🍀「授業の構造」を変えれば、英語力は伸びる(1/2)

英語力が伸びない本当の原因は、教師の「勘違い」にある

なぜ、子どもたちはなかなか英語が話せるようにならないのでしょうか。

全国で授業を拝見していると、その理由が見えてくる場面があります。

今の授業には、以前にはなかった活動が数多く取り入れられています。

デジタル教科書で音読をし、ワークシートを使ってペアで話し合い、

インターネットで情報を集める。

教室の様子は大きく様変わりしました。

私が教師になった昭和50年代、そして全国の学校が荒れた60年代は、

謄写版(鉄筆)でプリントを印刷し、OHPを使って授業をしていました。

時代は変わったのですが、一方で、

「ALTの言っていることが聞き取れない」

「教科書をスラスラ読めない」「まとまった内容を書けない」

という悩みは、当時とあまり変わっていないようです。

教師は、どんなときも、活動さえ増やせば英語力も伸びると

信じて授業をしています。

でも、果たして、本当にそうなのでしょうか。

実は、問題は、活動の量ではなく、

英語を処理する経験(頻度数)」が圧倒的に足りないことです。

教師は、「もっと活動を増や差なければ」と考えて、

プリント(ワークシート)の枚数を増やしています。

しかし、変えなければならないのは、そこではありません。

増やすべきなのは、英語を聞いたり読んだりしながら、

その情報を自分なりに解釈し、判断し、表現する経験です。

考えるとは、教師の発問に対する「答え」を探すことではありません。

相手の話や新しい情報を受け止め、自分ならどう考えるかを問い直し、

自分なりの考えを形にしていくことです。

「聞いている」のに、聞けるようにならない理由

例えば、リスニングの指導ですが、リスニングだけで終わっていないでしょうか。

多くは、「音声を聞く」「答えを選ぶ」「答え合わせをする」

という流れで終わっているようです。

同じ音源を2回聞かせる場合でも、聞き取るポイントを示さないまま、

そのままもう一度流して終わる場面をよく目にします。

もちろん、聞き取れたかどうかを確認することは必要です。

しかし、それだけでは、英語を聞いた瞬間に意味を捉え、

次の行動へ移る力は育ちません。

聞き取れない原因は、「音」が聞こえないからだけではありません。

聞いた英語を、その場で理解し、判断し、行動につなげる経験が足りないからです。

それでは、「直聴直解・直読直解」の思考回路は身に付きません。

例えば、”Stand up.” と言われた瞬間に立つ。

“Open your textbook to page 42.” と言われたら、そのページを探して開く。

“Circle the correct answer.” と言われたら、問題を見て判断する。

このように、英語を理解し、そのまま行動へ移す経験を毎時間積み重ねることが、

「直聴直解」の土台になります。

最初の段階では、”What did I say?” “Please check with your partner.”

と投げかけ、互いに確認させることも欠かせません。

聞いた内容を思い出し、友達と確かめ合うことで、

理解はさらに確かなものになります。

ところが、実際の授業では、その機会を教師自身が奪って

しまっていることがあります。

TTの授業で、ALTが英語で説明した後、

日本人教師が日本語で説明し直す場面です。

教師は親切のつもりです。

しかし、その瞬間、苦手な子どもほど英語を聞かなくなります。

「あとで日本語で説明してくれる」と分かっているからです。

力のある先生の指導は違います。

ALTには、既習の基本文や語彙を使って説明するよう事前に伝えています。

そして、生徒の表情が曇った瞬間には、より簡単な表現で言い換えたり、

具体例を示したりするよう、間髪を入れずに依頼します。

こうすると、子どもたちは最後まで英語で理解しようとするようになります。

その積み重ねが、「英語の語順のまま理解する力」を育てていくのです。

活動しているのに、力が付かない理由

本来、音読も読解も表現活動も、「直読(聴)直解

を土台にして行われるべきものです。

ところが実際には、教師の説明が長くなり、活動の時間がなくなります。

プリントを配ることで、自分で判断する場面が減ります。

本文を日本語に訳してしまうため、英語のまま理解する経験がなくなります。

活動そのものが目的となり、判断したり、再構成したりすることがなくなるのです。

教師は、一つ一つの活動を丁寧に行っているつもりです。

しかし、その活動の中で、子どもたちが「何を処理しているのか」が

見えなくなってしまうのです。

教師は「説明者」ではなく、「設計者」

授業では、教師もALTも、次のように一気に説明してしまいがちです。

“Look at this. This is a picture of … Today, we are going to learn …”

これでは、生徒は説明を聞くだけの傍観者になります。

英語を理解するのではなく、説明を待つことが習慣になってしまいます。

そこで見直したいのが、Classroom English の使い方です。

単なる動作指示ではなく、生徒が英語を聞いて「どうするか」を

判断する場面を意図的につくります。

例えば、”If you finish early, what will you do?” とか

“When your partner is speaking, what should you do?

のように、その場で考え、判断し、答えたり行動したりできる

指示や発問を日常的に取り入れていきます。

さらに、教師は “For instance?” “Such as?” と具体例を求めたり、

Please check with your partner.” と互いに確かめるよう促したりします。

こうした一言が加わることで、子どもたちは一人で考えて終わるのではなく、

友達とのやり取りを通して考えを広げたり、修正したりするようになります。

TTがうまく機能しない本当の理由

この考え方は、TTでも同じです。

TTというと、日本人教師が説明し、

ALTが英語を担当するという役割分担を思い浮かべるかもしれません。

しかし、本来のTTは、説明を分担することではありません。

二人いるからこそ、一人は教室全体を見取りながら学習の流れを支え、

もう一人は子どもの発言を受け止め、

問い返したり、言い換えたりしながら思考を深めていきます。

それぞれが異なる役割を担うことで、

生徒は英語を聞き、考え、判断し、対話する時間を

より多く経験できるようになります。

授業で大切なのは、「何を活動させるか」ではありません。

子どもたちに、どのような英語の処理を経験させるか。

そこから授業を考え直したとき、教室で交わされる英語は、大きく変わり始めます。

教師が、「英語を処理する経験をどう設計すればいいか」という意識に変わったとき、

初めて授業の構造が変わります。

次回は、処理した情報をどのように整理し、再構築し、

考えを形成すれば(どう自分の言葉につなげていけば)よいか、

その授業構造について考えていきます。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント