ビートルズの録音から、授業づくりを考える
◆ 完成した曲の向こう側
ビートルズの曲を聴いていると、最初からあの音が鳴っていたように感じます。歌い出しも、楽器の重なりも、ほかには考えられないほど自然です。
ですが、録音の過程に目を向けると、少し違う景色が見えてきます。
何度も演奏し、録り直し、音を加える。前のテイクを聴いたうえで、「こちらの方がいい」「まだ何かできる」と探り続けていることがわかります。
公式サイトを見ると、『サージェント・ペパーズ』の制作には、400時間を超えるスタジオでの作業が費やされているようです。
もちろん、時間をかければ名曲になるわけではありません。注目したいのは、すでに形になったものを、「完成したもの」とは考えなかったことです。
◆ 誰かの発想を、次の音につなぐ
ジョン、ポール、ジョージ、リンゴが持ち込む音楽に、プロデューサーのジョージ・マーティン、録音技師たちの知識と工夫が加わりました。
メンバーが「こんな音にしたい」と求め、スタジオの仲間がその実現方法を考える。試した結果を聴いて、また次を考える。
『リボルバー』の頃には、録音そのものを楽しみながら実験するようになったことが、メンバーの言葉からも伝わってきます。
そこには、誰か一人が完成形を知っていて、ほかの人がそれに従う関係とは違うものがあります。
一人の着想が、別の人の手で思いがけない形になり、その音がまた新しい発想を呼ぶ。名曲は、そのやり取り(往復)の中で育っていきました。
◆ 授業にも「次のテイク」はあるか
授業を終えたとき、私たちは「予定どおり進んだか」で振り返りがちです。しかし、子どもの発言に、こちらが予想していなかった問いがあったならどうでしょう。
うまくいかなかったやり取りに、次の授業を変える手がかりが残っているかもしれません。
録音では、前のテイクを聴かなければ、次に変える音は決められません。授業も同じです。「盛り上がった」「予定どおり進んだ」で終えてしまえば、子どもが何を言えず、どの言葉から考えを広げたのかは残りません。
同じ単元を教える前に、以前の指導案と子どもの発話を並べてみる。授業を見た同僚に、自分が見落とした場面を尋ねる。ALTが授業中に記した「ここで会話が止まった」というメモを、次のTTの出発点にする。
変えるべきところが見えれば、次の一時間は前の繰り返しではなくなります。
それが、教師にとっての「次のテイク」です。
ビートルズが重ねたのは、録り直しの回数だけではありません。録った音を聴き、まだ足りないものを探し、誰かの提案を試す。その営みが、原曲を「曲を変えていったのです。
一度うまくいった授業も、「完成」とは限りません。
子どもにとって「名曲」とは、ずっと覚えている授業、心に残る授業だからです。
教師もそれに応えるために、少しでも現状を “refine“することを目指す。
実際、「次はここを変えてみよう」と言い合える仲間が増えていけば、授業だけでなく学校も活性化していきます。
私自身、全国各地の学校(たとえば、神戸市、福岡市、久留米市、佐賀市、広島市、吹田市、川崎市、守谷市、習志野市、稲美町、苅田町など)で先生方と「線」になる授業づくりに関わる中で、そのことを痛感しています。
参考
* 2025年12月11日の記事「本当のバックワード・デザインとは何か」を加筆修正しました。

