🍀流れを読むとは(1/5)

第1回 鵜を動かしているように見えて、鵜匠が見ていたのは“川”だった

私が見ていたもの

5月16日、大学時代の同僚と名古屋で落ち合い、

岐阜へ向かいました。

目的は、長良川の鵜飼です。

前回訪れたのは30年ほど前でした。

久しぶりに乗った観覧船は新しくなっていました。しかし、本当に変わっていたのは、船ではなかったのかもしれません。

若い頃の私は、ただ圧倒されていました。

闇の中を進む舟。

揺れるかがり火。

水面を切る鵜。

幻想的な風景に目を奪われ、

「すごい」と思いながら見だ記憶があります。

ところが今回は、なぜか視線が違う場所へ

向かっていました。

鵜ではありません。

鵜匠です。

なぜ今、縄を緩めたのだろう。

なぜ今、舟の向きを変えたのだろう。

なぜ今、その声を出したのだろう。

気がつくと、鵜よりも鵜匠の動きを

追っている自分がいました。

同じ長良川

同じ鵜飼ー

それなのに、見え方が違うのです。

年齢を重ねたからなのか、仕事柄なのかは

分かりません。

ただ、以前は見えていなかったものが、

少しだけ見えるようになっていました。

鵜匠が見ていたもの

鵜匠は鵜を見ているように見えました。

しかし、見ているうちに、

もしかして、違うのではないか

と思えてきました。

本当に見ているのは、鵜ではなく、

川なのではないか。

川の流れ

風の向き

波の変化

水面のわずかな揺らぎ

鵜の羽の動き

目の様子

その日の鵜の機嫌。

鵜匠は、決して力で鵜を動かしている

ようには見えませんでした。

むしろ、自分が流れに合わせているように

見えました。

ある鵜匠は、

「最も大事なのは、鵜の野生性を失わせないこと」

と語っていました。

その言葉を聞いたとき、妙に納得しました。

育てるのでもない。

支配するのでもない。

思い通りに動かすのでもない。

相手をよく見ながら、共に生きる。

そんな関係に気づくことができました。

その奥で動いているもの

そのとき、ふと思いました。

観光客は鵜を見ており、

鵜匠は川を見ています。

ただ、鵜匠が見ているのは、

今この瞬間ではないのかもしれません。

流れが変わろうとする瞬間

風向きが変わろうとする瞬間

鵜が潜ろうとする瞬間

そして、まだ起きていない変化の兆し。

その小さな気配を読みながら、

舟を進めているように見えました。

昔の私は、見えるものばかりを見ていました。

本当に大切なものは、

いつも少し見えにくい場所に

あるのかもしれません。

暗闇だからこそ、人は目を凝らします。

耳を澄ませます。

そして、気配を感じ取ろうとします。

長良川の夜、かがり火が照らしていたのは、

鵜ではありませんでした。

人の「見る力」だったのかもしれません。

私たちは、活動を見ています。

発表を見ています。

テストの結果を見ています。

しかし、本当に見なければならないのは、

その奥で起きている思考の動きや、

まだ言葉になっていない変化の兆し

なのかもしれません。

今、見えているもの、目先のものに

私たちは惑わされていないか。

長良川の夜は、そんな問いを私に

投げかけていました。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント