🍀 授業は、なぜ“動かない”のか(2/4)

第2回 出会いは、「あいだ」で起きる ― 個別最適と協働の往還に潜むもの ―

前回は、授業の中で何が起きたときに学びが立ち上がるのか、
何が起きていないときにそれが通り過ぎていくのかについて

考えてみました。

授業中、やり取りはあっても

何も残らないことがあります。

一方、特別なことはしていないのに、
あとになってそれが種火のように

残り続ける授業もあります。

その違いは、「エンカウンターが起きていたかどうか」です。

では、エンカウンターは、
授業のどこで生まれているのでしょうか。

「一人」と「他者」のあいだで起きていること

授業の中には、大きく分けて二つの時間があります。

一人で考える時間と、
他者と関わる時間です。

多くの場合、この二つは「切り替え」として扱われます。

考えてから話す、

または、話してからまとめる。

しかし、エンカウンターは、そのどちらでも起きません。

一人で考えているときは、
まだ自分の枠の中にとどまっています。

他者とやり取りをしているときは、
流れに乗って言葉を返すことが優先されています。

もちろん、どちらも授業には必要な時間です。

ただ、それだけでは、まだ「揺れ」は起きないのです。

では、どこで起きるのでしょうか。

それは、「一人(個別)」と「他者(協働)」の「あいだ」です。

「ズレ」に出会う瞬間

一人で考えていたときには見えていなかったものが、
他者と関わる中で、少しずつ浮かび上がってきます。

自分の言葉が、思っていた通りに伝わらない、
相手の言葉が、すぐには理解できない。

そんなとき、わずかなズレが生まれます。

そのズレを、そのままにするのか。
それとも、立ち止まるのか。

そこで、教師の対応が分かれます。

流れを優先すれば、そのまま進みます。
整えれば、きちんと収まります。

ただ、そのどちらでもない動きがあります。

それは、「迷い」が生まれた瞬間に起こっています。

そのとき、初めて、
自分の中の「思考」が「考え」として外に引き出され、他者とのあいだで交錯し始めます。

エンカウンターが成立する条件

ここで、エンカウンターが起きている場面を、
少しだけ整理してみます。

そこには、いくつかの共通点があります。

まず、予期していなかったズレに出会っていること。

次に、そのズレを受け止めるための材料が、自分の中にすでにあること。

その出会いによって、もともとの理解が書き換えられていくこと。

この三つが重なったとき、
人は「前と同じではいられない」状態になります。

これが、エンカウンターです。

なぜ、「あいだ」が見えにくいのか

この「あいだ」は、意図して見ようとしなければ、
ほとんど見えません。

授業では、どうしても「進めること」が優先されます。

時間があり、目標があり、
到達させたい内容がある。

その中で、途中で止まることは、

教師にとってかなりリスキーです。

ですから、

言い直す時間や考え直す時間は、

「滞り」として処理されがちです。

教師は知らず知らずのうちに整えてしまいます。
どんどん先に進めてしまいます。

その結果、
エンカウンターが起きかけた場面が、静かに消えていきます。

「往還」が生まれるとき

しかし、教師がその「あいだ」の存在に気づいて、

踏みとどまったとき、
授業の様子が少しずつ変わり始めます。

一人で考えたことが、他者によって揺さぶられ、

揺れたものを、もう一度自分の中で組み直され、

もう一度外に出される。

この行き来が生まれるのです。

これが、「往還」です。

一度で終わるのではなく、
行き来する中で、少しずつ形が変わっていきます。

この状況では、すでに
言葉は「発表するためのもの」ではなく、
「考えるためのもの」に変わっています。

活動ではなく、「状態」を見る

ここまで見てくると、
授業を見る視点を磨くことの大切さが分かります。

何をしたかではなく、

そのとき、どのような状態が生まれていたのか。

話し合いがあったかどうかではなく、
その中で、ズレが生まれていたのか。

発言があったかどうかではなく、
言い直しや立ち止まりがあったのか。

そうした見方ができるようになるのです。

▶ 次回予告

では、その「あいだ」は、
設計することができるのでしょうか。

また、エンカウンターは、どのように消えてしまうのでしょうか。

あるいは、条件を整えることで、
起きやすくすることはできるのでしょうか。

次回は、「設計」という視点から、
この問題に踏み込みます。

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この記事を書いた人

英語 "わくわく授業" 研究所 代表(元関西外国語大学教授)
(公財)日本英語検定協会派遣講師・(株)リンク・インタラック エグゼキュティブ・コンサルタント