の声も小さくなります。

3人なら、
むしろ大きなトライアングルになるよう席を配置します。

ペア活動でも、机は基本的にくっつけません。

大事なのは、教室をダイナミックに広く使うことです。

声を張らなければ届かない距離。
黒板の前に頻繁に立つ構造。

それだけで、教室の緊張感は一変します。

「延長」は支援か、介入か

言い淀みや困惑が見えると、
活動時間をつい延ばしたくなります。

しかし、生徒が求めていない延長は、
思考の機会を奪うことがあります。

大切なのは、

  • 机間指導で思考を把握する
  • 適切な瞬間に前へ呼ぶ
  • 他の2人に伝える視点を言語化させる

ことです。

人数が少ないと状況が把握しやすくなります。

しかし、それが盲点となります。
教師が即応してしまうのです。

その瞬間、
教師の「待つ力」が削られます。

大きなクラスではできていた”間”が、

少人数では失われてしまうのです。

言葉になろうとしている芽が、出る前に摘まれてしまいます。

少人数は有利でもあり、同時に高度な力量を要求する環境にもなるのです。

12人が向き合ったキャリア教育

午後は全学年がランチルームに集まり、キャリア教育を行いました。

テーマは、「未来に生きる

  • A=MVP(地球市民の方程式)
  • River People と Goal People の違い
  • ポジティブな言葉を述語に使う
  • イチロー選手、大谷翔平選手の考え方
  • 本気なら何でもできる
  • 利他を心がける人がチャンスを得る

生徒の感想の一部を紹介します。

生徒の声(抜粋)

1 今日の授業の感想

  • 動画やスライドを見て感動しました。みんなこんなに頑張ってるんだから、下向いてる暇ないなと改めて感じました。 
  • 私は将来の夢があるので夢を叶えるために、今できることを考え、行動したいです。
  • 横山さんが亡くなって、木村さんが横山さんの気持ちを受け継いでるなと感じて感動しました。これから自分もしっかり頑張らないとなと思う授業でした。
  • 学生生活だけでなく、人生単位で役に立つようなことを学べて、とても良い時間になりました。特にMVPはとても大切だと改めて思いました。中嶋先生の話し方がとても聞き取りやすかったので僕もはっきり大きく話せるようになりたいと思えました。動画や音声があって分かりやすかったです。みんな知ってる有名人の言葉などもあって理解しやすかったです。
  •  今までこのような特別授業を受けたことがなかったので、良い体験になりました。
  • 今日学んだ考え方を活かし、何事にも真剣に本気で取り組んで失敗を恐れずたくさんのことにチャレンジしていきたいです。当たり前のことを馬鹿にせずちゃんとできる。ミッション、ビジョン、パッションなど今日の授業を聴いて、今の自分に足りないところを見つめ直したいと思いました。周りの人も自分のことも大切に残りの中学校生活を悔いなく、楽しく過ごしたいです。
  •  わからないことを諦めないこと小さな事でも勇気を出して聞くことを生かしたいです。
  • MVPを持って夢を追いかけていきたいです。
  • 常に頭の中でA=MVPの考えを持っていきたい。
  • 小さなことでもポジティブになることが大切だと感じました。大きなものって小さなものの積み重ねだからそう思いました。イチロー選手の言った言葉が響いたので、少しぐらい後退しても、前に進もうと思います。
  • 自分はA=MVPの中でvisionがあまりできていないと感じたので、日頃から目標や計画を持つということを意識して生活したいです。受験も近いので、勉強に関する計画も毎日少しは立てて、生活習慣も見直すことで、ダラダラしてばかりでなく、有意義な時間を過ごせるように努めたいと思いました。高校に入ってからや、社会で出てからも、”MVP”を心に留めておきたいです。
  • 「私は変わろうとしていないな、なりたい像があるのに変わろうとしてないな」と思いました。まずは苦手なことからです。苦手なことから逃げて変わっていないと思いました。なので、今回教わった「ポジティブな言葉を述語に持ってくる」を実践して、私を変えようと思いました。だからか分かりませんが、帰ってすぐに勉強できました。

印象的だったのは、
抽象的な感動ではなく、行動につながる言葉が多かったことです。

教師研修:若手が多い学校で

放課後は校内研修。
若手の先生が多い学校でした。

伝えたのは二点です。

  • 何のため」にやるのか
  • 最後の仕上がったイメージはできているか
  • いつまでに」「どのように」到達するのか

「目的」が曖昧なまま方法論に入ってしまうと、
授業は「積み木型」になります。

ゴールから逆算すれば、
「ジグソーパズル型」に変わります。

先生方の声(抜粋)

  ◆ 生徒のキャリア教育について

  • 『A=MVP』『River PeopleとGoal People』『利己と利他』などなど、ためになる話、パワーワードをたくさんいただきました。 受け止め方は人それぞれかと思いますが、生徒・教職員の生き方に好影響を与えたものと思っています。 個人的に印象に残ったのは、冒頭で紹介された根岸英一氏の「自分のスタンダードを下げてはならない」と、中嶋先生が生徒に発した「声を大きく出すと元気な人になります。」の2つです。自分自身に課していきたいなと思っています。 
  • 「地球市民の方程式」,「リバーピープル,ゴールピープル」,「ポジティブを述語に」など物事に対して前向きに取り組むためのさまざまな考え方を話していただき,生徒にも印象に残ったのではないかと思います。
  • それぞれの生徒の心に刺さる部分が散りばめられていました。キャリア教育であり道徳の授業としても素晴らしいものでした。今日一人の生徒が、「お話を聞いてから話すときに語尾をプラス思考に」することを意識していると言っていました。
  • キャリア教育について普段の先生方以外からの授業を受けることができたのはとても良い刺激になったと思います。内容も生徒は感動している人もいたので良かったのだと思います。
  •  「A=MVP」に共感できた。また、そのために、ゴールを意識して取り組めるような工夫をしていきたいと思った。
  • 生徒のこれからの人生に大きな指針となるお話をいただいた。映像で見せていただいた方々の言葉には力があり、生徒の心の奥底に響くものだった。
  • 生徒の真剣な眼差しがすべてを物語っていたと思います。集中が続かない生徒もいる中で、全員が50分間の授業を短く感じたのではないでしょうか。そこに至ったのは、授業の目的、ゴールをしっかりと定め、様々な工夫を凝らした手段を使って、何よりpassionをもって授業をされていたからだと思いました。
  • 生き方の指導をとても分かりやすい形で示してくれた。生徒達もこの授業を通して前向きに生きるきっかけとなったと思う。                    ◆ 校内研修について
  • 特に印象に残ったのは「studyとlearn」です。英語で対比することで、教師が児童生徒に求める学びはどういうことかをはっきり意識することができました。 この表現、勝手ではありますが今後使わせていただきたいなと考えております。実り多い研修を提供してくださり、誠にありがとうございました。
  • 講演を聞いて,主体性,自主性の違いについて改めて整理することが出来ました。指導案の生徒の実態を3観点で示すという話は,聞いたことがなかったので興味深かったです。学習指導要領に付箋を貼って確かめる作業をやってみようと思います。指導案を黄,青,赤で色分けして,行う順番やバランスを意識するという話が勉強になりました。自分の授業を振り返る一つの視点にしたいです。また,生徒に活動させる際,2分30秒から3分で考えるという話が印象的でした。50分の授業を細かく分けて考えると様々な活動の集合体であると思われますが,その1つ1つの活動・話題が3分以内に収まるかどうかという視点で授業構成を見直してみたいです。
  • 改めて自分自身の足りない部分について考えることができました。自分の考え方と少し違うところもありましたが、先生のお話には圧倒的に説得力があり、感服いたしました。
  • 普段は意識せずに授業している部分も改めて考える機会になりました。また、授業だけではなく、普段の考え方や物事の捉え方も部分も含めてそういう考えもあると勉強になりました。
  • 今までの自分を反省するところが多く改めて、授業の構成の仕方を考える機会になった。
  • 授業の作り方について、今まで積み木型でおこなってきたため、ジグソーパズル型を意識して変えられるところから変えていきたいと思った。また、伝え方によって、生徒への伝わり方が全く違うことも改めて分かったので、気を付けていきたいと思う。
  • 何のためにやるのかという目的があって、手段が考えられる。この流れを意識して教育活動にあたることが、とても大切だということを改めてかんがえるようになりました。そして、力を付けるためには、studyで終わらずlearnまでできるようにする。そのためにも目的を考え、その手段を考え、実践していく。一人でできるように技能を高める。そして教師側の一方的な教え込みではなく、子どもの立場になって指導をする。そのために教師の感性が求められているように感じました。子どもたちの表情、つぶやきを見取ることが必要です。その上で、指導を臨機応変に変えていく。先生のお話は、すべて腹の底に響きました。このままではいけないと強く思い至りました。少しずつでも実行していきます。ありがとうございました。
  • 授業を終えた生徒の変容について改めて考えるよい機会になりました。また、「目的さえ見つかれば手段は後からついてくる」という言葉は、学校教育の様々な場面で大切にしたい言葉だと思いました。
  • 何のためにやるのか、最後のゴールから逆算して手順を踏んでいくことの大切さを理解できた。この世の中すべての人々がそれぞれ自分の価値を大切にできるように心を育てていくことの大切さを学びました。

心が動かなければ、「設計」は変わりません。

多くの先生方の決心に胸を打たれました。

数日後のオンライン研修で

後日、オンラインで授業助言を行いました。
授業をされた先生は大量のメモを取り、
悩みを率直に語ってくださいました。

研究主任の先生もオンライン自主的に参加されていました。

発信する教師

アクションを起こす教師

彼らの存在が、学校を前に進めます。

大事なのは「人数」ではない

キャリア教育の授業を受けた生徒は12人(当日、欠席した者を除く)。

しかし、集中力は都市部の大規模校と変わりませんでした。

最後まで頷き、メモを取り、真剣に耳を傾けてくれました。

人数が空間の濃度を決めるのではありません。

本気度こそが、濃度を決める。

今週は、東京都中野区の中英研大会
来週は、富山県魚津市立東部中学校

場所は違っても、問うことは同じです。

何のために
どこまで本気で

教育は、人数では決まりません。

私たちの覚悟で決まります。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント