🍀「活用」が授業を変える (4/5)

第4回(実践編):系統的な「帯学習」が「単元計画」の中に入っていますか

第3回で見た「止まる現象」は偶然ではありません。

それは、「技能」が制度化されていない構造の結果です。

ここでは、その制度化を具体で見ていきます。

授業冒頭の5分〜10分の帯学習。

・ビンゴ

・単語テスト

・英語の歌(「宿題をチェックしながら」というケースも)

・単発のゲーム

・教科書の音読など

いわゆる「帯学習」と呼ばれる時間は、

こうした英語を使った活動に充てられることが

少なくありません。

どれも、有効に見える活動です。

しかし、それらは果たして

系統的かつ計画的に運用されているでしょうか。

どの技能を

どの順番で

どの到達点に向けて

設計されているでしょうか。

さらに言えば、教師自身が

生徒に「どんな力」をつけるための

活動かを説明しているでしょうか。

もしかして、ただの「ウォーム・アップ」

いや、「教師が決めたルーティン」に

なっていませんか。

「discussionができる生徒」は、どこで育つのか

福岡市の松田由紀子先生は、地球市民オンライン塾での1年間の学びを経て、

何度も授業を公開されました。

(詳細については、過去の記事でご紹介した稲美町の先生方、そして神戸市

の先生方の視察報告をご参照ください)

ここで、特筆したいのは、

帯学習が単発の活動としてではなく、

系統的なプログラムとして組み込まれている点です。

それは、最初に、単元最後の授業をイメージしていたからでした。

以前、次のような記事でそれを取り上げました。

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今回は、単元構想系統的な「帯学習」の組み入れ方について取り上げたいと思います。

前回、生でその授業をご覧になった神戸市の先生方が驚かれたシーンを福岡市の先生方はどう捉えられたのでしょうか。

松田先生は、

その単元を

• 導入とKey Sentenceの練習

• 本時のめあてに関わる活動

• 文法説明・Writing活動・ふりかえり

に分け、研修会に参加された福岡市の先生方

に分析を依頼されました。

今回、授業ビデオを参観された福岡市の先生方のどなたも驚かれたのが、

「本時のめあてに関わる活動」におけるdiscussionの場面でした。

生徒が、

板書されたマッピングを参考にしながら

途切れることなく、

即興で自分の意見を言い続けていたからです。

クラスを半分に分け、松田先生とNS(ALT)のティファニー先生がマッピングで生徒の意見を取り入れながら、即興で質問をしていきます。生徒はそれに答えるだけでなく、マッピングを見て関連する質問もします。

研修会で投げかけられた質問の多くは、

次の一点に集中しました。

どうすれば、あのように即興でやり取りが繋がるようになるのですか。

答えは、「本時」にあらず

松田先生は、その理由を次のように整理されました。

単元全体が一つのストーリーになるよう、構成に時間をかけた

Goalの活動を可能にするために、帯活動を段階的・計画的に位置づけた

活動と活動の“のりしろ”として、Teacher’s Talkを精密に設計した

文法を教えるのではなく、コミュニケーションを通して習得させる方針を貫いた

NS(ALT)との授業前後の対話を通して、毎時間の修正を重ねた

ここで注目すべきは、

discussionの成否が、本時の工夫ではなく、

それまでの帯活動の積み重ねに支えられていた

という点です。

まず、研修会に参加された先生方の衝撃がわかる感想をご紹介します。

松田先生が単元構想育った姿から逆算し、Focus on formで「意味」から入る指導)に本気で取り組み、「帯学習」で系統的に「聞く・話す」技能を高めるプログラムを考えられたこと、それをNS(ALT)と共有し、生徒の指導にあたられたことが参観者に伝わっていることがわかります。

では、彼女の単元計画帯学習のプログラム)、学習指導案を見てみましょう。

参観者の方々を驚かせた単元計画(コミュニケーション先づけ、文法後のせ)、そして思いつきではない、系統的・計画的な帯学習の具体が見られます。

帯学習は、「ドリル」ではなく「設計」

今回の単元構成において、「帯活動」の欄を明示的に設けたことが、discussion ができる生徒の育成に繋がったと、松田先生は振り返っておられます。

多くの場合、帯学習はドリル的活動として捉えられています。

しかし、Goal(育った生徒の姿)から逆算して設計された瞬間、それは「意味」を持ち始めます。

帯活動が、

語彙想起の速度を高める

文の組み立てを自動化する

意見を述べる際の言語選択を可能にする

といった、単元で用いる技能の習得を支える足場として機能し始めるからです。

帯学習は、「応用(How)」の練習で終わるのではありません。

「活用(What)」の判断を支える準備の時間なのです。

42年目にして得た「手応え」

松田先生は、次のように語っておられます。

中嶋先生のもとで1年間学び、私が最も強く感じたのは、「設計図」の力でした。                    感覚や経験ではなく、単元全体を見通した構造があるかどうか。
どこへ向かい、何を積み上げ、いつ手を離すのか。
その設計が、授業の質を決めるのだと実感しました。                                 象徴的だったのが「チャンク読み」です。
英文が消える前に読み切ろうとする生徒たちは必死でした。
しかし、それは強制ではなく、「読みたい」という内側からの動きでした。                         そのとき、私は気づきました。
意欲は、励ましから生まれるのではなく、設計から生まれるのだと。                                   さらに、中嶋先生が15年前に言われた「英語というフィルターを通すと、普段言えないことも言えるようになる」という言葉を、あらためて体験しました。活用の場面だからこそ、生徒の心が自然に表れたのです。42年間の教師生活の中で、これほどの手応えを感じたのは初めてでした。                                        熱意ではなく、設計。応用ではなく、活用。                                               設計図を持つことは、授業だけでなく、教師人生そのものを変える力がある。                        それがわかりました。

帯学習の位置づけを変えることは、

授業の一部を変えることではありません。

単元の設計を変え、

TTの意味を変え、

生徒の学び方そのものを変えることに繋がります。

教科書を終えることが「目的」になっている授業

思いつきの活動が多く、「バラ売り」の授業

教師がデジタル教科書の「進行役」になっている授業

果たして、その先に「育てたい生徒像」は見えているでしょうか。

第4回のまとめ

松田先生が取り組まれてきたのは、教科書を教える授業ではありません。

TT(Team Teaching)を、

本当にワクワクする学びの時間へと変えていくこと。

そのために、単元構成を見直し、

NS(ALT)との対話を重ね

帯学習の意味を問い直し続けてこられました。

40年を超える教員生活の中で、

それでもなお、初心を忘れず、

納得のいく授業とは何か」を

問い続けてこられたのです。

その実践は、今、教え子さんたちに受け継がれています。

実際に、良いモデル、良い授業を目に焼き付けること

教師の今後の成長につながっています。

discussionが自然に生まれる教室。

やり取りが続く授業。

それは、

一時間の中で突然生まれたものではありません。

単元の中で設計され、

帯学習の中で支えられ、

そして理念として受け継がれたからです。

帯学習はウォーム・アップ活動の時間と考えるか、

それとも

技能形成プログラムと考えるか。

それが授業づくりの分岐点となります。

▶️ 第5回の予告

次回は、その設計が学校文化にどう波及するのかを扱います。一人の努力だけでは何も変えられません。組織として、何を目指すかです。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント