第4回: 「いい発表でした」で終わっていませんか
1. 発表のあと、まだ残っているもの
教室の中で、発表が終わった直後のあの空気を、思い出してみてください。
一人が話し終え、教師が
「いいですね」「分かりやすかったです」
と返す。
そのやり取りは整っていて、どこにも問題がないように見えます。
発表した生徒もほっとした表情になり、授業は次へ進んでいきます。
とはいえ、その瞬間に、教室の中で何かが閉じていることがあります。
それは、彼らの「考え」です。
聞いていた子どもたちの中には、すでに小さな動きが生まれています。
「そこ、ちょっと自分とは違うかもしれない」
「自分ならこう考えるけど」
「そこをもう少し聞きたいな」
言葉になりきる一歩手前で、思考が立ち上がりかけています。
にもかかわらず、「いいですね」で区切られた瞬間、
その続きを出す場は失われてしまいます。
「あれで終わりなのかな?」と、子どもが受け取るからです。
教師の一言は、評価であると同時に、合図になります。
特に、日頃から、教師がまとめよう、次に進もうとするとき
にこのような言葉を発していると、子どもは「終わり」と
受け止めます。
2. 思考は、外に出たときに「考え」になる
実際に教室をよく見ていると、思考が止まる瞬間には、必ず前触れがあります。
うなずいていた視線がふっと下がる。
言いかけた口が閉じる。
ノートに目が落ちる。
表には出ませんが、概ね、思考はそこで途切れています。
以前、向山洋一先生と話をしたとき、
こんな問いを投げかけられました。
「子どもが意見を持った瞬間を、どう見つけていますか」
その場にいた方々が自分の経験から意見を言われました。
しかし、向山先生の答えは全く違っていました。
「小指がピクッと動く」「周りをチラッと見る」
そこに意見が生まれている、と。
先生は、子どもたちのわずかな動きを見逃していませんでした。
手を挙げた子どもを当てることではなく、
まだ表に出ていない思考を見つけること。
そこに、教師の仕事があります。
ここで押さえておきたいのは、
頭の中でめぐっているだけのものは、
まだ「思考」の段階にあるということです。
それが言葉として外に出たとき、
初めて「考え」になります。
ですから、思考を確かめるためには、
話すこと、書くことが不可欠になります。
外に出されなかった思考は、
存在していないのと同じになってしまうからです。
3. 終わらせるか、つなげるか
では、何を変えればよいのでしょうか。
難しいことではありません。
終わらせるのではなく、つなぐだけです。
「今の意見で、一番大事なところはどこ?」
「他の人の考えと、どこが違う?」
「もし条件が変わったら、どうなる?」
発言をきれいにまとめて閉じようとするのではなく、
次の思考へと橋をかける。
その関わり方に変わった瞬間、教室の流れが変わります。
小さなことには神様が宿る(God is in the details) ー Ludwig Mies van der Rohe(ミース・ファン・デル・ローエ)
発表後の数秒、教師のたった一言。
それが、学習を活性化させるかどうかの分岐点になります。
子どもに必要なのは、評価されることだけではありません。
自分の考えが他者とつながり、揺さぶられ、続いていく経験です。
発言を閉じる言葉を置くのか。
それとも、次へつなぐ言葉を置くのか。
その違いで、教室は変わります。
次の授業で、発表のあとに、こう問いかけてみてください。
「それで終わりでいい?」
その一言が、止まりかけていた思考を、もう一度動かすきっかけになります。
次回(第5回)予告
最終回は、「わかる人?」「できた人?」という問いで、
教室に何が残り、何が消えていくのかを見ていきます。
