🍀きちんと教えているはずなのに、なぜ英語が身につかないのか ー “頭に残る英語”を生む授業への転換 (1/2)

第1回 英語は、「動詞の後ろ」で世界が動いている ― 「文型」を教える前に、育てたい感覚

単語は知っている。意味も分かる。ところが、並べると崩れる

英語の授業を見ていると、よく次のような場面に出会います。

単語は知っている。
意味も分かる。
音読もできる。

ところが、英文にすると崩れる。

たとえば、

❌ I watching baseball game on TV.

のように、be動詞が抜け落ちる。

あるいは、

❌ I go park.
❌ I like to school.

のように、「何か変だ」という感覚が育っていない。

これは、

多くの場合、
英語が、どのような順番で意味を作っていく言語なのか」ということを
感覚として掴めていないからです。

音読をして、
練習をしても、

それが、「慣れさせる学習」で止まっているのです。

英語は、「動詞の後ろ」で世界が動いている

では、何が抜け落ちているのでしょうか。

それは、「動詞が、後ろに何を求めているのか
という感覚です。

次の動詞を見てください。

like、play、watch、study、want

これらの動詞を見ると、英語は、その瞬間に、

「何を?」

という方向へ動き始めます。

つまり、動詞が、“次に必要なもの”を決めているのです。

一方で、

go、come、live、stay

などは、

「どこへ?」
「どこで?」
「どんな状態で?」

という方向へ思考が流れます。

つまり、英語は、
「動詞」によって、
後ろに来る情報の“景色”が変わる言語なのです。

ここを飛ばして、

「これは第3文型です」
「SVOです」

という“ラベル”だけを教えていると、
子どもたちは、
英語を「記号」として処理し始めます。

「文型」を教える前に、「動詞の性格」を掴ませる

残念ながら、日本の授業では、
「不定詞の3つの用法」
「現在完了の完了・継続・経験」

というように、
“分類”に焦点を当てた学習が少なくありません。

もちろん、分類そのものが悪いわけではありません。

しかし、子どもたちに本当に必要なのは、
記号を覚えることではなく、

英語が、どのようにつながって意味を作るのか

を掴むことです。

そのために、鍛えなければならないことが2つあります。

一つは、
文の心臓である「動詞」の働きを焦点化することです。

つまり、「この動詞は、後ろに何を呼び込もうとしているのか」という感覚を育てることです。

これが育つと、英語の語順が、急に“自然な流れ”として見え始めます。

もう一つが、

名詞チャンク・動詞チャンク・副詞チャンク

という、意味のまとまりを瞬時に理解する力です。

これについては、第二回で説明します。

階層式マッピングで、「動詞の求める世界」を見える化する

階層式マッピングが力を発揮するのは、
この動詞の働きを特化する活動です。

たとえば、黒板に次のように、動詞だけを書きます。

like → ?
play → ?
go → ?

そして、

「この後に、どんな言葉が来そう?」

と問いかけるのです。

すると、子どもたちは、
ペアでどんどん広げ始めます。

like
→ soccer
→ dogs
→ music
→ math

play
→ tennis
→ video games
→ the piano

go
→ to school
→ home
→ to Tokyo
→ there

この活動の面白さは、子どもたちが、

「文型」を学んでいる感覚なしに、

“言葉のつながり方”

を掴み始めることです。

「目的語マッピング」と「方向マッピング」を分ける

ここで、
動詞ごとの“求める景色”を分けていくと、
語順理解が一気に安定します。

◉ 他動詞グループ

like、play、watch、eat、take、catch

これらは、
後ろに「対象」を求めます。

つまり、

「何を?」

の世界です。

play
├ soccer
├ tennis
├ the piano
├ video games

watch
├ TV
├ YouTube
├ baseball
├ the sunset

このように、
“後ろに来るもの”
を階層式に広げることで、

「play や watch は、何かを必要とする動詞」

という感覚が、身体化されていきます。

◉ 自動詞グループ

一方で、

go、live、come、stay

などは、
「方向・場所・状態」へ思考が流れます。

go
├ to school
├ to the park
├ abroad
├ home

live
├ in Tokyo
├ near the station
├ with my grandmother

すると、子どもたちは、

「後ろに場所っぽいものが来る」

という“語感”を、
自然に掴み始めます。

「間違い探し」を使うと、理解が深くなる

動詞の後に何が来るかを指導する段階で、
あえて「間違い」を見せると、
子どもたちの思考が動き始めます。

❌ I go park.
❌ I like to school.

すると、

「何か変だな」

という感覚が生まれます。

ここで教師が、

go は、「〜へ」という方向のまとまりを欲しがる。
like は、「好きなもの」「好きなこと」を求める。

というように、
帰納的な学習へ戻していくのです。

(まとめて気づかせるのは、フォニックスの指導と同じです)

つまり、
文法用語で押さえ込むのではなく、

動詞の性格

として理解させるのです。

ここが、
従来型の「説明型(教え込み)授業」と、
思考型(気づき中心の)授業」の大きな違いです。

SVC の感覚を、「=」で身体化する

もう一つ重要なのが、
SVC の感覚です。

実は、SVC は、
小中学生にとって、
最も感覚化しやすい文型なのです。

なぜなら、SVC は、

前と後ろが、同じものを指している

という関係だからです。

つまり、
be動詞や、

look、sound、seem、become、taste、feel

などを見つけたら、
その動詞の下に「=」を書いてしまうのです。

I am tired.
 (=)

The sky is blue.
          (=)

The soup tastes good.
      (=)

He looks happy.
  (=)

こうすると、
子どもたちは、

「後ろは、主語の状態を説明している」

という感覚を、
視覚的に掴み始めます。

このような指導は、
文型説明やワークシート中心の練習よりも、
はるかに長く脳に残ります。

進行形や受動態も、「状態」として見えてくる

さらに面白いのは、
この「=」感覚を使うと、
進行形や受動態まで、
状態”として理解できるようになることです。

進行形も受動態も、
正しくは SVC です。

I am / watching baseball game / on TV.
 (= watching 〜 の状態)

The door is / closed.
    (= closed の状態)

つまり、
be動詞の後ろには、

「そのとき、どんな状態なのか」

が来ていることが見えてくるのです。

ここを、
いきなり、「現在進行形」「受動態」

という名称や形から入ると、
子どもたちは、
再び“記号処理”に戻ってしまいます。

やがて、

「ーing をつければ進行形」

だと思い込み、
be動詞が抜け落ちます。

つまり、

英語は、まず動詞

という土台が消えてしまうのです。

しかし、

「=の関係」
「状態を表している」

という感覚から入ると、
英語が、
“意味の流れ”として見え始めます。

実際の授業では、どのように行うのか

全国では、
動詞をフィーチャーして、

語順を意識させる実践が成果を上げています。

小5
この小学校では、ピクチャーカードを使って、
SVO の語順のマッピングを考えさせています。

ピクチャーカードを使って、SVOの語順のマッピングを考えます。

水性マーカーで「つながり」を考えて書き込みます。

動詞の後に、どのようなもの(目的語)が来るかを考えます。

小6
この小学校では、自分の話したい内容を、
階層式マッピングで整理し、
使う動詞を考えながら、
そのシートだけを見て、
相手と即興でやり取りをしています。

自分の話したい内容をマッピングで整理し、使う動詞を考え、そのシートだけを見ながら、相手と即興でやり取りをします。

どんな動詞を使えば、文になるのかを考え、ノードの横に、その動詞を書き込みます。

これができるようになると、
子どもたちは、原稿を暗記するのではなく、
安心して相手の顔を見ながらやり取りできるようになります。

いずれのケースも、
「教科書を進めること」
にあくせくするのではなく、

「英語が、どのように意味を広げていくか」

を体感的に掴ませています。

このような指導をしている小学校では、

子どもたちが、満面の笑顔で英語のやり取りを

しています。

教科書を網羅しようとする授業と異なり、

指導者は、

英語の特質を感覚として身につけることを

心がけており、

子どもたちはシンプルに

「次は何か」を考えながら、情報を付け足しているからです。

最後は、必ず「やり取り」に戻す

ただ、マッピングで終わりではありません。

最終的には、
必ず Q&A へ戻します。

“What do you like to watch?”
“I like to watch baseball.”

“Where do you usually go on weekends?”
“I often go to the park.”

ここで初めて、
動詞が、生きたコミュニケーションの中で動き始めます。

つまり、

動詞(文の心臓)
   ↓
つながる語
   ↓
語のネットワーク
   ↓
1つの文
   ↓
やり取り(Q&A)

という流れを作るのです。

この順番で積み上げると、

SVO、SV、SVC は、
「覚える記号」ではなく、

“自然とそうなる形”

として、
子どもたちの中にスルスル入っていきます。

では、
学習者は、
この語順を、
実際にどのように“前から理解”していけばいいのでしょうか。

実は、
英語が苦手になる大きな原因の一つは、

「単語を1つずつ日本語へ置き換えながら読もうとしていること」です。

しかし、英語は、何度も言うように、

後ろに情報が加わりながら、意味が育っていく言語」です。

そのためには、
チャンク(意味のまとまり)」ごとに、
前から理解する力を育てなければなりません。

次回は、

☘️ 英語は、「後ろに情報が加わる言語」である
チャンクで「前から理解する力」を育てる

というテーマで、

  • なぜ音読だけでは力が伸びにくいのか
  • 「チャンク」で見ると語順理解が安定する理由
  • 3秒音読・3秒意訳の意味
  • リスニングや長文読解が高速化する仕組み
  • 「使われる景色」として英語を覚える方法

について、具体的な実践例を交えながら考えていきます。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント